ベルーナ(9997)は、これからも増配を続けられそうか
カタログ通販を軸に、8つの事業へ広げてきたベルーナ(9997)を、17期分の決算資料で見てみました。
☕ まずは30秒だけ
ベルーナの純利益は、この17期で9.0倍になりました。1株あたりの配当も5.1倍。どちらも大きく伸びています。ただ、並べてみると利益の伸びのほうが速い。この差はどこへ行ったんだろう?と気になって、17期分の決算資料を読みました。先に言ってしまうと、その多くは事業を育てるお金に向かっていました。8期連続の増配と、事業への投資。この2つをどう両立してきたのか、この記事で順番にたどっていきます。
(お忙しい方は、ここだけ読めば大筋がつかめます。気になったら下へどうぞ。)
ざっくり言うと
ベルーナは、カタログやネットの通販を軸に、ホテル・化粧品・グルメ・看護師向け用品・呉服など8つの事業を手がける会社です。埼玉県上尾市で、1968年に印鑑の訪問販売から始まりました。2019年3月期から8期連続で増配し、2027年3月期の予想を含めて会社は「9期連続増配」を掲げています。
利回りは?
2026年3月期の実績配当38円を、株価996円(2026年8月7日の東京証券取引所の終値)で割ると、約3.8%です。会社が予想する2027年3月期の配当39円で計算すると、約3.9%です。(実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。株価で変わりますし、将来の配当・利回りを約束するものではありません。いずれも税引前の数字です。)
配当は年2回(中間と期末)、3月期決算の会社です。100株以上を持つ株主には、通販の割引券や、グループの施設で使える優待もあります(2026年7月12日時点。会社が変更・廃止する場合があります)。
おさえどころ3つ
① 2019年3月期から、8期連続の増配です。
コロナ禍の2020年3月期も、為替の損益で経常利益(本業の利益に金利や為替の損益を足したもの)が大きく減った2016年3月期も、配当は下げませんでした。2026年3月期の配当総額36.6億円は、本業で稼いだ現金184.7億円の約2割。配当は、本業で稼いだ現金の範囲に収まっています。
② 利益の1〜2割を配当に回してきた時期が、長く続きました。
利益9.0倍・配当5.1倍という差の正体は、配当性向(利益のうち配当に回す割合)の歴史です。ベルーナは長い間、利益の1〜2割を配当に回し、残りは通販の元手や、事業の多角化にあててきました。その積み重ねが、いまの8つの事業につながっています。配当を利益に近づけ始めたのは、2024年に株主還元方針を変えて(2025年3月期から適用)以降と、ごく最近のことです。
③ 新しい還元方針は、DOE1.5%を下限、配当性向35%を目途としています。
DOEは、会社の元手に対してどれだけ配当を出しているかのものさしです(くわしくは後ほど)。利益が減った年の下支えになりうる一方、この方針のもとでは、増配の勢いはここから先、利益の伸びしだいという面が大きくなります。
ここから下は、この3つを17期分の決算資料でたどった記録です。
(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料に基づきますが、正確性は保証しません。投資の判断はご自身で。)
🏢 ベルーナってどんな会社?
郵便受けに、ぶあつい通販カタログが入っていた。服やバッグ、寝具や雑貨が並んだページを、家族がめくっていた——そんな光景を覚えている方も多いと思います。あのカタログを送り出してきた会社のひとつが、ベルーナです。カタログは、いまも現役の媒体です。
ひとことで言うと、「通販で幅広い商品を届ける」ことを軸に、事業を広げてきた会社です。1968年に埼玉県上尾市で、印鑑の訪問販売として創業しました。1990年に商号をベルーナへ変え、1998年に東証二部、2000年に一部、2022年にプライム市場へと移ってきました。決算は3月、代表取締役社長は創業家の安野清さんです。
いまのベルーナは、8つの事業を2つの領域に分けています(数字は2026年3月期。以下、この章の数字も同じ決算短信と会社資料から引用しています。事業別の利益は、短信でいう「セグメント利益〔のれん償却前営業利益〕」を指します。本文では読みやすさから営業利益と書きます)。
会社が成長を担うと位置づけるのが「グロース領域」。ホテルや不動産のプロパティ事業、化粧品健康食品事業、おせちやワインのグルメ事業、看護師向け用品のナース関連事業の4つです。
もう一方が「サステナブル領域」。呉服やレンタル衣裳の呉服関連事業と、カタログ・ネット通販のアパレル・雑貨事業。それに、卸売や旅行代理店のその他事業と、通販代行やファイナンスのデータベース活用事業。この4つが入ります。会社はこの4つについて、収益性と効率性の最大化を目指すとしています。
売上でいちばん大きいのは、もともとの主力であるアパレル・雑貨事業で689億円。ところが利益でみると、2026年3月期はこの事業が4.1億円の赤字でした(前の期の17.0億円の赤字からは縮んでいます)。この期にいちばん利益を稼いだのは、ホテルや不動産のプロパティ事業(営業利益85.5億円)で、次いで通販代行やファイナンスのデータベース活用事業(同45.1億円)。グルメ・呉服関連・化粧品健康食品・ナース関連の4事業も利益を出していて、8つのうち6事業が黒字でした。売上の主役と、利益の主役が違う。ここは、後の章でもういちど取り上げます。
会社全体でみると、2026年3月期の売上は2,181億円。従業員は連結で3,844名です。
8つの事業をそれぞれ育てて、組み合わせで補い合う。会社はこれを「ポートフォリオ経営」と呼んで進めています。その形が数字にどう表れているのか、次の章で見ていきましょう。
📊 数字でみる ― 純利益9.0倍、配当は5.1倍
まず、全体の形から見ていきましょう。この17期で、売上は1,001億円から2,181億円へ2.2倍、純利益は12.8億円から115.4億円へ9.0倍になりました。ところが1株あたりの配当は、株式分割をいまの株数にそろえた基準で、7.5円から38円へ5.1倍。利益のほうが、配当より速く伸びています。
配当を増やし続ける会社では、配当性向を少しずつ引き上げて、配当が利益より速く伸びる形もよく見かけます。ベルーナの17期は、その逆でした。配当性向は、むしろ下がっています(58.9%→31.7%)。理由は次の段落で見るとおり、下げた分が事業の元手に回っていたからです。
その差を生んだのが、配当性向の歴史です。出発点の2010年3月期は58.9%と高いのですが、これには特殊な事情がありました(くわしくは後ほど)。そのあとベルーナは、配当性向をおおむね1〜2割まで下げ、利益の多くを事業の元手や多角化に回していきます。だから配当は、利益ほどには増えませんでした。
(各年3月期。棒=1株配当〔右の目盛り・円〕、線=純利益〔左の目盛り・億円〕。どちらもゼロ起点です。1株配当は、2013年10月の株式分割〔1株→2株〕をいまの株数にそろえた換算値です。出典:各年 決算短信)
表A 純利益・配当・配当性向・自己資本比率(17期)
| 期 | 純利益(億円) | 1株配当(円・調整後) | 配当性向 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|
| 2010/3 | 12.8 | 7.50 | 58.9% | 45.3% |
| 2011/3 | 43.9 | 7.50 | 17.1% | 52.0% |
| 2012/3 | 42.9 | 7.50 | 17.3% | 61.3% |
| 2013/3 | 58.7 | 7.50 | 12.5% | 57.9% |
| 2014/3 | 70.1 | 12.50 | 17.3% | 56.2% |
| 2015/3 | 63.9 | 12.50 | 19.0% | 52.1% |
| 2016/3 | 35.4 | 12.50 | 34.3% | 49.8% |
| 2017/3 | 58.0 | 12.50 | 20.9% | 47.4% |
| 2018/3 | 96.7 | 12.50 | 12.6% | 47.1% |
| 2019/3 | 103.4 | 15.00 | 14.1% | 46.7% |
| 2020/3 | 58.6 | 16.00 | 26.4% | 45.7% |
| 2021/3 | 110.4 | 16.50 | 14.5% | 46.9% |
| 2022/3 | 102.0 | 19.00 | 18.0% | 46.5% |
| 2023/3 | 74.2 | 20.00 | 26.1% | 43.9% |
| 2024/3 | 58.4 | 20.50 | 33.9% | 45.0% |
| 2025/3 | 88.0 | 29.00 | 31.8% | 45.2% |
| 2026/3 | 115.4 | 38.00 | 31.7% | 44.5% |
- 数字は各年の決算短信より。純利益は「親会社株主に帰属する当期純利益」(2016年3月期からこの名称です)。百万円開示を四捨五入で億円にしています
- 1株配当は、2013年10月の株式分割(1株→2株)をいまの株数にそろえた換算値です。実際の額面は分割前が2倍でした(2010年3月期は年15円など)
- 配当性向=利益のうち配当に回す割合。会社開示の値です
- 2010年3月期の58.9%は、前の年の赤字から戻った直後で利益が小さかったための、高めの値です
表Aを縦に読むと、配当性向が上下しているのがわかります。利益が落ちた年(2016年34.3%、2020年26.4%)に高く、利益が伸びた年(2018年12.6%、2021年14.5%)に低い。配当を一定のペースで増やす一方、利益が振れるので、割合が動くのです。減配せずに増配を続けるための、ひとつのやり方だと受け取っています。
配当の列も、まっすぐ増え続けてきたわけではありません。7.5円で4年、12.5円で5年、横ばいの時期があります。8期続けての増配は、2019年3月期からのことです。
もうひとつ、利益率にも触れます。2026年3月期の純利益115.4億円は、売上2,181億円の5.3%。営業利益でみても7.6%です。売上の規模に対して、手元に残る利益はそれほど大きくありません。この形が配当の元手にどう効くのかは、⚖️の章でもういちど見ます。
その配当を支えるキャッシュ・フロー(現金の出入り)も確かめたいので、表をもうひとつ用意しました。
表B キャッシュ・フローと配当の支え(17期)
| 期 | 営業CF(億円) | 投資CF(億円) | 現金残高(億円) | 配当総額(億円) | DOE |
|---|---|---|---|---|---|
| 2010/3 | 212.2 | △22.9 | 211.7 | 7.5 | 1.4% |
| 2011/3 | 141.6 | △26.2 | 176.1 | 7.5 | 1.3% |
| 2012/3 | 112.7 | 3.0 | 115.3 | 7.3 | 1.3% |
| 2013/3 | 72.8 | △76.3 | 133.3 | 7.3 | 1.1% |
| 2014/3 | 57.7 | △154.0 | 145.0 | 12.2 | 1.7% |
| 2015/3 | 90.9 | △201.9 | 161.0 | 12.2 | 1.6% |
| 2016/3 | 91.8 | △95.0 | 182.4 | 12.2 | 1.5% |
| 2017/3 | 82.1 | △99.5 | 194.2 | 12.2 | 1.5% |
| 2018/3 | 89.2 | △128.5 | 220.3 | 12.2 | 1.4% |
| 2019/3 | 85.6 | △127.2 | 213.5 | 14.6 | 1.5% |
| 2020/3 | 66.2 | △111.1 | 222.9 | 15.5 | 1.5% |
| 2021/3 | 207.7 | △51.9 | 309.6 | 16.0 | 1.5% |
| 2022/3 | 71.5 | △170.3 | 295.7 | 18.4 | 1.6% |
| 2023/3 | 82.4 | △299.2 | 318.3 | 19.3 | 1.6% |
| 2024/3 | 127.7 | △144.0 | 372.5 | 19.8 | 1.5% |
| 2025/3 | 96.9 | △177.9 | 362.1 | 27.9 | 2.0% |
| 2026/3 | 184.7 | △322.9 | 365.6 | 36.6 | 2.5% |
- 各年の決算短信より。△はマイナス(支出)です。四捨五入で億円にしています
- 営業CF=本業で稼いだ現金です
- 投資CF=設備・不動産・ホテル・有価証券などにお金を使うと、マイナスになります(マイナスになるのは投資CFの話です。お金を使って投資をした印であって、それ自体が悪い数字ではありません)
- 配当金総額=その年に株主へ支払った配当の合計です
- DOE(株主資本配当率)=会社の元手(自己資本)に対して、どれだけ配当を出しているかのものさし。新しい還元方針は、この値の1.5%を下限としています。表では「純資産配当率」として開示されています
- 2012年3月期の投資CFだけは、プラス3.0億円です(△がついていません)。同年の決算短信の表記どおりで、転記の誤りではありません
本業で稼ぐ現金(営業CF)は、この17期すべて黒字です。2026年3月期の配当総額36.6億円は、営業CF184.7億円の約2割。配当は、本業で稼いだ現金の範囲に収まっています。
いっぽう投資CFは、2013年3月期からは毎年、大きなマイナスが続いています。2026年3月期の投資CFは322.9億円の支出で、本業で稼いだ184.7億円を上回っています。足りない約138億円は、借入で埋めました。会社は長期借入金を243億円増やし、シンジケートローン(複数の銀行が協調して行う融資)を新たに結んだこと、支払利息が増えたことを開示しています。手元の現金はほぼ横ばい(362.1億円→365.6億円)でした。稼ぐ以上を投資に投じ、足りない分を借入で支える。いまはそういう局面だと受け取っています。
右端のDOEの列も見てみます。長く1.5%前後でしたが、2025年3月期に2.0%、2026年3月期に2.5%へ上がりました。会社が2024年に新しい方針を掲げ、配当を厚くし始めたことが、この列に表れています。
📖 増配の歩みを、会社の言葉でたどる
ここからは、各年の決算短信で会社自身がどう説明してきたかを、時系列でたどっていきましょう。(この章の記述は、各年の決算短信にある会社の説明に基づいています。)
2010年〜2012年:赤字の翌年からの出発と、財務の立て直し
この記事の起点である2010年3月期は、会社にとって苦しい年の直後にありました。前の年(2009年3月期)に、87.6億円の最終赤字を出していたのです。翌2010年3月期は、「販売用不動産の評価損が大幅に減少した」ことなどで営業利益が大きく回復し、純利益は12.8億円へ戻します。この年は利益が小さく、その少ない利益のほとんどを配当に回したので、配当性向は58.9%と高く出ました。ここが、あとで「利益9.0倍・配当5.1倍」の差を解くときの出発点になります。当時のベルーナは、通販に不動産や金融も抱えた会社でした。会社は財務の健全化に取り組むと記し、借入や貸付金を絞りながら足場を固めます。
2013年〜2015年:M&Aによる多角化と、1株を2株に分ける分割
この時期、会社は「M&Aによる事業基盤の強化」を進めます(M&A=ほかの会社を買収して、グループに迎え入れることです)。看護師向け通販(アンファミエ)などの会社を取り込み、自らを「通信販売総合商社」と呼びました。2013年10月には、株式を1株から2株に分けています。売上は伸び、2014年3月期の純利益は70.1億円まで増えました。
2016年:営業利益は31.2%増、経常利益は29.3%減
2016年3月期は、少し読み方に注意が必要な年です。本業のもうけである営業利益は83.7億円へ、前の年より31.2%増えました。ところが経常利益は29.3%も減っています。会社の説明は、「為替相場の変動による利益が、前年とは逆にマイナスとなったため」。本業は伸びたのに、為替が足を引っぱった年でした。営業利益(本業)と経常利益(為替の受け払いを含む利益)は、金額でも動きでも別物になることがあります。この会社を見るときの、ひとつのものさしです。
2018年〜2019年:過去最高益、そして8期続く増配の起点
純利益は2018年3月期に96.7億円、2019年3月期に103.4億円と、過去最高を更新していきます。2019年3月期には、配当を12.5円から15円へ引き上げました。ここが、いまも続く「9期連続増配」の起点です。
2020年:コロナ禍で純利益43.3%減。それでも増配
2020年3月期、新型コロナウイルスの感染拡大が始まります。純利益は前の年の103.4億円から58.6億円へ、43.3%減りました。卒業式の中止で衣裳レンタルが打撃を受けます(ホテルへの逆風が数字に表れるのは、翌2021年3月期でした)。それでも会社は、配当を15円から16円へ増やしました。利益が減った分、配当性向は26.4%へ上がっています。利益が4割以上減った年に、会社が増配を決めたことが、いちばんよく見えた年だったと受け取っています。
2021年〜2022年:巣ごもり消費で最高益、報告区分は7から8へ
外出が控えられた2021年3月期は、雑貨やホームウェアの「巣ごもり消費」で通販が伸び、純利益は110.4億円まで戻りました(前年比+88.3%)。2022年3月期には、報告のしかたを7区分から8区分へ改めます。同じ年、会計のルール(収益認識に関する会計基準)も変わり、売上が見かけ上13.45億円減りました。売上の見かけは減りましたが、利益への影響はない、と会社は説明しています。区分もルールも変わったので、この前後の数字は、そのままつなげて比べられません。
2023年〜2024年:アパレル・雑貨が営業赤字29.9億円、ホテルは増益
円安と原材料高で、売上でいちばん大きいアパレル・雑貨事業の仕入れ値が上がります。2024年3月期は、この事業が29.9億円の営業赤字となりました。長く会社を支えてきた事業が、外の環境にいちばん揺さぶられた年でした。いっぽうで、インバウンド(訪日客)の回復を受けたホテル(プロパティ事業)が、大きく伸びます。会社が利益を稼ぐ場所が、通販からホテルへ移り始めた時期です。
2025年〜2026年:還元方針の変更と、純利益115.4億円
2024年、会社は還元の方針を変えました(2025年3月期から適用)。DOE1.5%を下限、配当性向35%を目途、という中身です。配当は2025年3月期に29円、2026年3月期に38円へと厚くなります。純利益も2026年3月期に115.4億円と過去最高でした。増益の中身は、ひとつの事業だけではありません。営業増益でいちばん大きかったのはプロパティ事業(営業利益85.5億円)で、会社全体の営業増益45.9億円のうち約7割を占めます。この伸びについて会社は、訪日客の回復に加えて、札幌のホテルの本格稼働や小樽での新規開業、秋保温泉のホテルの取得、稼働率と客室単価の上昇を挙げています。それに加えて、アパレル・雑貨事業の営業赤字が17.0億円から4.1億円へ縮んだこと、為替差益が増えたことも、純利益を押し上げています。
ここで、冒頭の疑問の答え合わせをしますね。1株あたり利益(EPS)がこの17期で9.4倍になり、配当性向が58.9%から31.7%へ、およそ半分に下がりました。9.4に0.54を掛けると、配当は5.1倍です。純利益そのものは9.0倍ですが、自己株買いで株数が約4%減った分、1株あたりでは9.4倍になります。長く「貯めて広げる」側に置いていた重心を、「配る」側へ少し動かした。そんなふうに、私は読んでいます。
🧭 会社はこれからをどう描いているか
次は、会社が示している計画を見てみましょう。この章で確かめたいことは、ふたつです。会社はこれからどこで利益を伸ばそうとしているのか。そして、その目標は追える数字にどう置きかわるのか。なお、この章に出てくる目標や計画はすべて会社が公表しているもので、達成が約束されたものではありません。(出典:第6次短期経営計画・中期計画の資料〔2025年6月〕、2026年3月期の決算説明会資料)
いま動いているのは、2つの計画です
ひとつは、2026年3月期から2028年3月期までの「第6次短期経営計画」。営業利益を135億円→150億円→165億円と積み上げる3カ年です。決算説明会資料では、この計画を「前倒し達成」したと記しています。そのうえで2年目(2027年3月期)の目標を175億円へ引き上げ、3年目は「策定中」としています。
その先の目標は、連結営業利益250億円です
もうひとつは、その先を見た「Nine・Six・Five and One・Two・Three計画」という中期の目標です。事業ごとの営業利益の目標に、Nine=プロパティ事業90億円、Six=データベース活用事業60億円、Five=専門通販事業50億円(化粧品健康食品・グルメ・ナース関連の3事業をまとめた呼び方です)、One=アパレル・雑貨事業20億円、Two=呉服関連事業25億円、Three=その他の事業5億円、と名前を振ったものです(One以降の数字と金額の対応は、資料に説明が見当たりませんでした)。
ひとつ、注記があります。この250億円を「何年3月期までに」達成するのか、資料には年度が示されていませんでした。目標の高さは分かっても、時間のものさしがない。ここは、読むときに気をつけたい点です。
還元は、前の章で見た方針が続きます
会社は2027年3月期に、9期連続の増配にあたる年39円を予定しています(会社の予想配当性向は31.3%)。会社の予想であり、達成が約束されたものではありません。
250億円を、追える数字に置きかえてみます
営業利益250億円のうち、いちばん大きい目標はプロパティ事業の90億円。2026年3月期の実績は85.5億円ですから、ここはもう目標に近い数字です。いちばん遠いのはアパレル・雑貨事業で、目標20億円に対し2026年3月期は4.1億円の赤字。目標との差は約24億円です。ただ、250億円までの差(合計で約85億円)は、専門通販事業の約23億円、データベース活用事業の約15億円、呉服関連事業の約11億円と、いくつもの事業に散らばっています。どれか一つの事業ではなく、それぞれの積み上げで届く形の計画だと、私は読んでいます。
⚖️ 気をつけたいところと、支えになりそうなところ
ここからは、リスクや弱みと、支えになりそうなところを並べてみます。
気をつけたいところ
① 会社の意思決定に、創業家の意向が大きく働きます。
1968年の創業から半世紀、安野一族が事業を築いてきた会社です。議決権の43.0%を、安野家が関わる2社(株式会社フレンドステージと株式会社フレンドステージホールディングス)が保有しています(2026年3月末)。代表取締役社長の安野清さんは、この2社の代表も兼ねています。この点について会社は、重要な決定は取締役会と監査等委員会の決議を経ること、2社の取締役が当社取締役の半数に達していないことから、意思決定に影響を与えるものではない、と説明しています。そのうえで私は、配当の方針も増配のペースも、大株主の意向が働く場所にある、と見ています。もっとも、この体制のもとで会社は8期続けて増配し、2024年には配当の下限を数字で定める方針も掲げました。長く事業を率いてきた歩みは、強みでもあります。
② 利益の主役が、通販からホテルへ移りつつあります。
2026年3月期にいちばん利益を稼いだのは、ホテルや不動産のプロパティ事業(営業利益85.5億円)でした。売上ではいまも最大のアパレル・雑貨事業は、円安や原材料高で仕入れ値が上がり、4.1億円の赤字です。ホテルは、開業や取得を重ねてきた会社の投資と、訪日客の回復の両方で伸びてきました。ただ、旅行の需要は景気や為替、世界情勢で振れやすい商売でもあります。この主役交代がこの先も続くのか、揺り戻すのか。8つの事業それぞれの利益を、一段ずつ見ていく必要があると、私は思っています。
③ 利益率は、もともと高くない商売です。
2026年3月期の純利益率は5.3%でした(📊の章でみた数字です)。仕入れ値(原材料や円安)、物流費、広告費が上がると、利益はそれだけ削られます。実際、アパレル・雑貨事業は円安や原材料高で赤字になりました。もっとも会社は、値上げや不採算事業の整理で、その都度立て直してもきました。売上の規模に対して、費用の変化に左右されやすい形です。配当の元手が利益である以上、ここは弱みとして見ています。
④ 拡大を、借入で支えています。
前に見たとおり、2026年3月期は投資額が本業のもうけを上回り、足りない分を借入で埋めました。自己資本比率(会社の元手のうち、借金でない自前のお金の割合)は、2012年3月期の61.3%から2026年3月期は44.5%まで下がってきました。ホテルや不動産への投資は、会社が成長を担う事業と位置づけている分野です。それを借りたお金で進める形と、DOEを目安にした増配を、この財務の水準でどう両立させていくか。ここは見ていきたい点です。
支えになりそうなところ
① 2019年3月期から8期連続で増配しています。
利益が大きく落ち込んだ年も、減配はありませんでした。会社は2027年3月期の予想を含め「9期連続増配」を掲げています。※過去の配当実績は、将来の配当を約束するものではありません。
② 配当の下限を、数字で決めた方針があります。
2024年に、会社は配当の下限を数字で決めました。利益が減った年でも、DOE1.5%を下限に、配当を下支えする形です。ただし、この下限1.5%は現在のDOE2.5%(2026年3月期で1株38円)より低い水準です。方針を守ったままでも、配当が現状から下がる余地は残ります。約束ではありませんが、配り方の考え方を数字で示したことは、配当を見る人には手がかりになります。
③ 8つの事業に分かれていることが、利益の振れをやわらげてきました。
通販が振るわない年にホテルが伸び、ホテルが振るわない年に通販や金融が支える。事業を分けていることが、全体の利益の振れをやわらげてきた面があります。2026年3月期も、アパレル・雑貨の赤字を、ホテルの利益が上回りました。ただし会社は、採算の合わない事業からの撤退も続けています(会社の資料では2025年3月期に2部門、2026年3月期に2部門、2027年3月期に1部門の予定)。会社はセグメントごとの売上と利益を毎期開示していますが、それでも8事業それぞれの中身までは、外から追いきれない面が残ります。
📌 次に見ようと思っているポイント
これからの決算で、私はこんなところを見ようと思っています。予想ではなく、「どの資料の、どの数字を見るか」の話です。
① アパレル・雑貨事業が、黒字に戻るか。
決算短信・決算説明会資料のセグメント別営業利益で、毎回確認できます。中期計画の目標20億円に対して、2026年3月期は4.1億円の赤字でした(前の期の17.0億円からは縮んでいます)。会社は2027年3月期のこの事業を、3.0億円の赤字(前の期より1.1億円の改善)と計画しています。黒字化そのものは、まだ来期の計画には入っていません。まずは赤字の幅が計画どおり縮んでいくかが、次の答え合わせです(2027年3月期の決算は例年5月ごろ)。
② 配当性向とDOEが、方針どおりとなるか。
決算短信の「配当の状況」欄で、毎回確認できます。DOE1.5%下限・配当性向35%目途という方針が、利益の伸びなかった年にどう扱われるか。据え置きのために配当性向が上がるのか、配当性向どおりに配当も止まるのか。方針の重みが試されるのは、順風の年ではなく、そういう年だと思います。
③ プロパティ事業の利益の伸び。
決算説明会資料のセグメント別で追えます。利益をいちばん稼いだこの事業(2026年3月期85.5億円)が、目標の90億円へどう近づくか。訪日客の動きと、会社が続けてきたホテルの開業・取得が利益にどう実るかも、ここに表れてきます。
もし「ここも見ると良いよ」という数字をご存じの方がいらっしゃいましたら、教えてもらえるとうれしいです。
🔍 もう少し深く ― 通販とホテルの土台は、どうなっているのか
ここは、ベルーナの商売の土台が、世の中でどうなっているのかを、公的な統計で確かめる章です。深掘りの補足なので、お急ぎの方は「おわりに」へ進んでも大丈夫です。
確かめたいことは、ふたつ。いま利益をいちばん稼いでいるホテルの需要と、もともとの商売である通販の需要です。順に見ていきましょう。
ホテルの土台
2026年3月期に利益をいちばん稼いだのは、ホテルや不動産のプロパティ事業(営業利益85.5億円)でした。会社は決算資料で、この事業を「国内旅行需要の高まりや訪日外客数が増加」と説明しています。その訪日の動きを、外の統計で確かめます。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2025年の外国人延べ宿泊者数は1億7,787万人泊で、前の年より8.2%増え、過去最高でした(速報値)。伸びそのものは続いていますが、ペースは変わってきています。外国人延べ宿泊者数の前年比は、回復が本格化した2024年の約+40%から、2025年は+8.2%へ。過去最高の水準のまま、伸び方は落ち着いてきました。日本人を含む全体はわずかに減っている(前年比△0.8%)なかでの、外国人の伸びです。会社の見方は、公的な統計の動きと、方向としては噛み合って見えます。
通販の土台
もうひとつの土台は、売上でいちばん大きいアパレル・雑貨事業(売上689億円)が立っている、通販という商売そのものです。経済産業省の調査によると、2024年のネット通販など物販系のEC市場は15兆2,194億円で、前の年より3.7%増えました(EC化率は9.78%)。総務省の家計消費状況調査でも、ネットショッピングを利用した世帯の割合は2024年に55.3%と、調査開始以来いちばん高くなっています。通販という商売の土台そのものは、ゆっくり広がっている。そう読み取れます。
ただ、その土台のどこにベルーナが位置しているのかまでは、測れませんでした。呉服・衣裳レンタル・化粧品・健康食品の「通販だけ」の市場規模は、公的統計に見当たりません。通販・小売の全体に占めるベルーナのシェアも、公開資料からは取り出せませんでした。
☕ おわりに
「ベルーナ(9997)は、これからも増配を続けられそうか」。この問いに、未来を予測して答えることはできません。
確かなのは、3つあります。2019年3月期から8年続けて配当を増やしてきた実績。その配当を、本業で稼いだ現金の範囲でまかなってきたこと。そして2024年に、配当の下限を数字で決めた還元方針です。気がかりなのは、利益をいちばん稼ぐ事業が通販からホテルへ移りつつあること、利益率がもともと高くない商売であること。さらに、拡大を借入で支え、経営に創業家の意向が大きく働くことです。いずれも、いまある事実です。
私が見ていくものさしは、利益の中身です。増配を支えてきたのは、長く抑えてきた配当性向を引き上げる動きでした。ここから先は、利益そのものの伸びが配当に効いてくると、私は見ています。会社の掲げる営業利益250億円は、事業ごとの目標を全部足した数字です。6つの黒字事業が利益を積み上げ、いま赤字のアパレル・雑貨がそこへ戻ってこられるのか。
この先どうなるかは、これからの数字が教えてくれます。予想はせず、8つの事業の利益を一段ずつ並べながら、四半期ごとの短信と年に一度の決算説明会資料を見ていこうと思います。
みなさんは、どう考えますか。
出典・一次ソース
- 各年の決算短信(2010年3月期〜2026年3月期・17期分):株式会社ベルーナ。2014年3月期以降はIRBANKのミラー、2010〜2013年3月期は会社IRライブラリの保存版より取得
- 有価証券報告書(第41期・第43期・第49期・第50期):株式会社ベルーナ/EDINET(支配株主・発行済株式数・自己株式の確認に使用)
- 支配株主等に関する事項について/非上場の親会社等の決算に関するお知らせ(2026年6月30日):株式会社ベルーナ
- 第6次短期経営計画(2026年3月期〜2028年3月期)、中期計画の策定について(2025年6月6日)・株主還元方針に関するお知らせ(2024年5月13日):株式会社ベルーナ
- 2026年3月期 決算説明会資料(2026年6月5日):株式会社ベルーナ
- 会社概要・会社沿革・配当/株主還元・株主優待 各ページ(2026年7月12日閲覧):株式会社ベルーナ ウェブサイト
- 観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値〔速報値〕)」/経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2024年)/総務省統計局「2024年 家計消費状況調査」(🔍章の公的統計)
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このページは、個人が公開情報をもとに作成した観察の記録です。投資助言ではなく、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は記事中に明記した時点のものであり、正確性・最新性を保証するものではありません。会社の予想・目標は会社が公表した時点のものであり、達成を保証しません。過去の配当・業績の実績は、将来の配当や業績を保証しません。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。
著者:ミーナ 更新日:2026-08-09