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旭情報サービス(9799)は、これからも増配を続けられそうか

📖 約24,300文字(まずは「30秒で要点」だけでも。じっくり読むと約32〜47分)

技術者が客先に常駐して企業のシステムを動かす会社、旭情報サービス(9799)を、17期分の決算資料で見てみました。

☕ まずは30秒だけ

勤め先のシステム部門に、よその会社に籍を置く技術者がいる。そんな方を見かけたことがある人も多いと思います。サーバーを止めずに動かし、ネットワークの不具合を直し、社内の問い合わせに答える。旭情報サービスは、この働き方で企業のシステムを支える技術者たちの会社です。

年間の配当は、株式分割をそろえた基準で15円から34円になりました。ただし2010年3月期から2016年3月期まで、配当は7年間同じ15円のままでした。その間に何があって、なぜ2017年3月期から増え始めたのか。この「なぜ」が、今回の記事の出発点です。リーマン・ショック直後の2010年3月期までさかのぼって、17期分の決算資料で順番に確かめていきます。

(お忙しい方は、太字の見出しだけ拾えば30秒で大筋がつかめます。気になったら下へどうぞ。)

ざっくり言うと

旭情報サービスは、1962年に大阪で生まれた会社です。いまは東京・丸の内に本社を置いています。サーバーやネットワークの構築・運用、ヘルプデスク、業務システムの開発などを、技術者が客先に常駐して担います。客先との契約は技術者派遣が中心で、従業員は正社員です。事業はこの情報サービスひとつで、2026年3月期までは子会社を持たない単体の会社でした。決算は3月です。

利回りは?

2026年3月期の実績配当34円(決算短信より)を、株価929円(2026年9月11日の東京証券取引所の終値)で割ると、約3.6%です。会社が予想する2027年3月期の配当も34円なので、同じ約3.6%です。(実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。株価で変わりますし、将来の配当・利回りを約束するものではありません。いずれも税引前の数字です。)

配当は年2回(中間と期末)です。3月末時点で1,000株以上を持つ株主には、カタログギフト(電子版)か寄付を選べる株主優待もあります(内容は会社が変更・廃止する場合があります)。

おさえどころ3つ

① 配当は15円から34円へ。増え始めたのは2017年3月期で、それまでの7年間は据え置きでした。

純利益は2011年3月期から16期続けて増えました。ただ配当は、2016年3月期まで15円のまま。利益が薄かった2010年3月期は、利益より多い配当を出してでも、この額を守っています。配当性向が40%まで下がった2017年3月期から、普通配当は10期続けて増えました。減配は、確かめた17期にはありません。

② 売上の主役はネットワークサービス部門で、売上の84.5%。2026年3月期も増収増益で、会社は「過去最高を更新」と説明しています。

サーバーやネットワークの構築・運用を、技術者が客先で担う部門です。全社の売上は前の年から4.6%、純利益は7.3%増えました。いっぽうで会社は、採用・教育・賃上げに毎年費用をかけています。人を確保できなければ売上が立たず、確保すれば費用が増える。営業利益率9.9%は、その両方が入った数字です。

③ 会社は配当性向40%以上を目標に掲げ、2027年3月期の配当は34円の据え置きを予想しています。

配当性向は、利益のうち配当に回す割合です。2027年3月期は、売上と営業利益は増える予想なのに、純利益は4.3%の減益予想。前の年には、賃上げ促進税制(賃上げをした会社の法人税を軽くする制度)の税額控除がありました。それを予想に見込んでいないためだと会社は説明しています。利益が減っても配当は据え置きで、予想の配当性向は42.6%へ上がります。配当性向は割合なので、元になる利益が変われば配当の額も変わりえます。そこをどう見るかが、この記事の主題です。

この3つが、これからどうなるか。確かめに使う数字は📌の章に置きました。はじめに、どんな仕事で稼いでいる会社なのかから入りましょう。

(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料に基づきますが、正確性は保証しません。投資の判断はご自身で。)

🏢 旭情報サービスってどんな会社?

自動車メーカーの設計データを扱うシステム、金融機関のデータセンター、公共分野のネットワーク。そうしたシステムを客先で動かし続けている技術者が、旭情報サービスに所属しています。会社の説明会資料には、自動車関連の受注を「インフラ運用などCAD関連」、金融・保険業の受注を「データセンターの運用・保守案件」と書いています。

ひとことで言うと、「技術者が客先に常駐して、企業のシステムを動かす会社」です。1962年、大阪で宛名印刷機の販売とダイレクトメールの代行から始まり、1966年にはIBMの機械でデータ入力の仕事に入りました。客先に常駐する形の仕事は、1968年のデータ入力から続いています。1987年にいまの社名になり、1995年に株式を店頭登録、2001年に東京証券取引所の第二部に上場。いまはスタンダード市場です。本社は東京・丸の内に移りました。オフィスは東京・横浜・名古屋・大阪に、サテライトオフィスは愛知県豊田市にあります。決算は3月です。

客先とは、仕事を丸ごと請け負う形ではなく、技術者を派遣する形の契約が中心です。有価証券報告書に「常用雇用型の技術者派遣事業を展開しており」とあり、従業員は無期雇用の正社員です。事業は情報サービスひとつで、部門は3つに分かれます。いちばん大きいのがネットワークサービスで、売上の84.5%。サーバーやネットワークの構築・運用から、セキュリティ、ヘルプデスクまでを担う部門です。従業員1,911人のうち1,457人がここにいます。次がシステム開発の13.8%で292人。業務システムの設計・開発や、組込みソフトの開発・検証です。残るシステム運用の1.7%は、汎用機と呼ばれる大型コンピューターの保守・運用で、いま24人がここにいます。会社は10年以上にわたり、ほぼ毎年の短信に「汎用系技術からネットワーク系技術への移行」に取り組んでいると書いてきました。市場が縮むなかで、この部門の技術者が新しい技術へも幅を広げてきた部門です。汎用機の仕事は、いまも続いています。

説明会資料の最終利用者の業種別では、製造業が売上の半分あまりで、なかでも自動車・自動車関連が36.2%。通信業と金融・保険業が続きます(2026年3月期)。1社で見ると、トヨタシステムズ向けが最大です(割合は⚖️の章で)。中期経営計画の資料には「常駐型のシステムエンジニアリングサービスが主力事業」とあります。技術者を正社員として雇い、客先に常駐させ、技術と時間に対価を得る。会社は2014年3月期から2024年3月期までの短信で毎年、任される工程を上へ広げる「上流工程への移行」を掲げてきました(直近2期の短信にこの語はありません)。

この商売が17期の配当をどう支えてきたのか、数字から見ていきましょう。

📊 数字でみる ― 配当は15円から34円へ

まずは全体像です。2010年3月期を起点にすると、売上は84億円から165億円に、純利益は1.2億円から12.7億円になりました。1株あたりの配当は、株式分割をそろえた基準で15円から34円。ただ、利益と配当の足取りは、そろっていませんでした。利益は毎年増えたのに、配当が動き始めたのは2017年3月期からです。

この差は、配当性向(利益のうち配当に回す割合)に表れています。2010年3月期は190.96%。利益より多い配当を出していました。それが2017年3月期には40%まで下がります。ここから増配が始まります。以後は36〜42%の間で動いてきました(各年は表Aに)。つまり2017年3月期からの増配は、長い目で見れば分ける元の利益が増えた分です。2024年3月期だけは、配当性向40%を目途とする方針に合わせて割合も上がりました(36.6%→40.6%)。どういう経緯かは、📖の章でたどりますね。

1株配当と純利益の推移(2010年3月期〜2026年3月期) 棒グラフが1株配当(右の目盛り・円・ゼロ起点・2024年10月の株式分割をそろえた換算値)、折れ線が純利益(左の目盛り・億円・ゼロ起点)。1株配当は2010年3月期から2016年3月期まで15円で据え置き、2017年3月期から増え始めて2026年3月期は34円。純利益は2010年3月期の1.2億円から2026年3月期の12.7億円へ、2011年3月期以降は毎年増えている。2022年3月期の21.5円には創立60周年の記念配当(換算1.5円分)を含む。 0億0円 3億7円 6億14円 9億21円 12億28円 15億35円 配当 34円 純利益 12.7億円 2010 2014 2018 2022 2026 1株配当(右の目盛り・円・分割調整後)純利益(左の目盛り・億円)

(各年3月期。棒=1株配当〔右の目盛り・円〕、線=純利益〔左の目盛り・億円〕。どちらもゼロ起点です。1株配当は、2024年10月1日付の株式分割〔1株→2株〕をいまの株数にそろえた換算値です。2022年3月期の21.5円には創立60周年の記念配当〔換算1.5円分〕を含みます。出典:各年 決算短信・有価証券報告書)

表A 純利益・配当・配当性向・自己資本比率(17期)

純利益(億円) 1株配当(円・調整後) 配当性向 自己資本比率
2010/3 1.2 15.00 190.96% 79.6%
2011/3 1.9 15.00 122.35% 77.2%
2012/3 2.3 15.00 99.73% 76.9%
2013/3 2.6 15.00 88.37% 77.2%
2014/3 3.5 15.00 65.1% 76.6%
2015/3 3.8 15.00 59.9% 76.6%
2016/3 4.8 15.00 47.7% 78.5%
2017/3 6.0 15.50 40.0% 78.7%
2018/3 6.5 16.00 38.3% 78.5%
2019/3 7.6 18.00 36.7% 77.6%
2020/3 8.0 19.50 37.5% 77.9%
2021/3 8.4 19.75 36.4% 78.2%
2022/3 8.6 21.50 38.7% 78.9%
2023/3 9.1 21.50 36.6% 78.9%
2024/3 10.7 28.00 40.6% 78.7%
2025/3 11.8 32.00 41.8% 79.8%
2026/3 12.7 34.00 41.3% 79.9%

表Aの配当の列を上から下へたどると、15円の年が7期続いたあと、2017年3月期から毎年増えています。合計の額で見ると、2023年3月期だけ前の年と同じ21.5円です。ただその前の年には記念配当1.5円分が入っていて、普通配当だけで見ると20円から21.5円へ増えました。会社もその年の短信で「記念配当を実施した前事業年度に引き続き」と書き分けています。普通配当で数えると、2017年3月期から10期続けて増配です。自己資本比率は、17期どの年も76%を超えています。

その配当を支えるキャッシュ・フロー(現金の出入り)も確かめたいので、表をもうひとつ用意しました。

表B キャッシュ・フローと配当の支え(13期)

営業CF(億円) 投資CF(億円) 現金期末(億円) 配当金総額(億円) 純資産配当率
2014/3 2.5 3.2 31.2 2.3 3.8%
2015/3 5.9 △0.2 32.5 2.3 3.6%
2016/3 1.1 1.2 32.5 2.3 3.5%
2017/3 6.0 4.7 40.8 2.4 3.5%
2018/3 6.6 △0.2 44.7 2.4 3.4%
2019/3 8.0 △3.9 46.6 2.7 3.6%
2020/3 7.9 △7.7 43.9 3.0 3.7%
2021/3 9.9 0.0 50.7 3.0 3.5%
2022/3 7.8 △6.1 49.4 3.3 3.6%
2023/3 5.8 0.4 52.3 3.3 3.4%
2024/3 10.6 3.7 62.7 4.3 4.1%
2025/3 9.2 △5.2 61.9 4.9 4.4%
2026/3 10.4 △8.6 53.4 5.2 4.4%

本業で稼ぐ現金は、13期どの年も黒字でした。手元の現金は31.2億円から53.4億円へ増えています。配当金総額が営業CFを上回った年は2016年3月期だけです。会社は未払消費税等の減少や前払費用の増加を理由に挙げています。直近3期は、配当が営業CFの4〜5割です。気になるのは、直近2期の営業CFが純利益の8割ほどにとどまることです(開示値から算出)。会社は売上債権と前払年金費用の増加を理由に挙げています。

2026年3月期は、営業CFで10.4億円を稼ぎ、配当5.3億円と自己株式の市場買付2.8億円を合わせた8.1億円を株主に返しました。キャッシュ・フロー計算書の「自己株式の取得による支出」5.8億円には、従業員向け株式交付信託が会社の株式を取得した2.9億円が含まれます。この分はほぼ同額の「自己株式の売却による収入」3億円と対になっており、株主還元とは別に見ています(中身は⚖️の章で)。手元の現金が8.5億円減った主な理由は、投資有価証券の取得10億円です。2026年3月末には、現金のほかに有価証券と投資有価証券が34.2億円あります。借入は短期借入金2.1億円とリース債務0.4億円で、合わせて2.5億円です。

部門別の売上(億円)

部門 2024/3 2025/3 2026/3 構成比(2026/3)
ネットワークサービス 123.1 132.2 139.8 84.5%
システム開発 21.6 22.8 22.8 13.8%
システム運用 3.0 3.1 2.8 1.7%

ネットワークサービスの1部門で、売上の8割以上です。2026年3月期の全社の増収7.2億円に対し、この部門は7.6億円増えました(開示値から算出)。伸びはこの1部門から出ています。短信は「主に自動車関連や金融・保険の分野における受注」によるものと説明しています。システム開発は横ばい、システム運用は減りました。システム開発について会社は「案件獲得に努めましたが、一部のシステム開発作業が、開発工程から運用工程に移行した」と書いています。仕事がなくなったのではなく、工程が移ったためです。2027年3月期の第1四半期は5.2%増に戻りました。

第1四半期の開示から、売上総利益率(売上から原価を引いた利益が、売上に占める割合)も算出できます。ネットワークサービス19.6%、システム開発25.1%、システム運用31.3%でした(開示値から算出。率は小数第2位以下を切り捨て。1四半期だけの数字で、システム運用は分母が小さいため幅を持って見ています)。売上がいちばん大きい部門が、いちばん率の高い部門ではありません。こうして積み上がってきた配当を、次は会社の言葉でたどります。

📖 増配の歩みを、会社の言葉でたどる

ここからは、各年の決算資料で会社自身がどう説明してきたかを、時系列でたどってみましょう。(この章の記述と鉤括弧の引用は、各年の決算短信・有価証券報告書・適時開示によります。配当は分割をそろえた換算値で書き、当時の実額を括弧で添えます。)

2010年〜2016年:純利益が1.2億円まで減った年も、配当15円(実額30円)は守られました。配当性向が190.96%から47.7%へ変わっていく7年です

出発点の2010年3月期は、リーマン・ショック直後の期にあたり、純利益は1.2億円。確かめた17期で、いちばん小さい年です。いまの株数にそろえれば15円の配当を出し続けました。配当性向は190.96%。配当の総額は2.3億円ほどで、利益の1.9倍を配っていた計算です(配当金総額の開示がないため、1株配当と期中平均株式数から算出しました)。利益より多く配れば純資産は減る。実際に純資産は2012年3月期まで少し減りました。長くは続けにくい形です。

従業員数も、2010年3月期の1,475人から2014年3月期の1,389人へ減りました(そこから2026年3月期の1,911人まで増えています)。人が減るなかで、2013年10月には業績予想の下方修正も出しています。第2四半期までの状況について会社は、技術者の稼働率と案件ごとの採算の改善に努めたと前置きし、こう続けます。「顧客のコスト削減要請は根強く、厳しい経営環境が続きました」。確かめた17期のうち、業績予想の下方修正はこの1回だけでした。

2014年3月期から2016年3月期の短信では、ネットワークサービス部門の説明に同じ文が3年続けて出てきます。「運用業務の効率化やコストダウンの要請は引き続き厳しかったものの」。そのなかで会社は毎年、案件ごとの採算の改善と「上流工程への移行とアウトソーシング事業の拡大による高付加価値化」を掲げました。配当は据え置いたまま、利益だけが3.5億円から4.8億円へ伸びた3年です。配当性向は47.7%まで下がりました。

2017年〜2021年:純利益6億円で配当性向が40%になり、増配が始まりました。コロナ禍の年も途切れませんでした

2017年3月期、純利益は6億円になり、配当性向は40%。この年、会社は換算0.5円(実額1円)の増配を決めます。短信の言葉は「売上高、利益面ともに伸長しました」。配当方針の文は前の年と同じ「安定的かつ継続的に行う」のままです。当期の説明に初めて「増配」の語が入りました。

2018年3月期からは、人の話が増えます。「若手社員の育成強化やビジネスパートナーの活用推進」(2018年3月期)、「積極的な人材採用」(2019年3月期)。配当は2018年3月期の換算16円から2020年3月期の19.5円へ増えました。この間の2019年1月、主要顧客のトヨタコミュニケーションシステムは、ほかの2社と統合してトヨタシステムズになりました(会社の短信の注記による)。

2021年3月期は、コロナ禍の年です。短信はこう書いています。「顧客のシステム投資計画延期等の発生や、事業活動がテレワーク環境にシフトしたため、対面での営業活動ができなくなる等の制約がありました」。それでも会社は「テレワーク対応やWeb会議等の活用により顧客との綿密なコミュニケーションを図り」、追加受注に力を入れました。結果は「前期比で増収増益を確保いたしました」。純利益は4.4%増え、配当は実額で50銭の増配です。幅は小さくても、途切れませんでした。

2022年〜2023年:創立60周年の記念配当。翌年は合計が同額で、普通配当は増えました

2022年3月期、会社は創立60周年の記念配当を加えました。年間の実額43円のうち、3円がこの記念配当です。翌2023年3月期は記念配当がなくなり、そのぶん普通配当が増えて、合計は同じ43円。短信は「記念配当を実施した前事業年度に引き続き1株当たり43円00銭」と書いています。合計で見ると据え置き、普通配当で見ると増配。両方の数え方が、この年に生まれました。

この年の短信には、費用の話もはっきり出てきます。「新入社員を増やしたことや若手社員をはじめとする技術者への教育投資および賃金改善に取り組んだことでのコスト増があったものの、前期比で増益」。人に投資しながら増益を続ける形は、ここから続いています。

2024年〜2026年:「配当性向40%を目途」が方針に入り、2026年には「40%以上を目標」へ。配当は34円になりました

2023年12月、会社は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を開示しました。翌2024年3月期の短信から、「配当性向40%を目途に株主還元の充実を目指す」の一文が配当方針に加わります。この年の配当は換算28円(実額56円)で、17期で最大の増配幅でした。全社の説明に「契約料金の改善」が入ったのも、この年からです(前の年はシステム運用部門の説明にありました)。売上を押し上げたのは「自動車関連や移動体通信などの分野における受注拡大」とあります。

2024年10月には株式を1株から2株に分割し、2025年3月期の配当は換算32円。そして2026年3月期の短信で、方針の文そのものが「安定的かつ継続的に行うことを基本方針とし、配当性向40%以上を目標としております」に変わりました。「目途」が「以上を目標」になり、方針の本文に入りました。期末配当は予想の16円から18円へ上乗せされ、年間34円。純資産配当率(DOE)は4.4%です。あわせて2025年11月には、自己株式の取得も決めました(中身は⚖️の章で)。

ここで、冒頭の話の答え合わせをしましょう。15円が34円になった中身は、大きく2つ。1つ目の動きは、利益の回復で配当性向が2016年3月期に47.7%、2017年3月期に40%まで下がり、そこから増配が始まったこと。2つ目の動きは、2023年12月に配当性向40%というものさしが置かれ、増配の幅が広がったことです。配当に回す割合は、入口の2017年3月期と出口の2026年3月期でほとんど変わっていません。増えたのは、分ける元の利益のほうです。利益が増えた道筋として会社が短信で書き続けてきたのは、上流工程への移行(2024年3月期まで)と、案件ごとの採算の改善(2023年3月期まで)でした。

🧭 会社はこれからをどう描いているか

次は、会社が示している計画です。この章に出てくる目標や計画はすべて会社が公表しているもので、達成が約束されたものではありません。(出典:中期経営計画〔2025年5月19日〕・有価証券報告書 第64期・2026年3月期 決算説明会資料〔2026年5月22日〕)

会社はビジョンに「ICT社会の発展を価値ある『サービス』と『人』で支える」を掲げています。中期経営計画は「事業戦略」「人材戦略」「経営基盤の強化」の3つで組み立てられています。

2028年3月期の目標は売上196.5億円。その先の2035年3月期には売上500億円を目指すと会社は掲げています

中期経営計画の最終年度、2028年3月期の目標は、売上高196.5億円、営業利益19.65億円(利益率10%)です。あわせてROE(自己資本利益率=株主の元手でどれだけ利益を出したかの割合)12%以上を掲げます。PBR(株価純資産倍率=株価が1株あたりの純資産の何倍か)は1.5倍以上、配当性向は40%以上です。その先の2035年3月期には、売上高500億円という長期目標があります。2026年3月期の165.4億円から9年で3倍。この17期の実績は16年で約2倍なので(開示値から算出)、これまでとは違う速さが必要な目標です。中期経営計画の目標には、M&Aの寄与を「織り込んでおりません」と注記があります。長期目標の側には、M&Aが並びます。その前提の数字は開示されていません。

直近1年の計画と実績も並べます。2026年3月期は、売上165.4億円・営業利益16.4億円で、計画の169.5億円・17億円に届きませんでした。営業利益率も前の年の10%から9.9%へ下がり、計画の10%を下回っています。会社は説明会資料で「米国政策の影響により、顧客のIT投資が慎重になった結果、中間期まで当社の受注は期初想定を若干下回る」と説明しています。ROEは10.7%、PBRは1.3倍で、どちらも目標には届いていません(会社の進捗表より)。有価証券報告書の株主総利回り(配当を含めた株価の伸びの指数)は、2022年3月期を100として2026年3月期が184.9。配当込みTOPIXの202.2を下回っています(前の年は上回っていました)。

このうち、配当への道筋にあたる部分を、私は3つの方向で読みました。

1つ目の方向 ― 既存事業の構造改革。会社は収益性の高い分野への集中と、仕事を成果物ごと引き受ける形(請負化)への切り替えを挙げています

有価証券報告書の課題の筆頭は「既存事業の構造改革による収益力の強化」です。中身は3つです。エンジニアリングサービスを中心としたDX分野の拡大、請負化の推進とサービスレベルの向上、収益性が高く拡大が見込める分野への集中と顧客との関係強化。説明会資料には「高収益分野:戦略的ローテーションと料金改定」「不採算案件:撤退と料金改定」とあります。「料金改定の一部は2027年3月期以降に反映」との注記もあります。

請負化とは、技術者を派遣して働いた時間に対価を得る形から、仕事を成果物ごと引き受ける契約へ切り替えることです。有価証券報告書のリスクの項は、労働者派遣法について「従業員を無期雇用(正社員)としており、当該事業に対する影響は軽微」と書いています。そのうえで「また、当社ではリスク軽減のため、請負化を進めております」と続けます。説明会資料では「請負化:ターゲットを絞り推進」と、対象を絞る書き方です。一方で一括請負には「受注時の見積以上の作業工数増大等により赤字が計上される場合があります」とも書いています。会社は「比較的小型案件が多く」、大きな赤字案件のリスクは少ないとしています。

2つ目の方向 ― 人への投資。3年で42億円以上の成長投資を、会社は人材から順に並べています

中期経営計画の成長投資は、3年で42億円以上。優先度の順に、人材投資(採用強化・待遇向上・人材育成)、オフィス環境の改善、IT・DX投資、事業戦略の検討、M&Aと並びます。2026年3月期の実績は6.7億円で、進捗率は16%(M&Aを除くと24.8%)。人の側の数字は、有価証券報告書にあります。従業員は1,911人(前の年から48人増)、平均年間給与は507.3万円で4%上がりました。平均勤続年数は12.4年です。処遇改善の項には「ベースアップ」と「従業員向け株式交付信託導入」(従業員に自社株を渡すための仕組み)が並びます。2026年3月期には、自己株式30万株をこの信託へ処分しています。株主の側では、旭情報サービス社員持株会が15.54%を持つ筆頭株主でもあります。

3つ目の方向 ― 株主還元。3年で約21億円を配当・優待・自己株式取得に充てる計画で、配当性向40%以上の継続を掲げています

資金の元手は、2025年3月末の現預金約62億円と、3年間の投資前営業CF約57億円です。ここから成長投資約42億円・株主還元約21億円を出し、現預金約56億円を残す計画です。配当については「配当性向40%以上の継続。経営基盤の強化と長期的な収益向上を維持しつつ、安定的かつ継続的に実施」。自己株式の取得は2026年6月に5億円枠のうち3.9億円分を終え、全株を消却しました。どの文書の言葉も会社の方針であって、将来の約束ではありません。私はその前提で読んでいます。

会社は2026年5月の説明会資料で、AIについても方針を示しています。機会と脅威を並べたうえで(中身は⚖️④)、方針をこう書きました。「既存業務の代替リスクはあるが、AIを活用した新たな事業領域で受注拡大を図る」。2026年4月にはDXHR株式会社と業務提携しました(会社は同社を、AI戦略の策定・導入・人材育成を支援する会社と説明しています)。AI戦略を進める役員も置いています。

この計画を、配当の目線ではどう読めばよいのか。次の章で、両面から並べます。

⚖️ 気をつけたいところと、支えになりそうなところ

気をつけたいところ

① 売上の23.7%がトヨタシステムズ1社向け。自動車・自動車関連で見ると36.2%です。

会社は有価証券報告書で、取引先を「官公庁、自動車、電気機器、金融等特定の産業分野にかたよらない上場企業を中心とした優良企業」と書いています。そして「主要取引先への売上割合は、最大で24%程度となっており、特定の取引先への依存度による事業リスクは限定的と考えております」と続けます。

数字を並べます。2026年3月期の売上165.4億円のうち、39.2億円がトヨタシステムズ向けです。2019年に主要顧客の3社が統合しているので、長い期間を単純にはつなげられません。それでも統合前の3社を足すと、2018年3月期の16.4%から23.7%へ上がっています(開示値から算出)。最終利用者の業種で見ると、自動車・自動車関連が36.2%です。会社は2026年3月期の計画未達の理由に「米国政策の影響により、顧客のIT投資が慎重になった」を挙げました。業種は特定していませんが、最終利用者の最大の分野がここです。関税や自動車産業の先行きについて会社は数字を開示していないので、私が追えるのは業種別の売上と主要顧客向けの金額です。

② 採用・教育・賃上げの費用が毎年増えています。販売費及び一般管理費は、前の年から12.8%増えました。

利益を押し下げる費用として近年の短信が挙げるのは「技術者を確保するための採用強化や技術者への教育投資・賃金改善」(2026年3月期)です。ただ、先に動いたのは売る側でした。売上総利益率は前の年の21.7%から22.6%へ上がり(開示値から算出)、会社は「案件獲得と契約料金の改善」を売上の伸びの理由に挙げています。その上で販売費及び一般管理費が12.8%増え、増えた利益の大半は、人への投資とオフィス移転、社内のDXの費用に回りました。会社はこれを成長投資と呼び、2027年3月期以降も続ける計画です。

有価証券報告書は「情報サービス産業では人材の獲得競争が激しく、優秀な人材の確保は恒常的な課題」と書いています。同時に「比較的参入障壁が低く、価格競争が生じやすい業界」で「従来型の技術やサービスでは価格の低下に拍車がかかり」とも書いています。契約料金の改善が続くかは、この裏返しでもあります。営業利益率9.9%は、その両方が同時に起きている数字です。

③ 2027年3月期は純利益4.3%減の予想ですが、配当は34円の据え置き予想です。配当性向は、40%以上の目標に対して42.6%の見込みです。

2027年3月期の会社予想は、売上と営業利益は増えるのに、純利益だけ4.3%減る形です(売上175億円・営業利益17.5億円・純利益12.2億円)。理由を会社はこう注記しています。「2026年3月期は、賃上げ促進税制による法人税の税額控除がありましたが、2027年3月期の業績予想に見込んでおりません」。配当は34円で据え置き、予想の配当性向は42.6%です。

配当性向は割合の目標です。金額の目標ではありません。純利益が減れば、40%以上の方針のままでも配当が減ることはありえます。逆に、予想の配当性向はすでに40%を超えているので、利益が増えても据え置きのままで方針は満たされます。増えるときも減るときも、配当の額を自動で決めるものではありません。

過去5期は毎年、期初の配当予想を上回る配当で終わりました(2022年3月期の上乗せ3円50銭のうち3円は記念配当です)。次もそうなるかは、わかりません。第1四半期(2026年8月7日発表)は営業利益20.7%増・純利益19.1%増でした。会社は増益の理由に、売上増と「前年同四半期に発生したオフィス移転関連費用の減少」を挙げています。第1四半期の純利益は通期予想の2割弱で、予想は据え置かれています。なお1株あたり利益の予想は、5月と8月の短信で79.73円と78.25円に分かれています。純利益の予想額は同じままで、理由の記載はありません。

④ 生成AIは需要と代替の両面。会社自身が「単純なシステム開発や運用、サービスデスクなどの代替リスク」を開示しています。

ネットワークサービスの中身を、会社は資料で5つに分けています。ITインフラの構築・運用設計、システム運用管理、セキュリティ(CSIRT・SOC)、サービスデスク、監視オペレーション。会社が代替のリスクに挙げているのは、このうち定型化しやすい一部の仕事です(会社の言葉では「単純なシステム開発や運用、サービスデスクなど」)。同時に、AIを使ったシステムの構築・再構築の需要を機会に挙げています。私はこれを、いまの仕事がまるごとなくなる話ではなく、仕事の中身が移っていく話として読んでいます。5つのうちどこがどれだけ置き換わるのかは、公的な統計からは測れません(🔍の章)。私に追えるのは、会社が開示する部門別の売上と、契約料金の改善が続くかどうかです。

⑤ 2026年9月に初めての子会社が加わりました。配当の元になる利益にどう効くかは、まだ数字が出ていません。

2026年9月1日、会社は名古屋のシステム開発会社スィンクの全株式を取得しました。会社は相手を「上流工程における高度なノウハウと優秀な技術者を擁するシステム開発会社」と説明し、取得の理由に「相互の顧客への提供価値向上および東海地区の体制強化」を挙げています。

規模で見ると、この会社の売上は4.6億円、純利益は0.3億円、純資産は0.8億円で、売上は2023年9月期から2年で約1.4倍、営業利益率は10.6%と伸びています(2025年9月期・開示値から算出)。財務諸表は監査法人の会計監査を受けたものではないので(会社の開示より)、外部の監査を通った数字と同じ重さでは見ていません。取得額は非開示で、会社は第三者機関の株価算定で妥当性を検証したと書き添えています。資金は全額手元資金で、新しい社長には旭情報サービスの取締役が就く予定です(8月21日の開示より)。「2027年3月期の当社連結業績に与える影響は、軽微」と見込み、連結決算は第2四半期から。これまで単体だった決算に、のれん(買収額のうち、相手の純資産を上回った分)が初めて載る可能性があります。純資産が小さいので、のれんの大きさは連結の貸借対照表が出るまでわかりません。

⑥ 自己株式は35万株を取得して消却しましたが、同じ年に30万株あまりを従業員向けの信託と役員へ処分しています。

2025年11月に決めた自己株式の取得(35万株・3.9億円)は2026年6月に終わり、全株を消却しました。いっぽうで同じ2026年3月期に、従業員向けの株式交付信託と役員へ30万株あまりを処分(会社が持っていた自社株を渡すこと。開示の言い方です)しています。発行済株式数から自己株式を引いた株数は、2025年3月末から2026年6月末までで約1.9%減りました(開示値から算出)。自己株式には、信託が持つ30万株が含まれます(決算短信の数え方です)。これが従業員に渡ると、株数はほぼ元に戻る計算です(渡す時期と株数は開示されていないので、私には確かめられません)。この処分は従業員向けの制度と役員向けのもので、株主還元とは目的が別です。自己株式の取得を株主還元と数えるなら、私はこの分を差し引いて見ています。

支えになりそうなところ

① 確かめた17期に減配はなく、純利益は2011年3月期から16期続けて増えています。

利益が薄い年は、配当性向が上がっても配当の額を保ちました。増配が始まってからは、利益に沿って増やしています。コロナ禍の2021年3月期も4.4%の増益でした。※過去の実績と会社の方針は、将来の配当を約束するものではありません。方針そのものも、会社の判断で変わりえます。

② 手元の現金53.4億円が、借入2.5億円を大きく上回ります。自己資本比率は79.9%です。

2026年3月末の現金は53.4億円で、そのほかに有価証券と投資有価証券が34.2億円あります(📊の章)。借入は短期借入金2.1億円とリース債務0.4億円で、合わせて2.5億円。本業で1年に稼ぐ現金の2割ほどです(営業CFに対する有利子負債の比率は0.2年・会社開示)。営業CFは表Bの13期すべてプラスです。設備をほとんど持たない商売で、稼いだ現金は配当・人への投資・有価証券の3つに回っています。

③ 配当性向40%以上は、「目途」から「目標」へ、方針の本文に入りました。

2024年3月期の「目途」が、2026年3月期に「目標」として方針の本文に入りました。利益が伸びれば配当が増えることもあり、減れば減ることもある。目標であって、配当額が自動で決まる仕組みではありません(⚖️③)。大株主の1位は社員持株会で、2026年3月期には従業員向けの株式交付信託も始まりました(🧭の章)。配当を受け取る側に、働く人たちがいます。

気をつけたいところも、支えになりそうなところも、いまある事実です。この両方を次の決算からどう確かめるかを、📌の章にまとめました。

📌 次に見ようと思っているポイント

これからの決算で、私はこんなところを見ようと思っています。予想ではなく、「どの資料の、どの数字を見るか」の話です。

① 2027年3月期の配当が、34円の据え置きで終わるか。

会社は2026年3月期の期末配当の上乗せを、本決算の発表日(2026年5月1日)に「剰余金の配当(増配)に関するお知らせ」で出しました。見るのは、11月ごろの第2四半期決算で通期予想が修正されるかどうか。そして2027年5月の本決算で、純利益が予想の12.2億円に対してどこに落ち着くかです。税額控除を見込まない前提の予想なので、利益の実力が見える年でもあります。受注残高は有価証券報告書で0.5億円と小さく、先を読む材料になりにくい商売です。部門別の売上と料金改定の進み方もあわせて見ます。(会社予想は達成が約束されたものではありません。)

② トヨタシステムズ向けの売上と割合が、どう動くか。

有価証券報告書の「主要な販売先」(年1回・6月)と、決算短信の関連情報の注記に、金額が載ります。増えれば売上を押し上げ、減れば減収に直結します。どちらに動いても真っ先に響く数字です。説明会資料の業種別売上もあわせて見ます。

③ 初めての連結決算で、のれんがいくら載るか。

2026年11月ごろに出る第2四半期の短信で、初めて連結の貸借対照表が出ます。見るのは、のれんの有無と金額、償却の期間、取得に関する注記、そして「改めてお知らせする」とされた連結業績予想です。取得額は非開示なので、これらで買収の中身が見えてきます(のれんだけで取得額が分かるわけではありません)。あわせて、第1四半期短信にあった部門別の売上総利益の開示が続くかも見ます(📊の章の3部門の率が、その入口です)。

もし「ここも見ると良いよ」という数字をご存じの方がいらっしゃいましたら、教えていただけるとうれしいです。

🔍 もう少し深く ― 常駐の技術者を求める仕事は、増えているのか

お急ぎの方は、この章を飛ばして「おわりに」まで進んでいただいて大丈夫です。☕の章で「人を確保できなければ売上が立たず、確保すれば費用が増える」と書きました。会社の資料の外側、公的な統計の推移で、その土台を確かめます。

会社の数字 ― 売上は4.6%増え、給与は4%上がりました

まず会社の数字から。2026年3月期の売上は4.6%増え、短信は2025年3月期以降、伸びの理由に「案件獲得と契約料金の改善」を挙げています。会社の予想では、2027年3月期も5.8%増です。一方、費用の側では、従業員が48人増え、平均年間給与は4%上がりました。売上を支える人員(技術者の数)も、単価(契約料金)も、原価(給与)も、そろって上がっている。この形を頭に置いて、世の中の統計を見てみます。

土台① 国全体のソフトウェア投資は、14年で2.5倍になりました

内閣府の国民経済計算で、コンピュータソフトウェアへの投資を見ます(国全体の投資額をまとめた「総固定資本形成」の内訳・名目)。2010年の9.5兆円から2024年は24.1兆円へ、2.5倍になりました(この章の倍率・増減率は公表値から算出しています)。総固定資本形成の全体(住宅や公共投資も含みます)が同じ期間に約1.5倍ですから、ソフトウェアはそのなかで特に速く増えた分野です。名目の金額なので、価格の変化も含みます。IT需要の広がりを示す背景として見ています。2021年には、ソフトウェアへの投資が研究・開発への投資を上回りました。

企業のクラウド利用も増えています。総務省の通信利用動向調査で「クラウドサービスを利用している」企業は、2014年の38.1%から2025年は83.4%(常用雇用者100人以上の企業が対象。調査時点の定義が途中で変わっています)。会社はネットワークサービスの受注理由に「クラウド基盤構築案件」を挙げています。その土台は、この統計に表れています。

土台② 情報サービス業の売上は、上位企業の集計で10.1兆円から17.9兆円へ増えました

経済産業省の特定サービス産業動態統計調査は、業種ごとに売上上位の企業を選び、その業種の年間売上高の7割ほどをカバーするように集めた統計です。情報サービス業では約360社が対象でした(調査全体では19業種・約2,550の企業・事業所)。情報サービス業の売上高は、2010年の10.1兆円から2024年の17.9兆円へ増えました。途中で調査対象の見直しがあり、2020年から2021年への伸びには対象追加の影響を含みます。会社が仕事を受ける業界の売上が、この14年で増えてきたことを示す数字として見ています。

土台③ 働き手は1.5倍に増えましたが、技術者の求人倍率は職業全体より4割近く高い水準です

総務省の労働力調査によると、情報通信業の就業者は2010年の197万人から2025年は302万人へ、1.5倍に増えました。2013年から派遣社員が派遣先の産業に分類されるようになり、2022年には人口の基準も切り替わりました。長い期間をつなげて見るときの注意点です。人は増えています。それでも足りているとは言えません。

厚生労働省の一般職業紹介状況で、情報処理・通信技術者の有効求人倍率(求人数÷求職者数。常用・パートを除く)を見ます。2018年の2.61倍がいちばん高く、2025年は1.66倍(2023年に職業分類の改定をまたいでいます)。人が足りない度合いは、いちばん強かった時期より下がりました。それでも、同じ基準の職業全体1.21倍と比べると、4割近く高い水準です。会社が「人材の獲得競争が激しく」と書く状況は、統計でも続いています。

土台④ 情報通信業の給与は、4年で8.7%上がりました。産業全体との差は、少しずつ縮んでいます

厚生労働省の賃金構造基本統計調査で、情報通信業の所定内給与(月額)は2021年の37.3万円から2025年は40.6万円へ、8.7%上がりました。産業全体は30.7万円から34万円です。情報通信業は産業全体より2割ほど高い水準ですが、差は少しずつ縮んでいます(2020年に推計方法が変わったため、それ以前とはつなげていません)。会社の平均年間給与(年額・賞与込み)とは単位が違うので直接は比べられませんが、どちらも上がっています。

帰結 ― 仕事は増え、人は足りず、給与は上がる。会社の数字と同じ向きです

4つの統計を重ねると、こうなります。ソフトウェア投資は14年で2.5倍、クラウド利用は8割超と、システムを動かす仕事の総量は増え続けた。働き手は1.5倍に増えたが、技術者の求人倍率はなお職業全体より高い。給与も上がっています。会社の売上(契約料金の改善)と費用(賃上げ)が同時に増えているのは、仕事の量・人の数・給与という3つの動きと同じ向きです。同じ統計が、需要の側では追い風、費用の側では向かい風になります。

測れなかったもの

「客先に常駐して技術と時間に対価を得る」形のITサービスだけの市場規模は、公的統計からは取り出せませんでした。上の情報サービス業の数字には、パッケージソフトやゲームも含まれます。生成AIがこの仕事をどれだけ置き換えるかも、統計にはまだ表れません。かわりに追える数字は、会社の開示にあります。部門別の売上、契約料金の改善を映す売上総利益率、そして平均年間給与の3つです。土台の変化を最初に映すのは、この3つだと見ています。

☕ おわりに

「旭情報サービス(9799)は、これからも増配を続けられそうか」。私が支えとして見ているのは、利益が先に増えてから配当が動いてきた17期の形と、手元の現金が借入を大きく上回ることです。まだ確かめられていないのは、税額控除を見込まない2027年3月期の純利益がどこに落ち着くかと、料金改定がどこまで進むかです。この問いに、未来を予測して答えることはできません。

確かなのは、確かめた17期に減配がなく、7年の据え置きのあと利益に沿って配当を増やしてきた実績です。手元の現金が借入を大きく上回り、配当性向40%以上が方針の本文に入ったことも、それを支えます。気がかりなのは、売上の23.7%が1社向けであること、人の費用が毎年増えていること、そして2027年3月期が減益・据え置きの予想で始まったことです。

私のものさしは、この会社が17期かけて見せてきた形です。利益が先で、配当が後。配当性向40%以上は会社の目標であって、配当額を約束するものでも、配当額が自動で決まる仕組みでもありません(⚖️③)。だから私は、配当の額より先に、純利益と契約料金の行方を、半期ごとに確かめていきます。

みなさんは、どう考えますか。

どなたかの参考になればうれしいです🌵

出典・一次ソース

免責

この記事は、個人の観察記録であり、投資助言や特定の銘柄の売買の推奨ではありません。数値は記事中に明記した時点のもので、内容の正確性・最新性を保証するものではありません。過去の実績は将来の配当や株価を保証せず、会社の計画・目標は達成が約束されたものではありません。記事中の試算は前提つきの参考値です。投資の判断はご自身でお願いします。

著者:ミーナ/更新日:2026-09-13

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