イー・ギャランティ(8771)は、これからも増配を続けられそうか
企業が売った代金を回収できなくなるおそれに備える「売掛債権の保証」を仕事にしているイー・ギャランティ(8771)を、17期分の決算資料で見てみました。
※業績・配当の記載は、2026年3月期の決算短信(5月15日)と2027年3月期第1四半期の決算短信(8月7日)までの公表資料に基づきます。
(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料から拾いましたが、拾い間違いがあるかもしれません。投資の判断はご自身で。)
更新日:2026-10-18
☕ 配当は40円から84円の予想。この記事で確かめること
イー・ギャランティの2027年3月期の配当は、年間84円の会社予想です。前の年の40円から、大きく増える見込みです。一方、純利益の予想は5.9%増。配当の増え方には、どんな背景があるのでしょうか。
気になったのは、次の3点です。
①今回、なぜ配当が大きく増える予想なのか。
②これからも、配当を支える利益は増えそうか。
③利益が伸び悩んだとき、配当を支える資金や方針はあるか。
まずは、今回の増配予想の理由から見ていきます。
📊 40円から84円へ。増配予想の理由と、17期の配当
大幅な増配予想の主な理由は、利益のうち配当に回す割合(配当性向)を高めたことです。会社は2026年5月、配当性向の方針を「50%以上」の目標から「100%を目安」に変更しました。配当性向100%とは、その年の純利益をほぼ全部、配当に回すということです。
過去の増配にも、利益の成長だけでなく、配当性向の引き上げが寄与しています。17期の表で、その変化を見てみます。この会社は株式分割を4回しているので、1株当たりの値は分割後の株数に直し、各年の決算短信の額は「当時の開示値」の列に残しました(分割の内訳は補足C)。
表A:17期の利益・EPS・配当・配当性向・自己資本比率
| 決算期 | 純利益(億円) | EPS(円・分割後換算) | 1株配当(円・分割後換算) | 当時の開示値(円) | 配当性向(連結) | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2010年3月期 | 3.4 | 10.59 | 1.875 | 3,000 | 17.7% | 44.8% |
| 2011年3月期 | 4.2 | 13.27 | 2.5 | 4,000 | 18.8% | 45.7% |
| 2012年3月期 | 4.6 | 13.52 | 3.125 | 25 | 23.1% | 55.3% |
| 2013年3月期 | 5.7 | 14.30 | 4.375 | 17.5 | 30.6% | 48.3% |
| 2014年3月期 | 7.0 | 17.28 | 5.5 | 22 | 31.8% | 52.5% |
| 2015年3月期 | 9.0 | 22.04 | 7 | 28 | 31.7% | 53.8% |
| 2016年3月期 | 11.1 | 26.94 | 8.5 | 34 | 31.6% | 56.7% |
| 2017年3月期 | 13.3 | 32.26 | 10 | 40 | 30.9% | 60.4% |
| 2018年3月期 | 14.6 | 34.88 | 11.25 | 22.5 | 32.3% | 58.0% |
| 2019年3月期 | 16.5 | 39.11 | 13 | 13 | 33.2% | 59.7% |
| 2020年3月期 | 23.0 | 54.14 | 14 | 14 | 25.9% | 70.3% |
| 2021年3月期 | 20.0 | 45.12 | 22 | 22 | 48.8% | 70.3% |
| 2022年3月期 | 24.6 | 52.92 | 26 | 26 | 49.1% | 71.9% |
| 2023年3月期 | 28.6 | 60.68 | 34(うち記念4) | 34 | 56.0% | 72.7% |
| 2024年3月期 | 32.6 | 68.60 | 35 | 35 | 51.0% | 73.7% |
| 2025年3月期 | 34.9 | 73.10 | 37 | 37 | 50.6% | 73.3% |
| 2026年3月期 | 35.8 | 77.89 | 40 | 40 | 51.4% | 68.8% |
| 2027年3月期(会社予想) | 38.0 | 83.82 | 84(中間42・期末42) | 84 | 100.2% | ― |
- 純利益=親会社株主に帰属する当期純利益(2015年3月期以前の科目名は「当期純利益」)。0.1億円未満を切り捨てています。本文の伸び率(純利益5.9%増など)は百万円単位の開示値で計算しているので、表の億円どうしの割り算とは少しずれます。
- EPS(1株当たり当期純利益)と1株配当は、4回の分割後の株数にそろえた値です(EPSは小数第3位以下を切り捨て)。「当時の開示値」の列が、各年の決算短信に載っている年間配当の額です。
- 配当性向と自己資本比率は、会社が開示する連結ベースの値です。2027年3月期の配当性向は、決算短信の予想欄の値です。
- 記念配当は2023年3月期の4円(保証残高1兆円の記念)の1回だけです。ほかの16期は全額が普通配当です。17期連続増配の起点は、表の前の年(2009年3月期)の年間1,500円(当時の開示値)です。
- 2020年3月期の純利益の伸びには、従業員持株会の信託に関する分配金が税務上の損金になり、法人税の負担率が下がった一時的な要因が含まれています(2021年3月期決算短信)。2021年3月期の純利益の減少はその反動で、営業利益は増えています。
- (出典:各年の決算短信、有価証券報告書 第26期)
利益の成長と、配当に回す割合の上昇。この2つが増配を支えてきました
2010年3月期から2026年3月期まで、配当は毎年増えています。純利益が減った2021年3月期も増配でした。
長い期間で見ると、配当性向はおおむね2割、3割、5割へと段階的に上がってきましたね。利益の成長に加え、配当に回す割合の引き上げも増配を支えてきました。配当性向がおおむね5割で推移した2021年3月期から2026年3月期は、1株配当の伸びはEPSの伸びにおおむね沿っています。
還元方針に数字が入ったのは、ここ3年です。
・2024年5月=「配当性向50%以上を目標として配当を実施し、企業価値の向上に応じて配当総額を持続的に高めてまいります」(決算説明資料)。
・2025年5月=累進配当(「増配もしくは配当の維持」)を導入し、2028年3月期末までに100億円の自己株式取得を目指す。
・2026年5月=配当性向の目安を100%に引き上げ、中間配当を始める。根拠は、成長投資とリスクへの備えに必要な資本を計算し直した結果、「現行において株主の皆様に対し更なる利益還元が可能であると認識した」こと。
それまでの方針は「企業業績に応じた配当政策を実施する」で、配当性向の目標は書かれていませんでした(経緯の細目は補足C)。
17期の増配は過去の実績で、これからの配当を約束するものではありません。配当性向の目安が100%になった今、私が見ているのは、配当を支える1株当たりの利益が伸びるかどうかです。その利益を生む仕事を、次の章で見ていきましょう。
🏢 どんな仕事で、配当を支えているのか
請求書を送って、入金の日を待つ。会社勤めをしていると、この待ち時間を経験した方も多いと思います。商品を売っても、代金が入るまでには時間があります。その間に取引先が倒産すると、売った会社は代金を回収できないかもしれません。
イー・ギャランティは、こうした未回収に備える保証サービスを提供しています。利用企業から保証料を受け取り、取引先が倒産などで払えなくなったら、契約で定めた条件のもと、支払限度額を上限に利用企業へ支払う仕組みです。取引先の信用を審査し、未回収のリスクを引き受け、そのリスクを金融機関などへ移す。これがこの会社の仕事です。
引き受けたリスクの大半は金融機関などへ移し、自社で持つのは16%です
会社は多くの取引先のリスクをまとめ、小口に分けて、金融機関やファンドへ移します。会社はこれを「流動化」と呼び、その費用(再保証料)を払っています。会社が保証している金額の合計を「保証債務」といい、2026年3月末は9,113億円でした。このうち自社グループで持っているリスクは1,466億円、16%です(有価証券報告書 第26期)。すべてを移すわけではなく、自社で負担する部分が残ります。この割合だけで損失の大きさは判断できません。引き受けるリスクの内容と、それに備える資本も合わせて見る必要があります。
売上を見る軸は、保証する金額と保証料率です
保証料率は、たとえば1億円の保証に対して年1.24%なら、保証料は年124万円です(2026年3月期下期の平均保証料率で計算した例です)。利益には、リスクを移すための費用や、保証履行(代わりに払うこと)に備える費用、人件費なども影響します。
お客さんは保証を一度使うと与信管理(取引先の信用を調べて管理する仕事)に組み込むので、「契約更新率が90%を超える水準を維持」している、と会社は書いています。販売は、地方銀行などの提携先から紹介を受け、自社の営業担当者がお客さんを一社ずつ訪ねる形です(2026年5月の決算説明会の質疑応答)。会社の成り立ちや大株主は補足Cにまとめました。更新率の高い保証を積み上げてきた仕事は、いま利益につながっているのでしょうか。次の章で見ていきましょう。
🧭 保証の拡大は、利益につながっているか
2026年3月期は、売上高が7.9%増えた一方、営業利益の伸びは1.9%でした。保証する金額が増えても、利益が同じペースで増えるとは限りません。直近の数字を小さな表にしました。
表B:直近3期と第1四半期の事業指標
| 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期(4〜6月) | |
|---|---|---|---|---|
| 保証債務(期末・億円) | 7,518 | 8,260 | 9,113 | 9,317 |
| 平均保証料率(下期) | 1.26% | 1.32% | 1.24% | ― |
| 売上高(百万円) | 9,165 | 10,224 | 11,029 | 2,800 |
| 売上総利益率 | 80.3% | 76.4% | 73.1% | 74.0% |
| 営業利益率 | 52.9% | 49.9% | 47.1% | 47.6% |
| 営業人員(期末・人) | 109 | 95 | 113 | ― |
- 右端の列は2027年3月期の第1四半期(4〜6月の3か月分)で、保証債務は6月末の残高です。通期の列と売上高を横に比べるときはご注意ください。
- 平均保証料率は会社の算式による値で、半期の保証料収益を年に換算し、期末と中間期末の平均の保証債務で割ったものです。期末の保証債務にこの料率を掛けても、通期の売上にはなりません。
- 売上総利益率と営業利益率は開示値から算出し、小数第2位以下を切り捨てています(会社の資料の表記と0.1ポイント違うことがあります)。
- 保証債務は、債権の残高が分かる契約についてはその残高、分からない契約については保証枠を合計した金額です。会社は「保証残高」(保証枠の合計・2026年3月末2兆6,443億円)も開示していますが、2021年3月期に数え方が変わったので、この記事では保証債務を使います。
- (出典:2026年3月期決算短信、2026年3月期決算説明資料、2027年3月期第1四半期決算説明資料)
平均保証料率の動きと、保証に伴う費用の増加は別の動きなので、分けて見ていきます。
保証する金額は増え続け、平均の保証料率は少し下がりました
保証債務は毎年増えていて、直近3期は10%前後の伸びです。第1四半期末で9,317億円になり、会社は「今期中には1兆円の大台に到達する見込み」と書いています(2026年3月期決算説明資料)。
平均保証料率は、2021年3月期下期の1.63%を頂点に下がりました。2024年3月期下期が1.26%、2025年3月期下期が1.32%、2026年3月期下期が1.24%です。会社はこの推移を「おおよそ横ばいで推移」と書いています(2026年3月期決算説明資料)。第1四半期の資料では、新型コロナの収束後は安定していた料率が若干の低下傾向にあるとし、今期は前期末の水準を保って概ね横ばいの見通しだとしています。
料率が少し下がった要因のひとつとして、会社は保証の使われ方を挙げています。信用度が高く保証料率の低い取引先について、与信管理の「事務アウトソーシング」として保証を使うニーズが従来から多い、という説明です。こうした契約は保証する枠に比べて保証料が小さいため、平均の料率を押し下げる、と会社は説明しています(2026年5月の決算説明会の質疑応答)。この需要は保証の引き受けの増加にもつながった、とも会社は説明しています(2026年3月期決算説明資料)。一方で会社は、倒産の増加を受けた値上げも行っています(有価証券報告書)。値上げをした契約がある一方で、全体の平均料率が下がることは、両立します。
売上総利益率は低下。会社は底打ちを見込んでいます
売上総利益率は80.3%、76.4%、73.1%と2年続けて下がり、営業利益率も52.9%から47.1%へ下がりました。2025年3月期と2026年3月期は「上半期を中心として倒産件数の増加に伴った保証履行が増加した」と決算短信にあります。
2026年3月期に売上総利益率が下がった理由として、会社は2つ挙げています(2026年3月期決算説明資料)。
・外部の引受先(流動化先)で損害率(損失の割合)が悪化し、リスクを引き受けてもらうための料率(再保証料率)が上がったこと。
・自社で負担する保証の支払い(保証履行額)が増えたこと。
そのうえで会社は、リスクの入れ替えで損害率が良くなっているとして、売上総利益率は「26/3期が底打ちとなる見込み」としています。これは会社の見通しで、確認できた実績ではありません。第1四半期の売上総利益率は74.0%で、前の年の同じ時期と同じ水準でした。
再保証料は複数年の履行実績で決まるため、一時的に保証履行が増えても「短期的な原価の上昇要因とはなりません」と有価証券報告書にあります。一方で、継続的に保証履行が多発する景気悪化時には、保証料への価格転嫁が十分に進まない場合に業績に影響する可能性がある、とも書いています。自社で持つリスクの割合は2010年3月末の8%から2026年3月末の16%へ上がっていて、会社は「自社保有リスクを過度に増やさない方針」と話しています。
営業人員の増強と、提携先を通じた販売の拡大
会社は、中期経営計画の売上高と経常利益の目標(2028年3月期)の達成が「少なくとも1.5年程度遅れる見込み」だと説明しています。主な理由は「計画初年度において営業人員の増員が想定どおりに進まなかったこと」です。その後は増強が進み、営業人員は2025年3月期末の95人から2026年3月期末の113人へ増えました。契約単価の引き上げは、引き続き課題としています(2026年3月期決算説明資料・説明会・第1四半期決算説明資料。目標の数字と進み具合は補足B)。
あわせて、提携先の社員がお客さんへの案内などを担う「セールスパートナーモデル」の整備も進めています。このモデルを前提とした業務提携は第1四半期に10社を超え、会社は今期中にシステムを整え、本格的な稼働は来期以降としています(公式note・2026年8月7日)。こうした取り組みが、今後の契約や利益にどう表れるかを見たいと思います。
2027年3月期の会社予想は、売上高119億円(7.9%増)、純利益38億円(5.9%増)です。第1四半期は、保証債務と売上高が過去最高を更新し、純利益は10.2%増でした。営業利益の増加には、賞与の支払い時期が第2四半期にずれた分が含まれる、と会社は書いています。一方、第1四半期の保証債務の増加は204億円で、前の年の同じ時期の216億円より小さい額でした。会社が需要の背景に挙げる外の環境は、補足Eで公的統計と並べました。次の章では、配当と自己株式の取得に回す資金を見ていきましょう。
⚖️ 配当を支える現金と、事業の備え
この章では、2つの問いを分けて見ます。1つ目は、配当を払う現金があるか。2つ目は、事業に必要な備え(資本)を残せるか。表をもうひとつ用意したので、一緒に確かめていきましょう。
表C:直近9期のキャッシュ・フロー・配当・自己株式・現金
| 決算期 | 営業CF(億円) | 投資CF | 配当金の支払額 | 自己株式の取得 | 現金及び現金同等物(期末) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2018年3月期 | 18.4 | △6.8 | 4.2 | 0.0 | 60.4 |
| 2019年3月期 | 18.8 | △21.9 | 4.7 | 0.0 | 60.5 |
| 2020年3月期 | 10.3 | △16.6 | 5.5 | 0.0 | 48.2 |
| 2021年3月期 | 46.9 | △0.8 | 5.9 | 0.0 | 116.4 |
| 2022年3月期 | 26.6 | △18.2 | 10.0 | 0.0 | 123.9 |
| 2023年3月期 | 32.3 | △41.9 | 12.1 | 0.0 | 107.2 |
| 2024年3月期 | 31.3 | △42.8 | 16.1 | 0.0 | 82.4 |
| 2025年3月期 | 41.0 | 3.1 | 16.7 | 0.0 | 112.1 |
| 2026年3月期 | 40.1 | 12.2 | 17.7 | 59.9 | 87.1 |
- 表中の△はマイナスを表します。各列は千円単位の開示値から算出し、0.1億円未満を切り捨てています。
- 営業CF=本業で実際に出入りする現金です。投資CF=定期預金の預け入れと払い戻し、有価証券の取得と償還、設備の取得などに伴う現金の出入りで、△は支出が収入を上回ったことを表します。この会社の投資CFの大半は、定期預金と有価証券の出し入れです。
- 配当金の支払額は、その年度に実際に支払った配当です。表Cの期間は期末配当だけだったので、支払額は原則として前の年度の期末配当にあたります(2026年3月期の17.7億円は、2025年3月期の配当37円の分です)。2027年3月期からは中間配当が始まるので、この対応は変わります。このほかに「非支配株主への配当金の支払額」が毎年あります(2026年3月期は1.3億円)。
- 自己株式の取得は、キャッシュ・フロー計算書の「自己株式の取得による支出」です。2025年3月期以前は単元未満株式の買い取りだけで、0.1億円未満です。
- 2026年3月期の投資CFと財務CFは、決算短信と有価証券報告書で区分の違いによる小さな差があります(合計は同じです)。この表は有価証券報告書の値です。
- (出典:各年の決算短信、有価証券報告書 第26期)
まず、配当を払う現金はあるか
2026年3月期の営業CF(本業で稼いだ現金)は40.1億円でした。配当17.7億円と自己株式の取得59.9億円を合わせた支出は約77億円。営業CFを上回っています。同じ年度に、現金及び現金同等物は112.1億円から87.1億円へ減りました(自己資本比率は表Aのとおり73.3%から68.8%へ)。
年間84円の予想配当は、2026年6月末の自己株式を除いた株数4,448万株を使うと、総額で約37億円になる試算です。株数を前提に置いた試算で、実際の年度内の支払額とは異なりますが、配当の規模を考える参考になります。これは2026年3月期の営業CF40.1億円の9割にあたります。自己株式の取得は、2028年3月期末までの100億円という目標に対し、約40億円分が残っています。配当と自己株式を合わせた還元が営業CFを上回る形は、手元資金を取り崩す要因になります。配当の支払い時期と、自己株式の取得の時期や金額を合わせて、現金の動きを確かめていきます。
次に、事業の備えとして必要な資本を残せるか
会社は、保証のリスクに備える資本と、成長投資に必要な資金を見積もったうえで、現状では配当性向100%でも余剰があると説明しています。備えの基準は「当社が実際にリスクを負っている残高に対し、8%から12%を目安」です(2026年5月の決算説明会の質疑応答)。この残高は、再保証などで外部へ移した分を除いた「実質的に自社が負っているリスク残高」だと公式noteにあります(2026年7月23日)。ただし、計算に使った具体的な金額は開示されていません。有価証券報告書の自社で持つリスク1,466億円にこの基準を当てはめた参考試算は、補足Aに置きました。
方針は「配当性向100%を目安とした累進配当」。利益が減った年はどうなるか
会社の方針は「配当性向100%を目安とした累進配当」です(2026年5月の決算説明会)。累進配当は「増配もしくは配当の維持」、つまり減配しない方針です(2025年5月の開示)。会社は「仮に将来的に配当性向を下げることがあっても、配当金額そのものは減らさないという考え方です」と説明しています(公式note・2026年7月23日)。利益が減った年に配当を維持すれば、配当性向が100%を超える場合もあります。ただし、方針があることと、将来の配当が決まっていることは別です。
会社は、必要な資本をその都度計算し直しながら、高い還元を当面続ける考えを示しています(2026年5月の決算説明会の質疑応答)。年間約40億円の営業CFを挙げ、この稼ぐ力がある限り、配当性向100%を維持できる見込みだと説明しています(公式note・2026年7月23日)。
会社は公式noteで、当面数年は配当性向100%を続ける考えを示しています。あわせて社外取締役は、成長投資やM&Aなど新たな計画が出た場合には方針を見直す可能性も補足しています(公式note・2026年7月10日。将来の指標の見直しは補足C)。今後、必要な資本や手元資金について会社がどのように説明するかを、私は確かめていきます。
有価証券報告書が挙げるリスクのうち、法規制の変化と、流動化先が引き受けられなくなる可能性については、補足Dにまとめました。
☕ おわりに ― 今回の見方と、次に確かめること
「イー・ギャランティ(8771)は、これからも増配を続けられそうか」。今回の資料を読んで、私はこう考えました。今回の大幅な増配予想には、配当性向の引き上げが大きく影響しています。配当性向100%を目安とする方針が続くなら、今後は配当性向の引き上げよりも、1株当たりの利益の伸びが増配を左右すると見ています。
保証する金額は増えていますが、直近の通期決算では利益率が下がりました。事業の拡大が利益の伸びにつながるか。そして、配当と自己株式取得を進めながら、必要な資金を保てるか。この2つを、今後の決算で確かめたいと思います(有価証券報告書が挙げるほかのリスクは補足D)。
次の四半期決算は11月13日の予定です(会社サイトのIRイベント)。そこで具体的に見るのは、この3点です。ご自身で確かめるときの手がかりとして使っていただけたら、うれしいです。
・中間配当(会社予想42円)がいくらで決まるか。会社は「中間決算に関する取締役会で正式に決定する予定」としています。決算短信の「配当の状況」の欄で確かめます。
・保証料率が横ばいを保ち、売上総利益率が会社の見込みどおり底打ちするか。決算説明資料の保証料率の行と、売上総利益率を、半期ごとの推移で見ます。
・配当や自己株式取得に伴い、手元資金がどう動くか。自己株式取得状況の開示と、決算短信の貸借対照表の「現金及び預金」で追います。こちらは表Cの「現金及び現金同等物」と範囲が異なる(定期預金などを含む)ので、同じ項目の前期末残高127億円(2026年3月末)と比較します。
株価が割安か割高かという判断は、この記事ではしていません。もし会社の資料で私が見落とした数字に気づいた方がいたら、教えてもらえるとうれしいです。17期の増配を出発点に、これからの利益と配当を追っていきます。
みなさんは、どう考えますか。
🔍 補足 ― 本文で触れた計算と細目
ここからは補足です。まず参考として株価と配当利回りを載せ、その後に、本文で触れた計算や細目をA〜Eの順にまとめました。必要な項目からご覧ください。
参考:株価と配当利回り
株価1,836円(2026年10月16日の東京証券取引所の終値)で計算すると、配当利回りは次のとおりです。
・2026年3月期の実績配当40円で計算:約2.1%
・2027年3月期の会社予想配当84円で計算:約4.5%
※税引前で、小数第2位以下を切り捨てています。実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。予想配当は変わることがあり、利回りも株価で変わります。将来の配当・利回りを約束するものではありません。
補足A:必要な資本の参考試算(計算過程)
社長は説明会で「リスクバッファ分を差し引いても十分な資本を有している」と話しています。会社の基準は、実際にリスクを負っている残高に対して8〜12%を目安、です。有価証券報告書の自社で持つリスク1,466億円(2026年3月末)に当てはめると、117〜176億円です。同じ時点の自己資本は202億円なので、差し引くと26〜84億円が残ります。これは開示値から算出した参考試算で、成長投資に必要な資本を含めておらず、そのまま配当に使える現金を示す数字でもありません。会社はこの計算の金額を開示していないので、会社の試算と同じ答えになるとは限りません。なお会社は決算説明資料で、還元と投資の元手として「営業キャッシュフロー約40億円/年」と「手元現金約120億円」を示しています。手元現金の範囲は書かれておらず、表Cの現金及び現金同等物87.1億円とは別の数字です。
補足B:中期経営計画の目標と進み具合
以下は会社の計画や目標であり、達成を約束するものではありません。
2024年6月の中期経営計画「Accelerate2028」の目標は、2028年3月期に売上高200億円、経常利益100億円です。ROE(自己資本利益率=株主のお金に対する利益の割合)とROIC(投じた資本に対する利益率)は、20%以上が目標です。
会社は2026年3月期の決算短信で、売上と利益の目標に「現段階において大幅な遅れが生じている」と書き、「引き続き目標達成に向けて努めてまいります」としています。説明会では「少なくとも1.5年程度遅れる見込み」と話しています。ROEとROICの目標は「計画通り2028年3月期までに達成できる見込み」としています。2026年3月期のROEは16.2%でした。
営業人員について会社は、定着率の改善で予定どおりの人員増加ペースになったとしています。入社間もない社員も入社3年目以上の社員と遜色ない水準で契約を獲得している、と書いたうえで、契約単価の引き上げを残る課題としています。セールスパートナーモデルを前提とした業務提携は、第1四半期に10社を超えました(公式note・2026年8月7日)。
中期経営計画とは別に、会社は毎年の経常利益の目標も立てています。2026年3月期の目標53億円も達成し、上場以来の連続達成が続いています(連続の回数は、有価証券報告書が「20期連続」、決算説明資料が「19期連続」と、資料によって1期違います)。
補足C:会社の成り立ち・株数・配当方針の経緯
2000年に伊藤忠商事の子会社として設立されました。いまも伊藤忠商事が筆頭株主で、持株比率は14.2%です(自己株式を除く発行済株式に対する割合)。ただし親会社ではありません。有価証券報告書 第26期に「親会社等はありません」とあります。大株主には帝国データバンク(6.4%)も入っています。会社は決算短信の倒産件数に、同社の調査を使っています。事業は信用保証事業の単一セグメントで、2026年3月期の売上高は110億円、従業員は194名です。販売の提携先は、地方銀行や信用金庫、税理士法人、保険代理店などで、自社の営業担当者は本社と8か所の支店にいます。
株式分割は4回です(2011年に1株を200株、2013年に1株を2株、2018年に1株を2株の分割を2回)。株数は、2011年12月の公募増資やストック・オプションの行使などで、分割後換算で3,232万株(2010年3月期末)から4,792万株(2025年3月期末)へ増えました。2026年3月に264万株を消却(買い戻した自社の株を消すこと)し、新株予約権の行使による増加を含めて、2026年3月期末は4,533万株です。2026年6月末の発行済株式数も4,533万株で、自己株式84万株を除いた4,448万株を⚖️の試算に使いました。2026年3月期には約60億円分の自己株式を取得しました。
期の途中で配当予想を引き上げる開示は、2015年から2021年までに5回あります。どの年も「株主還元を従来以上に高めることが可能と判断し」という文です。期初に出した配当予想を実績が下回った年は、2011年3月期から2026年3月期の16回にはありません(上回った年が14回、同じ額が2回)。これは配当性向が17〜56%だった時期の記録で、配当性向100%を目安とする2027年3月期の予想にそのまま当てはまるものではありません。2022年12月には、保証残高が1兆円に達する見込みになったとして記念配当4円を決め、同時に株主優待(クオカード)をやめました。やめた理由は「剰余金の配当により株主の皆様へ利益還元を行うことが、公平かつ有効であると判断し」です。2024年5月の「配当性向50%以上」の文は、中期経営計画と有価証券報告書にも入っています。株主総会で社外取締役は、将来はDOE(自己資本配当率)を基準にした指標への移行も検討中だと話しています(公式note・2026年7月10日)。DOEは、自己資本に対する配当の割合です。
補足D:有価証券報告書が挙げるリスク(本文で触れた2つ)
法規制の変化。会社は、この仕事が保険業法の規制対象に当たらないと判断し、債権管理回収業に関する特別措置法と金融商品取引法の規制対象でもないとしています。新しい規制ができれば事業の形が変わる可能性がある、とも有価証券報告書に書いています。
流動化先が引き受けられなくなる可能性。その場合「売上高の減少や原価率の上昇が生じる可能性」があると会社は書いています。
補足E:会社が挙げる外の環境を、公的統計の推移で見る
会社は中期経営計画で「倒産件数の増加や金利の上昇、労働人口の減少など」を需要の背景に挙げています。会社の数字と統計では対象が違うので、ずれる点は文中で断ります。
企業どうしの掛け売りの残高は、15年でほぼ横ばいでした。日本銀行の資金循環統計で、民間企業(民間非金融法人企業)の「企業間・貿易信用」の負債残高は、2010年度末の203兆円から2025年度末の216兆円で、増加は限定的でした。会社の保証債務9,113億円は、その0.4%にあたります(開示値と統計値から算出した参考値で、市場での占有率とは定義が違います。会社の「市場シェアは1%程度」の計算方法は、今回確認した資料では確認できませんでした)。会社は同じ統計の2024年時点の値を使い、市場規模219兆円に対して「浸透率向上により大きな成長余地がある」と書いています。同じ15年で、会社の保証債務は2011年3月末の1,369億円から2026年3月末の9,113億円へ、約6.6倍になりました。市場全体の動きだけでは、この伸びを説明しきれない、と私は読んでいます。会社は2026年3月期について「新規契約数増加により保証債務は過去最高9,113億円となった」と説明しています(2026年3月期決算説明資料)。
企業向けの貸出金利は、2024年から上がりました。主要行の短期プライムレート(企業向けの短期貸出の基準になる金利)は、2009年から2024年8月まで1.475%で変わりませんでした。2026年8月には2.375%です(日本銀行の資料)。会社は金利の上昇を「融資から企業間信用への移行」の背景として挙げています。金利が上がったあとの需要が保証債務の増加額にどう表れるかは、会社の説明と統計を別々に見ていきます。
会社が毎期の決算短信で使っている倒産件数は、民間の調査会社の数字です。企業の倒産と対象がそろう公的統計は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。
(この補足の公的統計は、日本銀行の公表値です。比率は、表示する桁より下を切り捨てています。)
出典・一次ソース
主な資料には、公表元へのリンクを付けています(別のタブで開きます)。
- イー・ギャランティ 決算短信(2010年3月期〜2026年3月期・2026年3月期第3四半期・2027年3月期第1四半期)=2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月7日)ほか。2014年3月期以降はIRBANKの書類一覧、2010〜2013年3月期は会社サイトのIRニュースによる
- イー・ギャランティ 株主還元方針の変更及び中間配当の実施に関するお知らせ(2026年5月15日)、剰余金の配当(増配)に関するお知らせ(2026年5月15日)、株主還元方針の変更に関するお知らせ(2025年5月28日)、自己株式取得に係る事項の決定(2025年5月28日・2025年10月30日)、取得終了(2025年10月14日・2026年1月8日)、自己株式の消却に関するお知らせ(2026年2月27日)
- イー・ギャランティ 配当予想の修正に関する開示(2015年1月30日・2017年2月28日・2018年1月30日・2019年1月30日・2021年3月19日)、株式分割に関する開示(2018年2月28日・2018年7月30日)、配当予想の修正(記念配当)及び株主優待の廃止に関するお知らせ(2022年12月29日)=IRBANKの書類一覧による
- イー・ギャランティ 2024年3月期 決算説明資料(2024年5月15日)、中期経営計画「Accelerate2028」(2024年6月12日)、2026年3月期 通期決算説明資料(2026年5月15日)、2026年3月期 通期決算説明会 書き起こし・質疑応答の要約(2026年5月20日)、2027年3月期 第1四半期 決算説明資料(2026年8月7日)
- イー・ギャランティ 有価証券報告書(第26期・2026年3月期・2026年6月25日提出)(EDINET)、有価証券報告書 第10〜25期の配当政策
- イー・ギャランティ 公式note 第26回定時株主総会でいただいたご質問(2026年7月10日)、連続増配18期、配当利回り4%超。なぜ今、配当性向100%に変更したのか(2026年7月23日)、2027年3月期 第1四半期決算発表(2026年8月7日)、株式情報/配当情報(会社サイト)、IRイベント(会社サイト)
- 日本銀行 資金循環統計(民間非金融法人企業の企業間・貿易信用)、長・短期プライムレート(主要行)の推移
免責
この記事は、公開情報をもとに筆者が整理した観察ノートであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。将来の業績・配当・株価を約束するものではありません。参考利回りは記載の基準日の終値に基づく参考値で、株価が動けば変わります。実績と会社予想は別物です。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。記載の数値は各社の開示資料に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。
著者:ミーナ/更新日:2026-10-18