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リコーリース(8566)は、これからも増配を続けられそうか

📖 約18,900文字(まずは「30秒で要点」だけでも。じっくり読むと約25〜36分)

コピー機のリースからはじまり、事業を広げてきたリコーリース(8566)を、17期分の決算資料で見てみました。

☕ まずは30秒だけ

リコーリースの純利益は、この17期で1.9倍になりました。その間に、1株あたりの配当は4.9倍になりました。利益が1.9倍、配当が4.9倍。直近の2026年3月期も、純利益が2割近く減ったのに配当は増えています。この開きが気になって、17年分の開示資料を読みました。どこからこの差が生まれたのか、この記事で順番にたどっていきます。

(お忙しい方は、ここだけ読めば大筋がつかめます。気になったら下へどうぞ。)

ざっくり言うと

リコーリースは、オフィスの複合機などの事務機からはじまった、企業向けの総合リース会社です。会社は「1996年の上場以来2025年3月期まで30期連続※で増配を継続中」と開示しています。※印は「2000年3月期の株式分割による実質増配を含む」という会社の注記です。2026年3月期の配当も、前の期より5円多い185円でした。そして2026年に始まった新しい中期経営計画では、「累進配当」(配当を減らさず、維持か増配だけにする方針)を基本に据えました。さらに2027年3月期から6年間、「特別配当」の上乗せを予定すると発表しています。

利回りは?

2026年3月期の実績配当185円を、株価6,720円(2026年7月31日の東京証券取引所の終値)で割ると、約2.7%です。会社が予想する2027年3月期の配当256円で計算すると、約3.8%です。256円の内訳は、普通配当186円と特別配当70円(中間・期末とも、普通93円+特別35円)。特別配当は2032年3月期までの期間限定の予定で、毎年の金額が約束されたものではありません。その期間が終われば普通配当186円の水準へ下がることもありえますが、それは方針の撤回ではなく、この設計のとおりの動きです。なお会社は、期間が終わったあとも「特別配当を含む水準で累進配当の継続を目指す」と表明しています。(実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。株価で変わりますし、将来の配当・利回りを約束するものではありません。いずれも税引前の数字です。)

配当は年2回(中間と期末)、3月期決算の会社です。

おさえどころ3つ

① 会社の開示で30期連続の増配。

この17期で1株配当は38円から185円へ。純利益が減った年が5回ありますが(コロナの年も、大きな特別損失の年も)、その5回とも配当は増えています。2026年3月期の配当総額57.2億円は純利益128.2億円の半分以下で、配当は利益の中でまかなえています。

② 金利の上昇が利益を直接削る構造。営業利益は2026年3月期に5.1%減、今期の会社予想も14.7%減です。

借りたお金で設備を買って貸すリースの商売なので、金利は仕入れ値の一部です。実績と予想を並べると、営業利益は2期続けて減る見込みです。会社は「金利上昇に応じて資産効率を高める」と説明しています。

③ 今期の予想配当256円のうち、「下げない」対象は普通配当186円です。

新しい計画は「累進配当+6年間の特別配当」という設計です。上乗せの特別配当70円は期間を区切った予定で、256円を続く水準と受け取ることはできません。この設計の読み方を、後半で見ていきます。

この3つを17期分の資料で順に確かめたのが、ここから下の記録です。

(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料に基づきますが、正確性は保証しません。投資の判断はご自身で。)

🏢 リコーリースってどんな会社?

勤め先のオフィスに置いてある複合機。よく見ると、メーカーのロゴとは別に、管理番号のシールが貼ってあったりします。あのような機械は、買った備品ではなく、毎月決まった額を払って借りている「リース」であることが多いです。診療所の医療機器や、工場の工作機械、営業に使う車も同じです。あの「借りて使う」仕組みの貸し手の側に長く立ってきたのが、リコーリースです。

ひとことで言うと、設備を「買って持つ」代わりに「借りて使う」形で企業に届けることを仕事にしてきた会社です。1976年にリコークレジットとして設立され、1984年にいまの社名になりました。1996年に東証二部へ上場し、いまはプライム市場です。なお会社は、2026年12月1日に商号を「リトレス」へ変更する予定と発表しています(2026年2月の適時開示)。大株主にはリコーとみずほリースが並び、2020年に3社間の業務提携契約を結んでいます。(この章は、会社の沿革・会社概要ページと2026年3月期決算短信によります。)

事業は3つの区分で開示されています。

中心の「リース&ファイナンス事業」は、事務用・情報関連機器、医療機器、車両などのリース・割賦(かっぷ。分割払いで機器を売る形です)・融資。

「サービス事業」は、請求書発行や売掛金回収の代行、医療・介護報酬のファクタリング(あとで入ってくる予定のお金=債権を、先に買い取って資金にかえる仕組み)など。

「インベストメント事業」は、住宅賃貸や不動産、太陽光発電などへの投資です。

従業員は連結1,657名。取引の相手は中堅・中小企業が中心です。

少し前の開示ですが、2016年3月期の短信では「40万社の中堅・中小企業のお客様に対する取引履歴」を蓄積してきたと説明していました。この積み重ねを土台に、1契約あたりの平均単価を「約210万円と業界平均値より低く抑える」ことで、特定の取引先に業績が左右されにくいつくりです。(40万社・約210万円は、いずれもこの短信の時点の数字です。)

リース会社には、お金の流れに大きな特徴があります。貸す設備を先に自分で買うので、その資金の多くを借入などで調達します。だから自己資本比率は低めに出ますし、事業を伸ばす年ほど営業キャッシュ・フローがマイナスに出ます。数字の章で読み迷いやすいところなので、先にお伝えします。それでは、17期分の数字を見ていきましょう。

📊 数字でみる ― 純利益1.9倍、配当は4.9倍

まず全体の形から。17期で純利益は66.5億円から128.2億円へ、1.9倍になりました。売上高は2,286億円から3,386億円で1.5倍。そして1株あたりの配当は、38円から185円へ4.9倍です。この間、株式の分割や併合はなく、発行済株式数もほぼ一定。昔といまの1株あたりの数字は、そのまま比べられます。

売上より利益が、利益より配当が速く伸びました。その差を生んだのが、配当性向の引き上げです。17.8%から44.5%へ、割合そのものが2.5倍になりました。1株あたり利益の伸びと掛け合わせると、配当の4.9倍とほぼ一致します。

1株配当と純利益の推移(2010年3月期〜2026年3月期) 棒グラフが1株配当(右の目盛り・円・ゼロ起点)、折れ線が純利益(左の目盛り・億円・ゼロ起点)。1株配当は38円から185円へ一度も減っていない。純利益は5回(2014・2018・2020・2024・2026年3月期)前の年より減ったが、その5回とも配当は増えている。純利益は2025年3月期の156.6億円が最も高く、2026年3月期は128.2億円。 00円 20億25円 40億50円 60億75円 80億100円 100億125円 120億150円 140億175円 160億200円 配当 185円 純利益 128.2億円 20102014201820222026 1株配当(右の目盛り・円) 純利益(左の目盛り・億円)

(各年3月期。棒=1株配当〔右の目盛り・円〕、線=純利益〔左の目盛り・億円〕。どちらもゼロ起点です。この17期に株式の分割・併合はないため、1株配当はそのまま比べられます。出典:各年 決算短信)

表A 純利益・配当・配当性向・自己資本比率(17期)

純利益(億円) 1株配当(円) 配当性向 自己資本比率
2010/3 66.5 38 17.8% 15.3%
2011/3 70.2 39 17.3% 16.5%
2012/3 94.2 41 13.6% 17.1%
2013/3 102.2 43 13.1% 17.0%
2014/3 95.5 45 14.7% 16.1%
2015/3 101.4 50 15.4% 16.4%
2016/3 110.5 55 15.5% 16.5%
2017/3 117.7 60 15.9% 16.9%
2018/3 113.1 70 19.3% 17.0%
2019/3 119.4 80 20.9% 16.8%
2020/3 118.3 90 23.5% 15.8%
2021/3 120.2 100 25.6% 16.5%
2022/3 134.8 120 27.4% 17.1%
2023/3 148.7 145 30.1% 17.1%
2024/3 112.8 150 41.0% 17.8%
2025/3 156.6 180 35.4% 17.0%
2026/3 128.2 185 44.5% 16.5%

表Aを縦に読むと、増配の幅がだんだん大きくなるのがわかります。1〜2円刻みだった増配が、2015年3月期から5円、2018年3月期からは10円に。2022年3月期以降は20円、25円、30円という年も現れます。配当性向も10%台から20%台、30%、40%台へ。そして純利益の欄には、前の年より減っている年が5回あります(2014・2018・2020・2024・2026年3月期)。その5回とも、増配は続いています。ただし直近の減益年である2024年・2026年3月期の増配は、どちらも5円。10円刻み以上が続いてきた2018年3月期以降では最小です。この歩みを会社がどんな言葉で説明してきたのかは、次の章でたどりますね。

その配当を支えるキャッシュ・フロー(現金の出入り)も確かめたいので、表をもうひとつ用意しました。リース会社特有の読み方が必要な場所です。

表B キャッシュ・フローと配当の支え(17期)

営業CF(億円) 財務CF(億円) 現金残高(億円) 配当総額(億円)
2010/3 288.7 △460.3 4.9 11.9
2011/3 222.4 △198.8 20.6 12.2
2012/3 △129.2 126.9 9.9 12.8
2013/3 △495.3 503.0 8.3 13.4
2014/3 △491.2 599.8 105.5 14.0
2015/3 △474.3 385.6 6.2 15.6
2016/3 △312.3 355.2 35.6 17.2
2017/3 △129.4 137.0 30.6 18.7
2018/3 △366.4 377.4 28.3 21.9
2019/3 △398.7 451.7 21.2 25.0
2020/3 △793.6 998.3 8.6 27.7
2021/3 389.3 △69.6 110.3 30.8
2022/3 91.4 △57.9 48.3 37.0
2023/3 △169.0 434.9 141.2 44.7
2024/3 △7.5 49.8 49.6 46.2
2025/3 △944.0 1,030.5 13.5 55.6
2026/3 △517.3 708.2 72.1 57.2

表Bで多いのは、営業CFのマイナスです。17期のうち13回で、プラスは2010・2011・2021・2022年3月期の4回です。数字だけ見ると心配に見えますが、🏢の章でみたとおり、貸すための資産を買った年ほど営業CFが減る商売です。直近の2026年3月期も営業CFは517億円のマイナスで、この年の営業資産残高は前期末より615億円増えました(決算説明会資料)。買い入れの資金は、財務CF=借入などの調達で賄われます。だから、この商売の土台は、お金を借り続けられる信用です。会社も古くから短信に、「安定した資金調達の実現は重要な経営課題」であり「財務体質の強化とそれを通じた格付けの維持・向上が不可欠」と書いてきました。(この数字にはひとつ経緯があります。2024年3月期の短信は、公表後に会社が「開示内容の一部に誤り」があったとして訂正しました。営業CFはプラス7.9億円からマイナス7.5億円に変わっています。表Bは訂正後の値です。)

では、配当は借りたお金から払っているのでしょうか。ここは数字で確かめられます。2026年3月期の配当総額は57.2億円、純利益は128.2億円。配当は利益の範囲に収まっています。営業CFのマイナスは、貸すための資産を先に買う支出の話であって、配当の原資を借金に頼っているという意味ではありません。

📖 増配の歩みを、会社の言葉でたどる

ここからは、各年の決算短信で会社自身がどう説明してきたかを、時系列でたどっていきましょう。(この章の「」内は、各年の決算短信の記述です。)

2010年〜2011年:景気の谷でも、連続増配の記録は続いていた

2010年3月期は、リーマン・ショックの影響が残る年です。売上は減りましたが、会社は「経費の抑制や事故債権の回収に努めるとともに高格付けを活かし資金調達費用を圧縮」して増益を確保しました。この年の短信には、すでにこんな一文があります。「過去に実施してきた株式分割(無償交付)による実質増配を含めると平成8年の上場以来15期連続での増配となる予定です」。いま会社が掲げる「30期連続」は、このころから一年ずつ積まれてきた記録です。翌2011年3月期は東日本大震災。「貸倒引当金を30億円繰入れ」ながら、調達費用の低減などで増益とし、配当も1円増やしました。

2012年〜2013年:貸倒れの備えが戻り、過去最高益へ

2012年3月期は、前年に積んだ震災への備えが不要になった年です。「貸倒費用が前期比52億円減少」し、純利益は34%増えました。2013年3月期も貸倒費用が戻り入れとなり、「2期連続で過去最高益」。前の年に積んだ備えが利益を押し下げ、その戻し入れが翌年の利益を押し上げます。リース会社の利益が、貸し倒れへの備えの増減で両方向に動くことがよく見える2年です。

2014年:減益でも、2円の増配

2014年3月期は、その反動の年です。「前期の貸倒費用戻し入れが影響して」営業利益は5.7%減り、純利益も6.5%減りました。それでも配当は2円増の45円。短信には2013年3月期から3期にわたり、「いかなる景気動向や経営環境においても、安定した株主配当を継続させるよう努力してまいります」という方針が置かれていました。減益の年に増配する形は、このあと何度も出てきます。

2015年〜2017年:配当性向の目標が、20%から25%へ一段上がる

2016年3月期に中期経営計画の目標を「1年前倒しで達成」し、2017年3月期は「2期連続で過去最高値を更新」します。配当性向の目標そのものは、じつは早くからありました。2010年・2011年3月期の短信に「中長期的に配当性向20%を目指しています」とあります。この時期の実績の配当性向は、13.1〜17.8%の間で推移していました。2017年3月期の短信は、そこへ一段高い数値を置きます。「中期的(3年~5年)目標として配当性向を25%とし、株主還元を一層進めてまいります」。当時の配当性向は15.9%です。増配の刻みが5円、10円と大きくなっていくのは、この宣言と重なります。

2018年:増収減益でも、10円の増配

2018年3月期は、システム費用を含む「戦略経費や貸倒費用などが増加した」年です。営業利益も純利益も、4%台の減少となりました。それでも配当は10円増の70円、配当性向は19.3%へ上がりました。利益が減った分は、配当性向を上げて増配を保ちます。表Aで見た形が、ここでも出ています。

2020年〜2023年:コロナ。予想を未定とせず、増配を見込んだ

2020年3月期は、「新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金を計上したこと等により」減益となりました。それでも2020年5月の短信で、会社は翌期の業績予想を未定とせずに提示し、配当も90円から95円への増配を見込みます。契約獲得の現場では「電話やWEB会議を利用した効率的な営業活動を取り入れてまいりました」(2021年3月期短信)。結果の2021年3月期は、「資産利回りの改善やインベストメント事業の資産増加等により」増益。業界全体の取扱高(会社が短信で引用する業界統計)が14.1%減った年のことです。実績の配当は、予想をさらに上回る100円です。続く2022年・2023年3月期も減収増益が続き、配当は120円、145円と大きく増えました。配当性向は30%に届きます。

2024年〜2026年:2つの特別損失。それでも増配は途切れなかった

2024年3月期、純利益は24.2%減りました。特別損失に投資有価証券評価損51.9億円を計上した年です。それでも配当は150円へ増配し、配当性向は41.0%へ跳ね上がりました。翌2025年3月期は156.6億円の最高益に戻り、配当は180円。そして2026年3月期。売上が過去最高を更新した一方で、サービス事業でのれんなどの減損損失16.0億円を含む特別損失19.4億円を計上し、純利益は18.1%減の128.2億円でした。会社自身も、新しい中期経営計画の資料で「Welfareすずらんの減損計上も影響」と、要因のひとつとして記しています(Welfareすずらんは、2022年12月に子会社になった介護事業の会社です)。実際、この年の減益は特別損失だけではありません。本業のもうけである営業利益も217.3億円から206.2億円へ5.1%減り、3つのセグメントはそろって増収減益でした(決算短信)。販管費も10.2%増えています(決算説明会資料)。それでもこの年の配当は185円へ増配。配当性向44.5%は、掲げていた「2026年3月期に40%以上」という目安の達成でもありました。

冒頭の疑問の答え合わせは、📊の章でみた掛け算のとおりです。そこに、もうひとつ。利益が減った年には、配当性向のほうを引き上げて、増配を途切れさせずにきました。30期連続という数字は、この決め方を毎年続けてきた結果だと、私は読んでいます。

🧭 新しい計画「中小企業を支える基盤へ」と、6年間の特別配当

次は、会社が示している計画です。この章では、ふたつに絞って読んでいきます。会社はこれからどこで稼ごうとしているのか。そして、配当256円はどこまでの約束なのか。なお、ここに出てくる目標や計画はすべて会社が公表しているもので、達成が約束されたものではありません。出典は2026〜2028年度中期経営計画の資料(2026年5月)と、2026年3月期の決算説明会資料です。

まず、会社はどこへ向かうのか

会社は2026年4月から、新しい中期経営計画を始めました。中長期ビジョンは「リースの可能性を広げ、中小企業を支える基盤へ」。軸に据えるのは、ベンダーリースです。機器のメーカーや販売店(ベンダー)と組んで、その先のお客さんにリースを届ける形で、会社の言葉では「ベンダーリースダントツNo1を目指し、安定成長の軸とする」。そこにBPO(事務作業の代行)とas a Service(機器を売り切らず、サービスとして提供する形)を伸ばす分野として加え、環境・不動産分野は資本効率を整えなおす位置づけにしています。

配当256円は、どこまでの約束なのか

今期の予想配当256円の内訳は、普通配当186円(前期実績から1円の増配)と、特別配当70円です。このうち、累進配当=「下げない」と決めた対象は、普通配当の186円に限られます。上乗せの70円は「2027年3月期より2032年3月期の間、特別配当を実施する予定であります」と、期間と「予定」の言葉つき。6年が終わったあとについては「特別配当を含む水準で累進配当の継続を目指す」とあります。これも表明の言葉です。予想配当性向は66.3%ですが、これは特別配当込みの数字で、普通配当だけなら約48%です(会社予想の1株利益386.06円からの計算値)。

なぜ、6年間の上乗せをするのか

会社の説明から、理由はふたつ読み取れます。ひとつは、創業50周年の節目であること。もうひとつは「財務レバレッジの適正水準化」、つまり積み上がった自己資本と借入のバランスを整える調整でもあるということです。この調整の大きさも計算できます。特別配当70円に期中平均の株式数(約3,082万株)を掛けると、年およそ21.6億円。6年でおよそ130億円を、配当のかたちで株主に返していく規模の話です(株数がいまのままなら、の前提の試算です)。前の中期経営計画から掲げてきた「配当性向は26/3期に40%以上、30/3期に50%を目安とする」目標のうち、2030年3月期の50%の目安を「特別配当により前倒しで達成する」とも記しています。

営業利益の伸びより、配当と投資を優先する計画です

今期の会社予想は、増収ながら営業利益は14.7%減です。中期経営計画の資料は、2026年度に「2回の利上げを想定」し、「金利上昇に応じて資産効率を高める。分配と投資を実行するため営業利益の伸びは抑制」と説明しています。(利益を抑えたいという話ではなく、金利で削られる分があっても、配当と投資を先に実行するという順番の話です。)今期はこのほか、テクノレントとの統合や商号変更を進めるための一時費用も、減益の要因に挙げられています(決算説明会資料)。その先の計画では、営業利益はほぼ横ばい(2029年3月期に210億円・年平均0.6%増)とする一方、純利益は年4.2%増、1株あたり年間配当金は258円(年平均11.7%増)まで増やす数字が示されました。まとめると、営業利益の伸びは重くても、配当は年1割強のペースで増やす計画です。

前の計画で届かなかったのは利益のほうで、配当の目標は守りました

前の中期経営計画(2023〜2025年度)の実績も、同じ資料に数字つきで載っています。営業利益は目標に28億円届きませんでした。会社はその理由を「想定以上に金利が上昇したこと、事業基盤強化のための投資等により」と説明しています。それでも「配当性向40%の目標を達成し、連続増配を継続」。📖の章でみた「減益の年も増配」と同じ順番が、直前の3年にもありました。

⚖️ 気をつけたいところと、支えになりそうなところ

ここからは、リスクや弱みと、支えになりそうなところを並べてみます。

気をつけたいところ

① 金利の上昇が、利益を直接削る構造です。

借りたお金で設備を買って貸す商売なので(🏢の章でみた形です)、金利が上がれば、その分の資金原価が費用になって利益を圧迫します。前の中期経営計画で営業利益が届かなかった理由の筆頭も、🧭の章でみたとおり金利の上昇でした。今期の営業減益の予想にも、利上げの想定が織り込まれています。会社は「金利上昇に応じて資産効率を高める」としています。ただ、調達コストの上昇と資産利回りの改善のどちらが勝つかは、これからの数字で確かめるしかありません。

② 特別配当は、期間と「予定」つきの上乗せです。

今期の予想配当256円のうち、累進配当の対象は普通配当186円です。特別配当70円は6年間の予定で、毎年の金額が保証されているわけではありません。つまり、256円を「これからの普通の水準」と受け取ることはできません。

③ 本業の利益も、2期続けて減る見込みです。

2026年3月期は特別損失(減損損失など)で純利益が2割近く減りましたが、それだけではなく、営業利益も5.1%の減少でした。今期の会社予想も営業利益14.7%減で、実績と予想を並べると2期連続の減少になります。純利益が振れると配当性向の計算も振れますし(41.0%、44.5%)、累進配当の下では、減益が続けば配当性向だけが上がっていきます。

支えになりそうなところ

① 会社の開示で、30期連続の増配です。

冒頭で見た、1996年の上場以来30期連続(会社注記つき)という開示に加えて、その後の2026年3月期の実績も増配でした。※過去の配当実績は、将来の配当を約束するものではありません。

② 減益の年に増配してきた実績が、方針の言葉と重なっています。

短信の配当方針は、「いかなる景気動向や経営環境においても」という前置きとともに、「安定した株主配当を継続させるよう努力してまいります」(2013〜2015年3月期)から「着実に株主配当を伸長してまいります」(2016年3月期)へと、言葉を強めてきました。実際に、5回の減益年すべてで増配しています。方針と行動がそろってきたことは、新しい累進配当の方針を読む手がかりになります。

③ 売上と営業資産の土台は、過去最高を更新しています。

2026年3月期は「営業資産の増加や資産利回りの向上等により、売上高・売上総利益は過去最高を更新」(決算説明会資料)。リース&ファイナンス事業の契約実行高も増え(決算短信)、営業資産残高は1兆2,832億円まで積み上がりました。利益のところでは、2期連続の減少の見込みですが、貸す資産という商売の土台そのものは積み上がっています。

📌 次に見ようと思っているポイント

これからの決算で、私はこんなところを見ようと思っています。予想ではなく、「どの資料の、どの数字を見るか」の話です。

① 普通配当の累進が、毎期の短信にどう表れるか。

決算短信の「配当の状況」欄で、普通配当と特別配当の内訳が確認できます。累進配当の対象は普通配当なので、特別配当の額の増減と、普通配当の増減は意味が違います。私はまず、今期の会社予想で186円とされている普通配当(2026年3月期の実績185円から1円の増配にあたる部分です)が、この先どう推移していくかを見ます。普通配当が動いたときが、方針の変化のサインだからです。

② 金利の影響が、資金原価と利益にどう出るか。

中期経営計画は、2029年3月期までに資金原価が136億円増える想定を織り込んだうえで、営業利益210億円という見通しを示しています。金利が動いたときに利益がどれだけ動くかという感応度の数字は開示にないので、この織り込みが手がかりになります。調達コストの動きは、決算説明会資料の「調達総額と資金原価」のページで確認できます(2026年3月期の資料では9ページ。資金原価と資金原価率〔資金原価÷営業資産平均残高〕の5期分の推移がグラフで載っています)。資産利回りのほうは、数字そのものの開示は見つけられませんでした。「資産利回りの向上により」という説明の言葉で、方向だけが語られます。金利が上がる時代にこの会社の利益がどうなるかは、ここに表れるはずです。

③ 減損のあったサービス事業のこれからと、新しいセグメント区分。

減損のあったサービス事業が、このあとどう推移するか。事業そのものの売上は増えています(103.0億円・前期93.7億円)。減損が出たのは、Welfareすずらんに関わるのれんなどでした。2028年3月期から開示のセグメント区分が新しい3区分に変わり、2027年3月期からは任意開示で事業別の売上総利益が示される予定です。開示の変わり目ごとに、減損後の事業の姿を確かめます。

もし「ここも見ると良いよ」という数字をご存じの方がいらっしゃいましたら、教えてもらえるとうれしいです。

🔍 もう少し深く ― リースという商売の土台は、どうなっているのか

ここは、リコーリースの商売の土台が、世の中でどうなっているのかを、会社の外の統計で確かめるための章です。確かめたいことは、ふたつ。リースという市場そのものは伸びているのか。そして、顧客である中堅・中小企業はどうなっているのか。深掘りの補足なので、お急ぎの方は「おわりに」へ進んでも大丈夫です。

おおもとの設備投資は、この17期でおよそ1.7倍に増えました

まず、リースの需要のおおもとにある、企業の設備投資から。内閣府のGDP統計で、企業の設備投資(民間企業設備・名目)は、2009年度の75.7兆円から2025年度の125.3兆円へ、およそ1.7倍になりました。リコーリースの17期は、リーマン・ショック後の谷から設備投資が増えていく時代と、ちょうど重なっています。

ただ、リース市場そのものは、設備投資ほどには伸びていません

リース市場の大きさは、リコーリースも決算短信で引用している業界統計、公益社団法人リース事業協会の「リース取扱高」(1年間に結ばれたリース契約の総額)で追えます。2009年度の4兆9,219億円に対して、2025年度は5兆2,984億円。17年で1割弱の増加です。途中には4兆2,186億円(2021年度)まで縮んだ時期もあります。設備投資が1.7倍になるあいだ、リースという方法で調達される分は、ほぼ横ばいで推移してきました。

市場の伸びを上回って、会社は伸びてきました

ここまでを並べると、ひとつめの問いの答えが出ます。設備投資は1.7倍、リース市場は1割弱の増加、そしてリコーリースの売上は1.5倍。市場が広がった分だけでは説明のつかない伸び方です。会社自身は、売上の伸びを「営業資産の増加や資産利回りの向上等」と説明しています(決算説明会資料)。貸している資産の残高が増えるほど受け取るリース料も増える商売なので、⚖️の章でみた営業資産残高1兆2,832億円への積み上げが、そのまま売上の伸びにつながってきた形です。(リース市場全体に占めるシェアそのものの数字は、会社の開示からは取り出せませんでした。)

顧客である中小企業は、数が減るなかでも、投資を続けています

ふたつめの問いへ。中小企業庁の集計(経済センサスベース)では、日本の企業は全部で337.5万者(2021年6月時点)。このうち99.7%にあたる336.5万者が中小企業です。一方で、その数は2016年からの5年間に、1年あたり4.3万者のペースで減っています。投資の動きは日銀短観で確かめられます。2026年6月調査では、中小企業(全産業)の設備投資は2025年度実績が前年度比+6.9%、2026年度は計画段階で△8.3%。ただし計画は年度の入り口の数字で、年度が進むにつれて改定されていきます。「中小企業を支える基盤へ」という会社のビジョンは、数が減りながらも投資を続ける、この人たちに向けられています。

☕ おわりに

「リコーリース(8566)は、これからも増配を続けられそうか」。この問いに、未来を予測して答えることはできません。

確かなのは、17期で利益1.9倍・配当4.9倍という積み重ねと、減益の年に5回とも増配してきた実績です。そこに、「累進配当+6年間の特別配当」という新しい設計が加わりました。こちらは積み重ねてきた実績と違い、始まったばかりの方針です。気がかりなのは、金利の上昇が利益を直接削る構造であること、本業の営業利益が今期の予想まで2期続けて減ること、そして上乗せの70円が期間限定の予定であることです。いずれも、いまある事実です。

私が見ていくものさしは、普通配当の累進です。これまでの増配は、配当性向を少しずつ引き上げることで作られてきました。新しい計画では、その役目を6年間の特別配当が受け持ちます。その土台である普通配当と、金利上昇の下での利益が、毎期の短信にどう表れていくのか。新しい計画の初年度である今期の決算は、その最初の答え合わせになると思っています。

その先どうなるかは、これからの数字が決めます。だから私は、予想はせず、四半期ごとの短信と年に一度の決算説明会資料を並べながら、引き続き淡々と見ていこうと思います。

みなさんは、どう考えますか。


出典・一次ソース

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このページは、個人が公開情報をもとに作成した観察の記録です。投資助言ではなく、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は記事中に明記した時点のものであり、正確性・最新性を保証するものではありません。会社の予想・目標は会社が公表した時点のものであり、達成を保証しません。過去の配当・業績の実績は、将来の配当や業績を保証しません。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。

著者:ミーナ 更新日:2026-08-02

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