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野村不動産ホールディングス(3231)は、これからも増配を続けられそうか

📖 約13,800文字(まずは「30秒で要点」だけでも。じっくり読むと約18〜27分)

「プラウド」のマンションで知られる野村不動産ホールディングス(3231)を、17期分の決算資料で見てみました。配当の歩みと、これから私が何を見ていこうと思っているのかを、順にお話しします。

更新日:2026-09-20


☕ まずは30秒だけ

この会社は、年間の配当をDOE4%以上にする方針を、2024年4月から掲げています。DOE(純資産配当率)は、自己資本に対する年間配当の割合です。配当性向(利益に対する配当の割合)とちがって分母が自己資本なので、単年の利益だけで配当が左右されにくくなります。資料を読んでいて、いちばん気になったのはここでした。2025年4月の長期経営方針にも引き継がれています。会社が決めた方針で、将来の配当を約束するものではありません。この記事で、順に確かめていきます。

(お忙しい方は、ここだけ読めば大筋がつかめます。気になったら下へどうぞ。)

ざっくり言うと

野村不動産ホールディングスは、「プラウド」のマンション分譲と、オフィスビルの開発・賃貸・売却を中心にした不動産グループの持株会社です。売買の仲介や、マンション・ビルの管理も手がけます。決算は3月、配当は年2回です。

利回りは?

2026年3月期の実績配当40円(決算短信より)を、株価910円(2026年9月18日の東京証券取引所の終値)で割ると、約4.3%です。会社が予想する2027年3月期の配当44円で計算すると、約4.8%です。(実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。株価で変わりますし、将来の配当・利回りを約束するものではありません。いずれも税引前の数字です。)

おさえどころ3つ

① 配当は、5円だった年から40円になりました。2013年3月期から14期続けて増配しています。

2013年3月期より前の3年、配当は5円のままでした。2012年3月期に利益が175.9億円へ戻り、翌2013年3月期から配当が毎年増えています。配当の額は、2025年4月の株式分割(1株→5株)をいまの株数にそろえた値で書いています。当時の実額は25円でした。

② 会社は2027年3月期に44円への増配を予想しています。続けば15期連続です。ただし、この4〜6月の利益は前の年より減りました。

4〜6月期の純利益は前年同期比36.5%減です。会社は減益の要因に住宅分譲の計上戸数の減少などを挙げ、通期の予想は変えていません。売却や引き渡しは年の後半に寄る商売です。

③ 土地や建物を、借入も使って仕入れる商売です。金利が上がると、支払利息が増えます。それが利益と配当にどこまで響くか。ここを見ていきます。

有利子負債は2026年3月末で約1兆6,000億円。会社は「金利コスト増を上回る利益成長」を掲げ、賃料の引き上げを進めていると説明しています。

次に見ようと思っているポイントは、記事の後ろの📌にまとめました。まずは、この会社がどんな仕事をしているのかから入ります。

(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料に基づきますが、正確性は保証しません。投資の判断はご自身で。)


🏢 野村不動産ホールディングスってどんな会社?

郵便受けに入っていた、新築マンションのチラシ。駅の広告で見かけた、モデルルーム見学のご案内。そうしたチラシの中に「プラウド」の名前があれば、それがこの会社のマンションです。土地を取得し、商品を企画し、建設会社と連携して建て、販売する。そのグループの持株会社が、野村不動産ホールディングスです。

「住まいや街をつくって、売って、貸して、管理する」を手がける会社です。1957年に野村證券から分かれて不動産事業を始めました。東京証券取引所のプライム市場に上場し、本社は東京・芝浦にあります。

事業は6つの部門に分かれます(この章の数字は2026年3月期の決算短信と決算説明資料によります)。いちばん大きいのが住宅部門で、マンション「プラウド」「オハナ」や戸建の分譲を中心に、賃貸住宅、シニア向け住宅、ホテルまで含みます。部門別の業績には「事業利益」を使います。本業の営業利益に、持分法投資損益(出資先の利益の取り込み分)などを足した金額です。住宅部門は617億円。次が都市開発部門で、オフィスビルや商業施設、物流施設を開発し、貸したり投資家に売ったりします。中規模オフィス「PMO」などのブランドを持ち、事業利益は540億円。この2つで、全社の事業利益1,474億円の8割近くになります。

残る4つは、海外部門、資産運用部門、仲介・CRE(企業が持つ不動産)部門、運営管理部門です。資産運用部門はREIT(不動産投資信託)などを運用します。仲介・CRE部門は「野村の仲介+」の店舗網で売買の仲介を、運営管理部門はマンションやビルの管理を担います。この3つの手数料型の部門は、合わせて431億円です。海外部門は📊と🔍で触れます。

配当の話につなげると、この会社の利益には3つの性質のものが混ざっています。分譲や物件売却の利益は、引き渡しや売却の時期で年ごとに振れます。ビルや商業施設を貸して得る賃料は、賃貸可能面積60.1万㎡(2026年3月末)から毎月入ってきます。2026年3月期の都市開発部門の賃貸売上は780億円でした。管理や運用の手数料は積み上がりやすく、仲介の手数料は成約の件数と時期で動きます。配当が増え続けられるかを見るとき、私はこの3つを分けて読むようにしています。次の章で、数字を並べますね。


📊 数字でみる ― 配当は5円から40円へ

まず、利益と配当の歩みを17期分並べます。配当は、2025年4月の株式分割(1株→5株)を反映して、いまの株数にそろえた値です。

表A:17期の利益・配当・配当性向・自己資本比率

決算期 純利益(億円) 1株配当(円・分割反映) 配当性向(連結) 自己資本比率
2010年3月期 46.6 5.00 97.3% 21.4%
2011年3月期 54.7 5.00 87.0% 20.7%
2012年3月期 175.9 5.00 27.1% 22.6%
2013年3月期 193.6 6.00 29.5% 24.5%
2014年3月期 268.4 7.00 24.9% 27.1%
2015年3月期 384.4 9.00 22.4% 28.8%
2016年3月期 471.8 11.50 23.3% 29.9%
2017年3月期 470.1 13.00 26.5% 30.2%
2018年3月期 460.3 14.00 29.1% 30.0%
2019年3月期 458.7 15.00 30.5% 29.9%
2020年3月期 488.9 16.00 30.1% 30.5%
2021年3月期 422.0 16.50 35.8% 30.4%
2022年3月期 553.1 19.50 31.7% 30.3%
2023年3月期 645.2 24.00 32.9% 31.0%
2024年3月期 681.6 28.00 35.7% 30.7%
2025年3月期 748.4 34.00 39.2% 27.9%
2026年3月期 828.8 40.00 41.4% 28.5%

表Aの配当の列を上から下へたどると、5円が3年続いたあと、2013年3月期から毎年増えています。利益がわずかに減った2017年3月期から2019年3月期も、配当は上がりました。この3年は、配当性向が26.5%から30.5%へ上がる形で増配が続きました。

2020年3月期以降も、配当性向は30%から41%へ、途中で上下しながら上がってきました。配当が増えた中身は、利益の増加と、配当性向の引き上げの2つです。どちらがいつ効いたかは、📖の章でたどりますね。

→ 配当性向のことばの説明は、用語集にあります

その配当を支えるキャッシュ・フロー(現金の出入り)も確かめたいので、表をもうひとつ用意しました。

表B:直近8期のキャッシュ・フローと配当の支え

決算期 営業CF(億円) 投資CF 期末の現金 配当金総額 DOE(純資産配当率)
2019年3月期 900 △467 1,183 140 2.7%
2020年3月期 566 △305 776 147 2.7%
2021年3月期 △635 △558 706 151 2.6%
2022年3月期 528 △463 678 177 2.9%
2023年3月期 △428 △629 278 215 3.3%
2024年3月期 709 △836 538 247 3.6%
2025年3月期 △1,338 △2,034 359 298 4.1%
2026年3月期 449 △591 368 349 4.5%

営業CFがマイナスの年が、この8期で3回あります。この会社では用地や建物の仕入れも営業CFに入るので、仕入れが多い年はマイナスになることがあります。仕入れた分が数年後に売上になる流れを、続く年の表で見ていきます。有利子負債は2026年3月期末で1兆5,993億円、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)は2倍です。比べる相手は会社の財務指針で、自己資本比率30%水準に対して2026年3月期は28.5%でした。金利がどう効くかは、⚖️の章で見ます。

DOEの列は、2019年3月期の2.7%から2026年3月期の4.5%へ上がってきました。会社がDOE4%を下限とする方針を掲げたのは2024年4月で、その時点の直近実績は3.6%です。翌2025年3月期に4.1%、2026年3月期に4.5%と、短信の純資産配当率で見れば4%を上回りました(指針のDOEとは算式が違うので、目安の比較です)。実績より高いところに置いた目安だった、と私は読んでいます。

→ DOEのことばの説明は、用語集にあります

部門別の利益も並べます(事業利益・億円)。

部門 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期(会社予想)
住宅 488 617 690
都市開発 416 540 520
海外 66 28 0
資産運用 99 106 115
仲介・CRE 166 190 190
運営管理 119 135 95
合計(調整後) 1,251 1,474 1,500

2027年3月期の会社予想は、事業利益1,500億円、純利益860億円で、会社はどちらも過去最高となる見通しとしています。会社の配当予想は44円、配当性向は43.7%です(2026年4月時点)。2026年7月には予想1株当たり利益が100.48円に変わり、43.8%になりました。配当予想の44円は変わらず、1株当たり利益の予想が動いたぶん、配当性向が動きました。次は、その利益と配当がどう積み上がってきたのかを、会社の言葉でたどってみましょう。


📖 増配の歩みを、会社の言葉でたどる

数字の裏側を、時間の順に見ていきます。(この章の記述は、各年の決算短信にある会社の説明に基づいています。)

2010年3月期。純利益は46.6億円まで減りました。

配当は8円から5円になりました。会社は、営業エクイティ投資(投資対象は不動産ローン担保証券)の評価損105億円を特別損失に計上し、当期純利益が大幅に減少したためと説明しています。減配については「財務基盤の健全性を確保するために」と述べています。この17期で減配はこの1回です。

2011年3月期から2012年3月期。配当は5円のまま2年据え置き、利益は175.9億円へ戻りました。

2011年3月期は東日本大震災の年でした。純利益は54.7億円と前の年より増えましたが、会社の当初予想には届きませんでした。会社はそれを「一過性の特別損失の計上によるもの」と説明し、予想どおりの配当を続けています。利益が先に戻り、そのあとで配当が動きました。

2013年3月期から、増配が始まります。配当は6円から9円へ、利益の伸びに合わせて上がりました。

住宅分譲が回復し、2013年3月期と2014年3月期の配当については、短信に「業績の伸長を踏まえ」という言葉が出てきます。方針は「中長期的には配当性向30%程度を目処」。実際の配当性向は22.4%から29.5%で、目安を下回っていました。利益が伸び、配当性向はまだ目安の手前でした。

2017年3月期から2019年3月期。利益は3年続けてわずかに減り、配当は13円から15円へ増えました。

住宅の計上戸数の減少や粗利益率の低下が理由でした。それでも配当は上がり、配当性向は26.5%から30.5%へ。会社が目安にしていた「30%程度」に届くまで、配当性向を上げて増配を続けました。

2019年4月、配当の方針が変わります。会社は「総還元性向40〜50%程度」を掲げました。

配当と自社株買いを合わせて、利益の4〜5割を株主に返す方針です。この方針は2022年4月の計画でも、2025年4月の長期経営方針でも置き直されています。配当性向30%を目安にしていた会社が、自社株買いを含めた4〜5割へ枠を広げました。配当だけを見ていても、還元の全体はつかめなくなります。

コロナの2020年3月期から2021年3月期。純利益は13.7%減り、配当は16円から16.5円へ増えました。

2020年5月、会社は翌期の業績予想を「合理的に見積ることが困難」として未定にしました。それでも配当予想は年間で示しています。減益の年でも会社は増配し、総還元性向は45%でした(決算説明資料の値)。掲げた40〜50%の幅の中です。

2022年3月期から2025年3月期。各部門の利益が積み上がり、配当は19.5円から34円へ増えました。

2022年・2023年・2025年の各1月に、「配当予想の修正」で期末配当を積み増しています。直近の2026年1月も同じでした。配当性向は31.7%から39.2%へ。利益が増え、配当性向も上がりました。

2024年4月、会社はDOE4%を下限とする方針を加えました。短信には「配当の安定性の向上を目的に」と書かれています。

DOEの分母は自己資本です。利益は年ごとに振れますが、自己資本は動きの遅い数字です。その4%を下限にすれば、単年の利益が減っても配当は左右されにくくなります。

2025年4月に株式を1株→5株に分割し、新しい経営計画を出しました。2026年3月期の配当は40円です。

配当性向は41.4%。この年は自社株買いがなく、総還元性向も同じ41.4%でした。DOEは、短信の純資産配当率で見ると4.5%で、下限の4%を上回る水準です。会社が予想する2027年3月期の配当は44円で、続けば15期連続の増配です。会社はこれからをどう描いているのでしょうか。


🧭 会社はこれからをどう描いているか

会社は2025年4月、2030年ごろまでを見すえた「長期経営方針」と、2026年3月期から2028年3月期の「3カ年計画」を公表しました。以下は会社の目標であり、達成を約束するものではありません。(出典:野村不動産グループ「経営計画策定のお知らせ」「新経営計画」説明資料・2025年4月)

会社が挙げている方向を、配当に効きそうな順に3つにまとめて見ていきます。

1つ目の方向は、基幹事業を「確固たるポジション」にすることです。分譲住宅のプラウドと、PMOなどのオフィスで、商品企画力とサービス力を高めるとしています。2028年3月期の目標は住宅630億円、都市開発520億円。どちらも2025年4月に掲げた数字で、📊にある2027年3月期の会社予想は、住宅が上回り、都市開発は同じ額です。会社は2026年4月の説明会で、最初の2年間の年平均成長率は9.5%となる見込みだとし、「28/3期の事業利益目標の達成は見通せる状態にある」と述べています。基幹事業が伸びれば、配当の原資になる純利益が増えます。

2つ目の方向は、成長事業への重点投資です。賃貸住宅、ホテル、シニア住宅、物流施設の4つを成長事業と位置づけ、投資家の資金も取り込みながら広げるとしています。毎月入る賃料が増えれば、売る時期で振れる利益とは別に、積み上がる収入が大きくなります。

3つ目の方向は、海外と戦略投資(M&A)です。海外部門の事業利益を、2025年3月期の66億円から2028年3月期に110億円へ引き上げ、M&Aも使って伸ばすとしています。今期の予想は、会社が物件の供給を調整するためゼロです。ここから110億円へどう進むかを、部門別の数字で見ます。

数値の目標も並んでいます。
2028年3月期に事業利益1,600億円。
2025年3月期の実績は1,251億円、初年度の2026年3月期は1,474億円でした(過去の実績であり、今後の水準を示すものではありません)。
指針はほかに、ROE(自己資本利益率)10%以上、自己資本比率30%水準、総還元性向40〜50%、年間配当はDOE4%下限、事業利益の年平均成長率8%水準(財務指針)。 3年間の投資は2兆500億円、回収(売却などで資金を戻すこと)は1兆7,000億円の計画です。

配当の目線で読むと、この計画には2つの前提が並んでいます。8%水準で利益を伸ばすことと、自己資本比率を30%水準に保つことです。投資を2兆円規模で続けながら、この2つをどう両立させるのでしょうか。会社の答えは、売却で回収したお金を次の投資に回すことです。私はその進み具合を、自己資本比率とあわせて見ていきます。3つの方向の進み具合は、決算短信の部門別の事業利益で毎年確かめられます。

(この3つの方向を支える需要は、記事の終わりの🔍で公的統計の推移と並べています。)


⚖️ 気をつけたいところと、支えになりそうなところ

先に、気をつけたい点から見ていきましょう。

気をつけたいところ

① 有利子負債は2026年3月期末で1兆5,993億円。金利が上がった分だけ支払利息が増えます。利益の伸びとどちらが速いかを見ます。

マンションの用地もオフィスビルも、仕入れるお金の多くは借入です。金利が上がれば、同じ物件を仕入れるために払う利息が増えます。支払利息は、会社の開示で2022年3月期の88億円から2026年3月期の189億円へ増えました。4〜6月期は49.5億円で、前年同期の42.2億円から17.3%増えました。

有価証券報告書の借入金等明細表によると、2026年3月期末の長期借入金1兆2,077億円の平均利率は1.1%、短期借入金は1%です。仮に市場金利が0.1ポイント上がり、それが借入全体の平均利率にそのまま反映されたとすると、年間およそ16億円の利息が増える計算になります(有利子負債の残高に0.1%を掛けた単純な試算です。実際には借入の8割が固定金利で、借り換えや新規調達の時期に応じて段階的に反映されます)。2026年3月期の配当総額349億円と比べると、5%弱の金額です。だから私は、決算短信の支払利息と、有価証券報告書の平均利率の2つを、毎年見比べることにしています。

会社はこの点について、2026年7月の決算説明会で「金利上昇の影響は一時的に大きく出るのではなく、今後段階的に徐々に現れてくる見通しである」と説明しています。そのうえで掲げているのが「金利コスト増を上回る利益成長」です。手立てには、インフレを反映した価格設定、商品性やサービスの向上による賃料の引き上げなどを挙げています。4〜6月期は改定対象のテナントの7〜8割で賃料の増額が実現し、増額率は5〜10%程度が中心だったとしています。

今期については、2026年4月の説明会で「27/3期は、事業利益が前期比26億円増加する一方、経常利益はほぼ26/3期同水準。概ねこの差分が金利コストの増加相当」と答えています。今期に限れば、利益の増える分と金利で増える分は、ほぼ同じ大きさです。

金利の影響は、利息だけではありません。住宅ローン金利が上がれば買い手の負担が増え、投資家の採算が変われば売却価格も動きます。「つくって売る」利益にも効きます。会社も、この流れを有価証券報告書のリスクに挙げています。

② 4〜6月期の利益は前年同期比36.5%減でした。会社は通期予想を据え置いています。

2027年3月期の第1四半期は、売上高1,910億円、純利益147億円で、住宅も都市開発も減収減益でした。会社は減益の要因に、住宅分譲の計上戸数の減少と前の期の用地売却の反動、都市開発の物件売却の減少、海外での計上済プロジェクトのイグジット(投資の回収)に伴う清算費用を挙げています。海外の清算費用について会社は、収益と費用の計上が期をまたいだもので「当初より想定していたコスト」「今期予め計画として織り込んでいた」ものだと説明しています。通期の予想(純利益860億円)は変えていません。

住宅分譲の契約進捗率は、通期の売上予想額に対して71.8%です(前の年の第1四半期末は79.4%)。期初の時点については、会社は2026年4月の説明会で「一つの目安として60%が指標とされており、27/3期期初時点の進捗率60%は充分と考えている」と答えています。あわせて、2027年3月期に予定する3,800戸の計上について「この計画達成に全く心配はない」としています。

物件の売却は、通期では都市開発・住宅の両部門とも前の期と概ね同水準を計画し、4〜6月期の時点で通期計画のうち25〜30%程度にめどが立っているとしています。年の後半に引き渡しと売却が寄る商売なので、中間決算で通期予想との差がどれだけ縮んだかを見ます。

③ 完成在庫が増えました。空室率は一時13.7%まで上がり、6月末には7.1%へ下がっています。

分譲の完成在庫は増えています。販売中が増えた点について会社は「郊外の大型物件による影響が大きい。郊外は都心と比較して長い期間で販売するため在庫に計上されるが、商品自体は顧客から十分な評価を得ており、引続き着実に販売を進めていく」と説明しています。長くかけて売る物件ほど、在庫として数えられます。戸数は2026年6月末で販売中418戸・未販売427戸(2026年3月期末は販売中225戸・未販売495戸)でした。

オフィス・商業施設の空室率も、会社が理由と見通しを示しています。2026年3月期末に13.7%へ上がったのは、大型ビル「BLUE FRONT SHIBAURA」が竣工から1年たって集計に入ったためです。このビルを除いた空室率も前の年の3.9%から6.4%へ上がりましたが、会社は最大の要因を、グループ自身が新宿野村ビルからこのビルへ移転したことだと説明しています。4〜6月期には全体で7.1%、除くと5.2%まで下がり、会社は「全館成約済み。2026年9月には満床稼働予定」としています。次の四半期で空室率がどこまで下がるかを確かめる予定です。

④ 自己資本比率は28.3%で、会社の指針の30%水準を下回っています。

2026年3月期は28.5%、2027年3月期の第1四半期は28.3%です。会社は「大型物件(BLUE FRONT SHIBAURA)竣工の影響によるものである」と説明しています。そのうえで「30%への回復を優先するあまり、投資機会を逃したり株主還元を抑制したりする考えはない」「借入金に依存するのではなく、資産売却による資金回収を投資に循環させていく」としています。DOE4%の分母はこの自己資本の額なので、自己資本が増えれば下限の額も上がります。比率そのものは、投資と還元の配分が表れる数字だと見ています。

⑤ 2026年3月期は、建替に向けた減損などで特別損失348億円を計上しました。

減損損失は約200億円、建替関連損失は約148億円です。会社は決算説明資料の1枚目に「浜松町ビルの建替に向けた減損等の特別損失が発生したが、売上高・各利益は過去最高となった。」と書いています。同じ年に特別利益194億円(主に固定資産の売却益)も計上しました。事業利益は前の年から222億円増えましたが、純利益の増加は80億円です。この差に効いた要因の一つが、特別損益です。建替は次のビルをつくるための費用でもあるので、特別損益の中身も毎年見ることにしています。

支えになりそうなところ

これまでの事実です。

① 配当は14期続けて増え、2027年3月期は15期連続の増配を会社が予想しています。

増配は2013年3月期から14期続き、2027年3月期の予想が15期目です。これを支える指針として、会社はDOE4%下限と総還元性向40〜50%を、2030年ごろまでの長期経営方針に掲げています。

② 手数料型の3部門が、事業利益の3割を稼いでいます。

資産運用、仲介・CRE、運営管理の3部門で、2026年3月期の事業利益は合わせて431億円でした。管理や運用の手数料は、売る時期で振れる利益とちがって積み上がりやすい収入です。ただし2027年3月期の会社予想では3部門の合計は400億円で、うち運営管理は135億円から95億円へ減る見込みです。会社は売上は増える見通しとしたうえで、利益の減る理由に「DX費、人件費の増加」を挙げています。積み上がりやすいことと、増え続けることは別なので、この3部門の合計額を毎期見ていきます。

③ 総還元性向は、掲げた40〜50%の幅の中で推移してきました。

2020年3月期から2025年3月期の実績は44.3〜47.6%でした。2026年3月期は自社株買いがなく、配当だけで41.4%です(各年の決算説明資料の開示値)。いずれも過去の実績であり、今後の水準を示すものではありません。

この両方を並べたまま、どちらか片方に寄せずに、これからを追っていきます。


📌 次に見ようと思っているポイント

増配が続くかどうかを追いかけるために、次の4つを追っていくつもりです。ご自身で確かめるときの手がかりとして使っていただけたら、うれしいです。

① 配当性向とDOE(決算短信の1ページ目「配当の状況」)。

4月の本決算で、短信の純資産配当率が4%を上回り、総還元性向が40〜50%の幅に入っているか。どちらかを下回ったら、還元の前提が動いた合図かもしれません。

② 支払利息と平均利率(決算短信の損益計算書、有価証券報告書の借入金等明細表)。

支払利息が5期で88億円から189億円へ増えたペースが、次の1年でどうなるか。事業利益の増え方と並べれば、どちらが速いかを確かめられます。

③ 契約進捗率と完成在庫(決算説明資料の住宅セグメントのページ)。

中間決算で、契約進捗率が前の年の中間決算時点(91.2%)にどこまで近づくか。完成在庫(2026年6月末で販売中418戸・未販売427戸)の合計が、販売の計画に沿って減っているか。

④ 空室率と自己資本比率(決算説明資料の都市開発セグメントのページ、決算短信の1ページ目)。

大型ビルを除いた空室率がさらに下がるか。自己資本比率が30%水準へ向かっているか。


🔍 もう少し深く ― 会社の方向を支える4つの土台を、公的統計の推移で確かめる

この章では、🧭の章に書いた会社の方向を、外の世界の需要と突き合わせてみましょう。使うのは公的統計の推移です。並べておけば、来年の決算を読むときの背景として使えます。深掘りの補足なので、お急ぎの方は「おわりに」へ進んでも大丈夫です。

土台① 分譲マンションは、戸数が増えないまま価格が2.2倍になった市場です。

まず会社の数字から。2026年3月期の分譲は3,473戸を計上し、売上高は3,111億円、粗利益率は26.6%でした。1戸あたりの平均価格は8,959万円です(出典:2026年3月期決算説明資料)。

国の統計を重ねます。国土交通省の建築着工統計で、全国の分譲マンションの着工戸数は2010年の90,597戸から2025年の89,888戸へ、ほぼ横ばいでした。ただし会社が軸足を置く1都3県では、同じ期間に51,372戸から40,305戸へ2割あまり減っています。

いっぽう同じ国土交通省の不動産価格指数では、マンションの価格は2010年の平均を100として2025年に全国217.8(着工統計とは対象が異なる指数です)。戸数は増えず、価格が2.2倍になりました。戸数が増えない市場では、計上戸数とあわせて、1戸あたりの価格と粗利益率が利益を大きく動かします。

会社の計上戸数は2023年3月期の4,142戸から2026年3月期の3,473戸へ、途中に増えた年をはさみながら減りました。そのあいだ売上高は2,736億円から3,111億円へ増えています。2027年3月期は前の年より多い3,800戸の計上を計画しており、戸数を絞ったわけではありません。だから、住宅部門の戸数より、粗利益率と契約進捗率のほうを見ていくつもりです。

土台② オフィスは、着工が減り、価格指数は直近の1年で下がりました。

会社の数字では、2026年3月期の収益不動産の売却額は2,475億円で、10年前の332億円から大きく増えました(出典:2026年3月期決算説明資料)。売った量が増えたのか、1棟あたりの値段が上がったのかは、棟数の開示がないので分けられませんでした。

国土交通省の建築着工統計で、民間の事務所の着工床面積は2010年の558万㎡から2025年の418万㎡へ減っています。同じ不動産価格指数では、オフィスの価格は2010年を100として2024年に176.4、2025年は170.6です。上がり続けたわけではなく、直近の1年は下がりました。(2026年分は、国土交通省が公表を延期しています。)

新しく建つオフィスの床面積は減り、既存のビルの価格は上がってきた。その期間と、会社の売却額が伸びた期間は重なっていますが、価格の上昇がどれだけ売却益に効いたかは測れませんでした。だから、指数が下がった年に売却額がどう動くかを見ていきます。オフィスの空室率や賃料の全国的な水準は、公的な統計からは取り出せませんでした。会社が開示する空室率は自社の保有物件の数字で、市場全体の代わりにはなりません。

土台③ 金利は、10年国債で1.1%から2.5%へ。借入で仕入れる商売の調達コストが上がっています。

財務省の国債金利情報で、10年国債の利回りの年平均を見ます。2010年は1.18%、2016年はマイナス0.05%。そこから上がり、2025年は1.54%、2026年は8月までで2.51%です。

日本銀行の貸出約定平均金利でも、国内銀行の新規の長期貸出は2021年の0.74%から、2026年は1〜7月の平均で1.82%へ上がりました。会社の長期借入金の平均利率1.1%は、対象も期間も違う数字なので単純には比べられませんが、この上昇がまだ全部は反映されていない水準だと私は読んでいます。会社が「今後段階的に徐々に現れてくる」と説明しているのは、このことです。金利が上がり続けるなら、賃料の引き上げなど⚖️①で見た会社の取り組みが数字にどう表れるかが、配当に効いてきます。私が毎年見るのは、この10年国債と貸出金利です。

土台④ 東京圏への人の流れは、コロナで減ったあと戻りましたが、直近の1年は前の年を下回りました。

総務省の住民基本台帳人口移動報告で、東京圏(1都3県)の転入超過を見ます。2019年の14.6万人から2021年に8.0万人へ減り、2024年は11.9万人、2025年は11.3万人でした。コロナ前の水準には戻っていません。この統計の対象は日本人移動者です。

都心を中心に住まいを供給する商売の、土台にあたる数字です。人が集まり続けるかぎり、分譲も賃貸も需要の土台は残ります。ただ、需要は所得や金利、価格でも動きます。だから、毎年1月に出るこの転入超過数と、会社の分譲の計上戸数を並べて見ていきます。

海外事業のベトナムやタイの不動産市況は、現地の公的統計を確認できませんでした。会社の海外事業は全社に占める割合がまだ小さいので、ここは会社の開示を待ちます。

(この章の公的統計のうち、価格指数と国債金利の年平均、着工床面積の年計、1都3県の合計と分譲マンションの構造別の合算は、月次・四半期・都県別の原典を年ごとにならして作った値です。)


☕ おわりに

「野村不動産ホールディングス(3231)は、これからも増配を続けられそうか」。この問いに、未来を予測して答えることはできません。

いまあるのは、14期続いた増配と、DOE4%を配当の下限に掲げた方針。同じくいまあるのは、借入も使って仕入れる商売と、会社が通期予想を据え置いたまま減益で始まった今期、そして金利が上がりはじめた外の環境です。どちらも、いまある事実です。

住まいと街をつくってきた会社に敬意をもちながら、配当性向とDOE、支払利息と平均利率、契約進捗率と空室率を、半期ごとに見ていきます。会社の取り組みが数字にどう表れていくかを、そこで確かめるつもりです。

みなさんは、どう考えますか。


出典・一次ソース

免責

この記事は、公開情報をもとに筆者が整理した観察ノートであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。将来の業績・配当・株価を約束するものではありません。参考利回りは記載の基準日の終値に基づく参考値で、株価が動けば変わります。実績と会社予想は別物です。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。記載の数値は各社の開示資料に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。

著者:ミーナ/更新日:2026-09-20

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