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ラクト・ジャパン(3139)は、これからも増配を続けられそうか

📖 気になったこと5つに沿って、配当・利益・資金を確認します。詳しい表や経緯は後半にまとめています。(約14,500文字・じっくり読むと約19〜28分)

チーズやバター、粉ミルクの原料を世界から仕入れて、国内のメーカーに届ける会社、ラクト・ジャパン(3139)。上場してからの10年、配当は一度も減配せず、15円から132円になりました。その会社が今期、純利益は2割減る見込みなのに配当は据え置き、と発表し、同じ日に「累進配当」を方針に加えました。

配当を考えるうえで気になったことを、5つにしぼりました。会社の資料をもとに、今分かることと、これから確認したいことを順に見ていきます。詳しい表や配当方針の経緯は、後半にまとめました。

参考の配当利回りは約3.8%です。株価は2026年10月30日の東京証券取引所の終値3,465円です。配当は2025年11月期の実績も2026年11月期の会社予想も132円で、この2つから計算しました(税引前・小数第2位以下切り捨て)。利回りは株価で変わり、将来の配当・利回りを約束するものではありません。

(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料から拾いましたが、拾い間違いがあるかもしれません。投資の判断はご自身で。)

更新日:2026-11-01


はじめに、この会社の仕事を簡単に

ピザのチーズ、パンに塗るバター。日本で食べられているチーズの原料の大半は、海外から来ています。ラクト・ジャパンは、食品メーカーが必要とする原料を海外から調達する会社です(有価証券報告書)。

産地の工場で品質を確かめ、用途に合う原料を提案することも仕事の一部です。「わが国における数少ない乳製品専門商社」と自ら書いています。輸入される乳製品原料のうち約36%を扱っています(2024年度・会社の推計)。乳原料は品質が変わりやすく、代わりの原料をすぐ提案する「調整力」と「交渉力」を、会社は信頼の源泉に挙げています(統合報告書2026)。

乳原料の輸入に加え、豚肉やプロテイン原料の輸入、東南アジア3か国でのチーズ製造も手がけています。

2025年11月期の売上は1,828億円、営業利益は59億円。売上の3.3%が本業の利益です(会社の開示値)。商品を仕入れてから代金を回収するまでには時間があるので、事業を支える運転資金も必要になります。相場や為替の変化は、売上の金額や仕入れに必要な資金にも影響します。この「仕入れから回収までに資金が要る」という性格を、私はこの会社を見るときの出発点に置いています。あとで出てくる4つめと5つめの背景です。

では、ひとつずつ見ていきましょう。


気になったこと 1 
減益予想の今期、132円の配当を支える材料は何か

わかったこと
年間132円の予想配当に対し、会社予想の配当性向は38.2%です。利益の範囲内で配当する計画で、第3四半期までの経常利益は期初予想を上回って推移しています。

2026年11月期の会社予想は、売上高1,930億円(5.6%増)、経常利益48億円(17.2%減)、純利益34.5億円(20.1%減)。配当は中間66円を実施済みで、期末66円の予想と合わせて年間132円です。配当性向(利益のうち配当に回す割合)は会社予想で38.2%、新しく掲げた目標の35%を上回る水準です。配当を保ち純利益が減るので、割合が上がる形です。配当の総額は約13億円で、予想純利益34.5億円の範囲に収まります(自己株式を除く株数で計算)。

では、今期はなぜ利益が減るのでしょうか。決算短信が挙げるのは、本社移転の費用、シンガポール新工場と基幹システムの減価償却費です。減価償却費は、工場や機械の代金を使う期間に分けて費用にするもので、年4.5億円増える計画。本社移転の一時費用は1億円です。もう1つ、前期の経常利益には、一部の商品の品質不良にかかわって受け取った補償金6.5億円が入っていました。会社はこれを一過性と明記し、除いても過去最高益だったと説明しています。

決算説明会の資料では、この一過性の収入と先行投資の費用を除くと、2億円(4.0%)の増益の計画になっています。ただし減価償却費は来期以降も続く費用で、会社も中期経営計画の期間はアジアのチーズ製造の利益率が下がると話しています。

第3四半期までの経常利益は「期初予想を上回って推移しています」(決算短信)。増収で売上総利益が増えたことと、新工場と基幹システムの稼働が遅れて費用の計上が後ろにずれたことが理由です。7月の説明会では「今期の下期は想定よりも厳しい事業環境となる見通しだが、業績は期初想定どおりの着地を見込んでいる」と答えています。通期の業績予想と配当予想は、期初から変えていません。

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本決算の決算短信にある「連結経営成績」で、2026年11月期の純利益が従来予想の34.5億円に対していくらだったか。

今期の利益予想と配当額の関係は分かりました。次に、会社が加えた累進配当の方針と、その条件を確認します。配当を実際に払う資金は、利益とは別に、5つめの在庫と借入のところで見ていきます。


気になったこと 2 
累進配当は、どんな条件で続ける方針なのか

わかったこと
減配を避ける方針ですが、会社は、利益による株主資本の増加が株主還元による減少を上回ることを条件にしています。

2025年11月期の決算短信は、こう書いています。「配当性向の目標を35%に引き上げるとともに、『累進配当』を配当方針に追加することといたしました」。累進配当は、一般に、配当を前の年から減らさない方針を指す言葉です。統合報告書は、導入を「財務体質の強化が進み、安定的に利益を創出できるようになったことの証左」と位置づけています。

決算説明会の資料には条件があります。「当期純利益による株主資本の増加が、株主還元による株主資本の減少を上回る限り、累進配当を行う」。言い換えると、その年の純利益が、配当と自社株買いの合計を上回っている限り、です。今の132円なら配当の総額は約13億円で、今期の予想純利益34.5億円を下回ります。自己株式を取得する場合は、その金額も合わせて見る必要があります(株数を前提に置いた試算)。

この条件の文は決算説明会の資料にあり、決算短信と有価証券報告書は「方針に追加」とだけ書いています。方針であって、将来の配当額を保証するものではありません。目標の配当性向の表記は資料によって少し違います(後半のE)。

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決算短信1ページ目の「配当の状況」で、2027年11月期の配当予想が132円以上で出るか。

方針の中身は分かりました。では、この方針を支えてきた力は何だったのか。10年の実績を、1枚の表で見ていきましょう。


気になったこと 3 
これまでの増配を支えてきたものは何か

わかったこと
1株当たり利益(EPS)の成長と、配当性向の引き上げです。利益が減った年にも増配してきました。

11期の純利益・EPS・配当・配当性向・自己資本比率

決算期 純利益(億円) EPS(円) 1株配当(円) 配当性向(連結) 自己資本比率
2015年11月期 8.3 98.93 15 15.2% 26.4%
2016年11月期 9.4 96.78 16 16.5% 30.4%
2017年11月期 17.5 179.48 19(うち記念2.5) 10.6% 27.8%
2018年11月期 17.8 182.31 20 11.0% 29.2%
2019年11月期 19.6 200.11 22 11.0% 33.0%
2020年11月期 20.6 209.47 30 14.3% 40.4%
2021年11月期 19.5 198.73 32 16.1% 36.9%
2022年11月期 22.8 231.64 40 17.3% 30.5%
2023年11月期 20.4 206.46 48 23.2% 34.2%
2024年11月期 31.4 315.83 80 25.3% 33.8%
2025年11月期 43.1 433.18 132 30.5% 35.9%

→ 配当性向のことばの説明は、用語集にあります

EPSは98.93円から433.18円へ増え、配当性向も15.2%から30.5%へ上がりました。その両方が重なって、配当は15円から132円になっています。純利益が減った2021年11月期と2023年11月期にも、配当は増えました。直近の2期は、EPSが2倍を超え、配当は48円から132円へ増えています。どれも過去の実績で、将来の配当を約束するものではありません。

会社は配当性向の目標を数字で掲げ、届くたびに引き上げてきました。20%は目標の年の2023年11月期に23.2%で届きました。20〜25%は計画より1年早い2024年11月期に25.3%、30%以上は2025年11月期に30.5%です。後の2回は、会社自身が「前倒し」という言葉を使っています。方針の言葉の変わり方は、後半のBにまとめました。

これまでの増配には、利益の成長が関わっていました。次に、これからの利益を増やす取り組みを見ます。


気になったこと 4 
新工場や成長分野は、これからの利益を支えられそうか

わかったこと
新工場とライフサイエンス事業が成長の柱ですが、新工場は利益に貢献するまで時間がかかる計画です。既存事業の数量や採算と合わせて、全体の利益がどう伸びるかを見ていきます。

シンガポールの新工場は、2026年9月に引き渡され、本格生産は来期からです。会社は、部門全体では黒字を保ちつつ、新工場単体は当初2年は赤字の見込みで、3年後の黒字化を目指すとしています(新中期経営計画の説明会の質疑)。

新工場の製造能力は、約2.5倍になります。どのくらいの数量を作る計画なのでしょうか。アジアのチーズ製造販売の数量は、2025年11月期の実績が5,640トン、2026年11月期の会社計画が6,800トンです。これを2028年11月期に年間1万トンにする計画です。投資額は有価証券報告書の設備計画で総額42.2億円(説明会資料には別の数字があり、後半のEに書きました)。説明会で会社は、新工場が動いたあとも「アジア・チーズ製造販売部門全体では黒字を維持できる見込み」だと答えました。会社は製造事業の利益率が他の部門より高いと説明していて、東南アジアの工場は食品安全の国際規格FSSC22000とハラル認証を取得しています。

利益の伸びしろは、新工場だけではありません。プロテイン原料などを扱うライフサイエンス事業の売上は、2023年11月期の39億円から2025年11月期の95億円へ増えました。今期は第3四半期までで102.8億円です(売上の伸びには原料価格の上昇も含まれます)。会社は、利益率の高いチーズ製造とライフサイエンス事業、付加価値の高い商品の販売が、全体の収益性を高めていると説明しています。数量の増減に加えて、何を売って利益を得ているのかを見たいところです。

一方、既存事業には逆風もあります。主力の乳原料・チーズ部門の販売数量は、2019年11月期の20.4万トンを最高に、2025年11月期は16.5万トンです。同じ期間に、日本の輸入チーズの数量も16.8%減りました(後半のD)。会社は国内の数量減の背景に、国産脱脂粉乳の在庫の増加や最終需要の弱さを挙げています(第3四半期の短信)。同じ短信は、提案と調達で数量を増やした商品もあり、チーズの販売は「一定の市場シェアを確保」して底堅いとも書いています。中間決算の説明会では、最終製品の値上げも数量に影響したと説明しました。アジアでは乳原料販売部門で価格競争が激しくなっています。新工場や成長分野の拡大と合わせて、既存事業の数量と採算がどう動くかも確認します。

中期経営計画「NEXT-LJ 2028」の2028年11月期の目標は、経常利益60億円、純利益43.5億円、配当性向35%、自己資本比率35〜40%です。純利益の目標は、2025年11月期の実績43.1億円とほぼ同じ水準です。仮に目標どおりの純利益と配当性向35%になったとします。自己株式を除く約1,000万株で計算すると、1株あたり約152円です(前提を置いた試算で、会社の配当予想ではありません)。過去の中期経営計画では、利益の目標に届かなかった年もあります(後半のB)。今回も、計画と実績を分けて確認します。

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アジアのチーズ製造販売部門の販売数量(今期の会社計画は6,800トン)と、新工場の稼働と費用についての会社の説明。連結の減価償却費も見ますが、基幹システムなど新工場以外の分も含まれます。

新工場は将来の成長に向けた投資ですが、立ち上がるまでにも資金は必要です。配当と投資を支える資金の動きを、次に確認します。


気になったこと 5 
在庫と借入が増える中で、配当と投資の資金を保てるのか

わかったこと
会社は、借入も活用しながら運転資金と設備投資の資金を調達しています。ただし、借入と支払利息は増えていて、自己資本の厚みだけで現金の余裕は判断できません。

まず、仕組みから見ていきましょう。有価証券報告書の説明はこうです。「仕入⇒在庫⇒販売⇒資金回収という事業フローのため、業容の拡大イコール運転資金の増加となり、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる場合があります」。決算説明資料の注記には「棚卸資産は原則、販売に紐づいており、当社は自社で在庫を抱えるリスクは負っておりません」とあります。売り先が決まっていることと、資金の負担がないことは別です。仕入れから代金の回収までの資金は必要で、在庫が増えれば借入れと利息の負担にも影響します。

営業CF(本業で実際に出入りする現金)は、11期のうち4つの年でマイナスでした。2022年11月期の△104.0億円は、国際相場の上昇と円安で売上が33%増え、在庫の金額も1年で155億円増えた年です。11期の合計は△15.5億円、配当金の支払額の合計は37.9億円です(後半のCの表のもとの値から算出)。

借入金(短期借入金・コマーシャル・ペーパー・長期借入金の合計)は、2025年11月末の365億円から2026年8月末に475億円へ増えました。会社は理由を運転資金と新工場の設備投資とし、在庫は例年3月から5月ごろに積み上がり、期末に向けて減る傾向だとしています。支払利息は、第3四半期までの累計で前年同期の3.6億円から5.4億円へ増えました。2025年11月期には、会社は支払利息の増加の一部を金利の上昇によるものと説明していました。

会社は、運転資金の増減を除いた「基礎的営業キャッシュ・フロー」を3年累計で120〜130億円と見込んでいます。そのうち60%程度を人材と事業に、40%程度を株主還元に配分する計画です(決算説明会資料)。運転資金の増減を除いた独自の数字なので、実際の現金の増減を表す営業CFとは分けて見ます。

主な借入れであるコミットメントライン付のシンジケートローンには、財務制限条項が付いています。純資産を前の年の75%以上に保つこと、経常損失を出さないこと、有利子負債を純資産の5倍以内に保つこと。有価証券報告書は、抵触した場合は期限の利益を失う、つまり返済を求められる可能性があると書いています。2025年11月末の有利子負債は純資産の約1.1倍で、上限の5倍までは開きがあります(開示値から算出)。会社は統合報告書で、この条項を財務規律の「安全装置」と呼び、守りが固いからこそ攻めに踏み込める、という考えを書いています。条項は守りの線で、配当に使える現金の量は、営業CFと借入金の動きで見ていきます。

自己資本は厚くなってきました。2015年11月期から2025年11月期にかけて、純資産は103億円から324億円へ、自己資本比率は26.4%から35.9%へ上がりました。ROE(株主の資本に対する純利益の割合)は8.5%から14.4%です。2026年8月末の自己資本比率は33.6%です。

次の決算で見る場所
貸借対照表の「商品及び製品」と借入金の期末残高を、8月末や前年末と比べます。期末に在庫が減り、資金が回収されたかを見るためです。営業CFと配当金の支払額も合わせて、資金の動きを確認します。


私の見方と、次の決算で確かめること

ラクト・ジャパンは、今期の減益を見込みながら、年間132円の配当を保つ予想です。累進配当の方針も加わりましたが、その先の増配を考えるには、利益の成長と資金の動きを合わせて見たいと、私は思います。

新工場や成長分野が、どのように利益につながるか。そして、在庫や借入金が増える中で、配当と投資を支える資金を保てるか。今回、私が確認を続けたいと感じたのは、この2つです。

次の本決算(例年の日程では2027年1月中旬ごろ)では、翌期の配当予想、期末の在庫と借入金、新工場の立ち上がりを確かめます。株価の高い安いは、この記事では扱っていません。読み違いや見落としに気づいた方がいらっしゃいましたら、教えていただけると助かります。これまでの増配の実績を出発点に、次の利益と配当を追っていきます🌵

みなさんは、どう考えますか。


もっと知りたい方へ

ここから先は、本文の根拠と経緯です。気になる項目からどうぞ。

A 会社のことを、もう少し

有価証券報告書は、乳原料・チーズ部門の仕事として3つを挙げています。担当者が産地の工場に出向いて製造工程を確かめること。仕入先と販売先の両方のニーズに合う原料を開発し提案すること。相場や為替の情報を日々提供することです。扱う品目は500種類以上。グループ全体の調達先は33か国です。輸入される乳製品原料のうち、この会社が扱う割合は約36%と会社は推計しています(2024年度・統合報告書2026)。従業員は連結で424名、そのうち270名がアジア事業・その他で働いています。

部門(2025年11月期) 売上高(億円) 割合 主な商品・仕事
乳原料・チーズ 1,186 64% 脱脂粉乳・バター・チーズなどの輸入販売
食肉食材 227 12% チルド・冷凍の豚肉の輸入販売
ライフサイエンス事業 95 5% プロテイン原料など乳由来の高たんぱく原料
アジア 乳原料販売 228 12% 現地の日系企業・現地企業への販売
アジア チーズ製造販売 63 3% シンガポール・タイでの製造販売
その他 25 1% 国内子会社のその他事業・米国の子会社など
合計 1,828 100%

会社は仕入れと販売の契約を同時に結び、仕入れの際に為替予約をして為替の影響を抑えているとしています。そのため、営業利益と、経常利益(本業の利益に利息や為替の損益を足し引きした利益)が逆向きに動く年があります。この会社の採算を見るときは、両方を合わせて見る必要があります。

1998年5月に東京都台東区で設立、2015年8月に東京証券取引所の第二部に上場、2017年9月に第一部へ指定、2022年4月からプライム市場です。チーズの製造はシンガポールで2004年度に始め、タイの工場は2016年11月期に稼働しました。株式分割は2015年2月(1株を1,000株)と2019年5月1日(1株を2株)の2回。2015年11月期から2018年11月期の当時の開示値は、EPSが順に197.87円・193.57円・358.96円・364.62円です。配当は30円・32円・38円・40円でした。発行済株式数は、新株予約権の行使などで2019年の分割後の979万株から2026年8月末の1,005万株へ2.6%増えています。

B 配当方針の10年を、会社の言葉で

2015年から2017年:「安定的かつ着実な配当」 上場した年の決算短信は「株主の皆様への利益還元を経営の重要課題と位置づけ、安定的かつ着実な配当を継続することを基本方針としております」。配当は分割前の金額で30円、32円、33円と増え、2017年11月期は第一部指定の記念配当5円を上乗せして38円。この年は販売数量が16.7%増え、純利益は9.4億円から17.5億円へ。この年は営業利益が4割減る一方、為替予約にかかわる為替差益が利益を押し上げました(前の年の差損15.3億円が差益11.5億円に)。為替予約は、仕入れに伴う為替の変動に備える取引です。この年の採算は、営業利益と経常利益を合わせて見ます。

2019年1月:「安定配当・増額配当」 2018年11月期の決算短信は、投資と財務の強化に触れたうえで一文を加えました。「当面は『安定配当・増額配当』を基本としながら、配当性向を高めてまいりたいと存じます」。同年5月に株式分割。

2021年1月:初めての数値目標「配当性向20%」 2020年11月期の決算短信は、感染症の影響で中期経営計画の目標を1年後ろ倒しにしました。そのうえで、2023年11月期に「配当性向20%の実現を目指します」としました。配当は22円から30円へ。翌期は純利益が5.0%減る中で32円へ増配。

2023年1月:目標を20〜25%に。中間配当を開始 2022年11月期は国際相場の上昇と円安で売上が33%増え、純利益22.8億円は当時の最高。会社は長期ビジョン「LACTO VISION 2032」と中期経営計画「NEXT-LJ 2025」を発表しました。配当性向は「3年後には20~25%をターゲットとし、さらなる向上を目指す」としました。中間配当と期末配当の年2回に変え、配当は40円から48円へ。2023年11月期は純利益が10.4%減り、会社は「業績目標に対して売上高、経常利益ともに未達となりました」と振り返りました。それでも配当48円を実施し、翌期は62円を予想しました。

2025年1月・7月:「30%以上」を前倒しで、100円から132円へ 2024年11月期の純利益は31.4億円で、前の年の1.5倍でした。会社は「中期経営計画の最終年度の利益目標を一年前倒しで達成することができました」と書いています。配当は期中に期末予想を31円から45円へ引き上げ、決算では期末49円で年間80円。翌期は「中長期の目標としておりました『配当性向30%以上の実現』を前倒しで達成すべく」100円を予想しました。7月の上方修正で期末を50円から82円へ引き上げ、年間132円の予想になりました。理由は増収の効果、国内の乳原料・チーズ部門とアジアのチーズ製造の利益率の改善、受け取った補償金6.5億円の3つ。期末82円は2026年2月25日の株主総会で決まりました。

2026年1月:35%と累進配当 2025年11月期の決算短信は、こう振り返ります。「当社は、2015年の上場以来、安定配当かつ増配を継続しつつ、2025年11月期には中期的な目標であった配当性向30%程度を達成するに至りました」。そのうえで「株主還元の強化に対する当社の姿勢をより明確化する観点から」、目標を35%へ引き上げ、累進配当を加えました。2026年11月期の予想は、各年の期初予想として初めての据え置き(132円)です。

利益の目標について。毎年見直す方式だった中期経営計画は、2〜3年先の経常利益の目標を掲げていました。その目標には、2020年11月期から2023年11月期まで4年続けて届きませんでした(各年の期初の計画を上回った年はあります)。2024年11月期以降は前倒しで達成しています。

C 営業CF・現金・借入金の11期

決算期 営業CF(億円) 投資CF 配当金の支払額 現金及び預金 借入金
2015年11月期 25.3 △2.4 1.1 51.3 174.4
2016年11月期 35.6 0.0 1.4 67.2 148.9
2017年11月期 △50.4 △1.3 1.5 40.0 176.1
2018年11月期 3.5 △8.6 1.8 49.2 195.1
2019年11月期 33.6 8.4 1.9 44.7 167.9
2020年11月期 45.3 △1.3 2.1 50.0 137.8
2021年11月期 △40.3 △2.9 2.9 55.1 192.8
2022年11月期 △104.0 △2.8 3.1 63.7 308.6
2023年11月期 32.2 △13.6 6.3 77.7 309.0
2024年11月期 6.3 △5.9 5.4 90.7 329.1
2025年11月期 △2.6 △15.0 9.8 101.5 365.9

→ 営業CFのことばの説明は、用語集にあります

営業CFが配当の支払額を下回った年は、11期のうち4つ(2017年・2021年・2022年・2025年の各11月期)。直近4期の営業CFの合計は△68.1億円で、同じ期間に支払った配当は24.7億円でした。合計がマイナスになったのは2022年11月期の△104.0億円が大きかったためで、2023年と2024年の11月期はプラスです。借入金から現金を引いた額は、2015年11月期の123億円から2025年11月期の264億円になりました(開示値から算出。社債・リース債務を除く集計で、一般にいう純有利子負債とは範囲が違います)。

有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)は、2025年11月末で41.1%です(有価証券報告書)。会社は統合報告書で財務制限条項を「安全装置」と呼び、「『守り』が盤石であってこそ、成長への『攻め』のためのアクセルを力強く踏むことができるのです」と書いています。

D 外の環境を、公的統計で

会社が挙げる外の懸念は、食品の値上げによる消費の鈍化、国産脱脂粉乳の在庫、アジアの価格競争です。統計は暦年または年度、会社の数字は12月から翌年11月までで、期間はずれています。

(この節の公的統計は、農林水産省、財務省の公表値です。万トン・億円の値は公表値を切り捨てて示しています。)

E 配当予想の修正と、数字の注記


出典・一次ソース

調査範囲は次のとおりです。決算短信11期(2015年11月期から2025年11月期)と、2026年11月期の四半期決算短信。決算説明会の資料・台本・質疑応答(2023年11月期本決算から2026年11月期中間期まで)。有価証券報告書(第28期)と半期報告書(第29期中)、統合報告書2026。中期経営計画と長期ビジョンの開示(2018年から2026年)。配当予想・業績予想の修正と株式分割・記念配当・株主優待に関する適時開示、2025年11月から2026年7月までの適時開示。DOE(純資産に対する配当の割合)の目標と配当の下限額は、この範囲では確認できませんでした。

免責

この記事は、公開情報をもとに筆者が整理した観察ノートであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。将来の業績・配当・株価を約束するものではありません。参考利回りは記載の基準日の終値に基づく参考値で、株価が動けば変わります。実績と会社予想は別物です。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。記載の数値は会社の開示資料と公的統計に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。

著者:ミーナ/更新日:2026-11-01

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