エスフーズ(2292)は、これからも増配を続けられそうか
「こてっちゃん」で知られるエスフーズ(2292)を、17期分の決算資料で見てみました。配当がどう増えてきたのか、そしてこれから私がどこを見ていくつもりなのかを、順に書いていきます。
更新日:2026-09-26
☕ まずは30秒だけ
この会社は、利益が大きく減った年でも増配しました。2025年2月期の純利益は、前の年の90.7億円から26.6億円へ減りましたが、配当は84円から89円へ増えています。この89円は、期のはじめに会社が出した配当予想と同じ額でした。会社は配当について、DOE(株主資本配当率。株主資本に対する年間配当の割合)を目途にすると、2010年2月期から書いています。株主資本(株主から集めたお金と、これまでの利益の積み上げ)は利益ほど年ごとに動かないので、利益が減った年でも配当は下がりにくい。私はそこが効いたと見ています。ただし目途は会社が掲げる目安で、今回確認した資料では算式までは分かりませんでした。将来の配当を約束するものでもありません。この記事で、順に確かめていきます。
(お忙しい方は、ここだけ読めば大筋がつかめます。気になったら下へどうぞ。)
ざっくり言うと
エスフーズは、牛や豚の生産から、食肉の加工と卸売、精肉店や焼肉店での販売まで手がける食肉の会社です。1982年に発売した牛内臓肉製品「こてっちゃん」が代表的な商品です。決算は2月、配当は年2回です。
利回りは?
2026年2月期の実績配当104円(決算短信より)を、株価2,757円(2026年9月25日の東京証券取引所の終値)で割ると、約3.7%です。会社が予想する2027年2月期の配当110円で計算すると、約3.9%です。(実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。株価で変わりますし、将来の配当・利回りを約束するものではありません。いずれも税引前の数字です。)
おさえどころ3つ
① 配当は、22円だった年から104円になりました。2014年2月期から13期続けて増配し、この17期に減配はありません。
2010年2月期から2013年2月期の配当は22円と24円でした。2014年2月期から毎年増え、2026年2月期は104円です。並べた17期のうち、利益が前の年より減った年は7回ありました。そのうち6回は増配し、1回は前の年と同じ額でした。
② 2026年2月期の純利益は92.3億円に戻りました。ただし、固定資産や株式の売却益を中心とする特別利益44.1億円(税引前)が入っています。会社は2027年2月期に、純利益65億円への減益と110円への増配を予想しています。
特別利益は、固定資産の売却益など、本業とは別に臨時で計上される利益です。2027年2月期の会社予想は純利益65億円(前の年より29.6%減)、配当110円で、減益の予想でも増配を予想しているのが今期です。この予想の中身は、⚖️の章で見ます。
③ 米国に約340億円をかけて新しい牛肉工場を建て、会社は2026年7月からの稼働開始を予定と書いていました。稼働したかどうかは、2026年7月14日の第1四半期決算短信までの資料では分かりませんでした。
米国では、加工する前の生きた牛(会社の言葉では「生体牛」)の値段が上がっています。会社は2025年2月期と2026年2月期の短信で、その影響で米国の収益が「厳しい状況」だったと書いています。牛の値段がどう動いてきたかは、記事の終わりの🔍で米国政府(米農務省)の統計と並べています。次の中間決算で、会社が新工場について何を書くかを見ます。
次に見ようと思っているポイントは、記事の後ろの📌にまとめました。はじめに、「こてっちゃん」を作っている会社が、ほかに何をしているのかを見ていきます。
(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料に基づきますが、正確性は保証しません。投資の判断はご自身で。)
🏢 エスフーズってどんな会社?
スーパーの精肉売り場の近くに並ぶ、「こてっちゃん」のパック。牛の内臓肉を味付けした、焼くだけのおかずです。この商品を長く作ってきた会社がエスフーズです。
1967年に兵庫県尼崎市で、内臓肉の販売から始まった会社です。「こてっちゃん」の発売は1982年でした。当時の社名はスタミナ食品で、2000年にエスフーズへ変わりました。東京証券取引所のプライム市場に上場し、本社は兵庫県西宮市の鳴尾浜にあります。鳴尾浜には工場もあります。従業員は連結で2,818名、ほかに臨時の従業員が年平均で2,635名います(2026年2月末)。会社は従業員の働きやすい環境の整備にも取り組み、2026年3月に健康経営優良法人の認定を取得しています。
事業は3つの部門と、その他に分かれます(この章の数字は2026年2月期の決算短信と有価証券報告書によります)。いちばん大きいのが食肉等の製造・卸売事業です。北海道の牧場で豚を育て、米国の2つの子会社で牛肉を加工し、国産牛と輸入牛肉を全国の小売店や外食店へ卸します。「こてっちゃん」の製造もここに入ります。売上高は4,366億円で、全社の9割を超えます。部門の利益(セグメント利益。営業利益に相当します)は98.8億円です。
次が食肉等の小売事業で、精肉店を営むオーエムツーミートなどが担っています。これらの会社を束ねる上場子会社がオーエムツーネットワークで、外食の「焼肉の牛太」も同じ系列です。小売の売上高は248億円に対し、利益は11.9億円でした。食肉等の外食事業は売上高99億円、利益4.1億円です。その他は冷蔵倉庫業などです。
会社はこの形を「総合食肉企業集団を目指して食肉流通の川上から川下領域まで一貫した食肉サプライ・チェーンを構築しております」と説明しています。生産、製造と卸、小売と外食を、自社グループの中に持つ形です。株主の上位は、筆頭株主が個人で25.26%、2位が商社の丸紅で15.29%です(2026年2月末時点)。会社は丸紅を「その他の関係会社」とし、米国の2社(オーロラとフリーモント)で加工した牛肉は丸紅を通じて仕入れています。会社は2026年5月に創業60年を迎えたとして、7月に記念の株主優待と、優待商品での国産牛の取り扱いの拡充を発表しました。
配当の元になる利益を見るとき、私がまず見るのは、いちばん大きい製造・卸売の部門です。この部門の利益は、仕入れた肉をいくらで売れるかと、加工して商品にすることで上がる分、そして加工や物流にかかる費用で決まります。売上4,366億円に対して部門の利益は98.8億円で、売上の2%あまりが利益として残ります。仕入れ値が上がったとき、売り値に転嫁できるか、加工や歩留まり(原料からどれだけ商品が取れるか)でどこまで吸収できるかで、この2%あまりが動きます。配当が増え続けられるかを見るとき、私はこの利益率と、仕入れ値を動かす牛の相場と為替を分けて読むようにしています。次の章で、17期の数字と会社の言葉を並べますね。
📊 数字と会社の言葉でたどる ― 配当は22円から104円へ
まず、利益と配当の歩みを17期分並べます。発行済株式数は2006年1月から変わっていないので、1株配当の額は当時のままの値で比べられます。
表A:17期の利益・配当・配当性向・自己資本比率
| 決算期 | 営業利益(億円) | 純利益(億円) | 1株配当(円) | 配当性向(連結) | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2010年2月期 | 56.0 | 27.9 | 22 | 23.1% | 52.5% |
| 2011年2月期 | 45.3 | 23.6 | 24 | 28.5% | 52.4% |
| 2012年2月期 | 48.0 | 14.2 | 24 | 47.1% | 51.0% |
| 2013年2月期 | 51.6 | 25.0 | 24 | 26.8% | 50.3% |
| 2014年2月期 | 56.8 | 33.1 | 26 | 22.0% | 46.1% |
| 2015年2月期 | 82.3 | 43.4 | 28 | 18.0% | 46.0% |
| 2016年2月期 | 84.2 | 50.8 | 32 | 17.6% | 43.7% |
| 2017年2月期 | 105.5 | 64.9 | 35 | 15.1% | 44.1% |
| 2018年2月期 | 109.5 | 77.6 | 43 | 17.1% | 51.6% |
| 2019年2月期 | 109.7 | 71.8 | 56 | 24.7% | 48.3% |
| 2020年2月期 | 107.0 | 65.1 | 60 | 29.2% | 46.8% |
| 2021年2月期 | 126.0 | 99.6 | 64 | 20.3% | 51.0% |
| 2022年2月期 | 174.2 | 119.4 | 70 | 18.5% | 54.7% |
| 2023年2月期 | 145.7 | 105.7 | 78 | 23.3% | 53.8% |
| 2024年2月期 | 126.7 | 90.7 | 84 | 29.3% | 53.0% |
| 2025年2月期 | 51.4 | 26.6 | 89 | 105.6% | 52.8% |
| 2026年2月期 | 104.7 | 92.3 | 104 | 35.7% | 52.5% |
- 純利益=親会社株主に帰属する当期純利益(2016年2月期以前の短信の科目名は「当期純利益」)。営業利益・純利益は0.1億円未満を切り捨てています。
- 配当性向は、会社が開示する連結ベースの値です(利益のうち配当に回す割合)。自己資本比率は、総資産に対する自己資本の割合です。
- 2012年2月期の47.1%と2025年2月期の105.6%は、利益が減った年に配当を変えなかった、または増配したためです。
- 発行済株式数は変わっていませんが、2015年に発行した転換社債が2017年7月までにすべて株式へ換わり、自己株式は2017年2月期の約418万株から2018年2月期の約60万株へ減りました。配当を受け取る株式の数は、この時期に1割あまり増えています。
- (出典:各年の決算短信)
表Aの配当の列は、2013年2月期まで22円と24円で、2014年2月期から毎年増えています。営業利益の列を見ると、2022年2月期の174.2億円から2026年2月期の104.7億円へ減りました。同じ期間に売上高は3,588億円から4,723億円へ増えています。配当の元になる利益は、売上と同じ向きには動いていません。利益が減った年に、会社は配当をどうしたのでしょうか。その間に会社が配当について何を書いてきたのかを、決算短信の言葉でたどっていきます。(この章の記述は、各年の決算短信と開示資料にある会社の説明に基づいています。)
2010年2月期。会社は配当方針を、単体の配当性向から、連結のDOE2%を目途にする形へ変えました。
この年の短信には、こうあります。「従来の単体配当性向を目処とした配当政策を改め、連結業績を勘案の上、連結の株主資本配当率2%を目途に、安定的な利益還元を実施して参りたい」。挙げている観点は「安定配当の継続」と「今後のグループ経営の事業基盤強化に向けた内部留保の積極活用」の2つです。配当は22円、配当性向は23.1%でした。
2011年2月期から2013年2月期。24円へ増配し、利益が14.2億円へ減った年も配当は変えませんでした。
2011年2月期に24円へ増配しました。2012年2月期は東日本大震災の年で、純利益は14.2億円へ減りました。短信は営業キャッシュ・フローの説明のなかで、投資有価証券評価損18.7億円を挙げています。配当は24円のまま、配当性向は47.1%です。2013年2月期に利益は25億円へ戻り、配当は24円でした。3年とも短信には「連結の株主資本配当率2%を目途」の文があります。
2014年2月期から2017年2月期。会社は生産や製造の会社を次々に迎え、利益は33.1億円から64.9億円へ、配当は26円から35円へ増えました。
会社はこの時期、垂直統合(生産から小売・外食までを自社グループで手がけること)を大きく進めました。2014年1月にグリコハム(現フードリエ)が加わりました。2015年には北海道の日高食肉センターが稼働し、米国のオーロラ(AURORA PACKING COMPANY)が加わりました。2016年には鶏肉の内外食品が加わっています。短信はその目的を「安定収益の確保」などと書き、2017年2月期には「牛・豚・鶏肉すべての生産事業に関わることになりました」とあります。利益の伸びが配当の伸びより速く、配当性向は22%から15.1%になりました。短信の純資産配当率は1.8〜1.9%でした。
2018年2月期。会社はDOEの目途を2.5%へ引き上げ、配当予想を38円から43円へ修正しました。
2018年2月13日の開示です。理由は「事業が順調に推移していることから、株主の皆様への利益還元の充実を図るため」。翌2019年2月期の配当は56円で、2年で35円から56円になりました。配当性向は24.7%、純資産配当率は2.2%です。
2019年2月期から2021年2月期。利益は2年続けて減ったあと2021年2月期に99.6億円へ増え、配当は56円から64円へ増えました。この年は、土地の譲渡益などを含む特別利益49.2億円(税引前)がありました。
2019年2月期の短信は、業界の環境を「原材料費や流通経費の値上がり、求人難」と書いています。2020年2月期は「原価率が上昇したことと、物流費など販売費及び一般管理費が上昇したこと」で営業利益が減ったとしています。配当はそれぞれ56円、60円へ増配し、配当性向は29.2%まで上がりました。2021年2月期はコロナの年で、会社は「販売価格が下落したことなどにより」売上が7%減ったと書いています。一方で「家庭需要の高まりから小売店向けの販売が好調に推移した」ことで、営業利益は126億円へ17.8%増えました。純利益は99.6億円とこの時点での最高でした。この年の税金等調整前の利益154.1億円には、土地の譲渡による固定資産売却益40.6億円を中心とする特別利益49.2億円と、特別損失24.9億円が含まれています。配当は64円です。
その配当を支えるキャッシュ・フロー(現金の出入り)も確かめたいので、表をもうひとつ用意しました。
表B:直近8期のキャッシュ・フローと配当の支え
| 決算期 | 営業CF(億円) | 投資CF | 期末の現金 | 配当金総額 | 純資産配当率(連結) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019年2月期 | 115 | △140 | 394 | 17 | 2.2% |
| 2020年2月期 | 51 | △179 | 301 | 19 | 2.4% |
| 2021年2月期 | 165 | 6 | 398 | 20 | 2.4% |
| 2022年2月期 | 76 | △74 | 413 | 22 | 2.4% |
| 2023年2月期 | 137 | △131 | 466 | 24 | 2.4% |
| 2024年2月期 | 89 | △144 | 495 | 26 | 2.3% |
| 2025年2月期 | 73 | △150 | 412 | 28 | 2.3% |
| 2026年2月期 | 88 | △82 | 374 | 32 | 2.6% |
- 表中の△はマイナスを表します。1億円未満は切り捨てています。
- 営業CF=本業で実際に出入りする現金です。
- 2024年2月期から2026年2月期のCFは、有価証券報告書の値です。2026年2月期の決算短信は2026年5月20日に訂正され、訂正後の値は有価証券報告書と同じです。2024年2月期は決算短信と3.3億円の差があり、あとから出た有価証券報告書の値を採用しました。
- 純資産配当率は決算短信の開示値です。自己資本(株主資本にその他の包括利益累計額を足したもの)の期首と期末の平均を分母に計算すると、開示値(小数第1位までの表示)と同じ値になります。会社が方針で使うDOE(株主資本配当率)の算式は開示がなく、分母の範囲が違う可能性があります。
- (出典:各年の決算短信、有価証券報告書 第60期)
営業CFは8期すべてプラスです。表より前の期を含めると、2014年2月期に4.1億円のマイナスがあり、2015年2月期からの12期はプラスでした。投資CFは2024年2月期と2025年2月期に150億円近くまで増えています。米国の新工場の建設(着手2021年5月)がこの時期にあたります。2026年2月期は、営業CF88億円と投資CF(△82億円)を合わせると6億円で、この期に実際に支払った配当金30.7億円(キャッシュ・フロー計算書)を下回りました。表の配当金総額と、この支払額は、対象となる配当の期と支払いの時期が違うため一致するとは限りません。新工場の投資が続く間、現金がどう動くかを見ていきます。
純資産配当率の列は2.2〜2.6%で、その年の目途(2025年2月期までは2.5%、2026年2月期は3%)より低く見えます。ただし注記のとおり、この欄の分母は自己資本とみられ、会社の方針にある「株主資本」とは範囲が違う可能性があります。貸借対照表の株主資本(期首と期末の平均)で配当金総額を割ってみると、2024年2月期2.5%、2025年2月期2.5%、2026年2月期2.9%でした(開示値から算出した試算で、会社の算式ではありません)。会社が掲げてきた目途と、ほぼ同じ水準です。
2022年2月期から2024年2月期。純利益119.4億円の最高益のあと2年減益し、配当は70円から84円へ増えました。
2022年2月期は「小売店向けの販売が好調に推移した」ことで売上が伸び、純利益は最高になりました。2023年2月期と2024年2月期の短信は、業界の環境を「食肉原料の高騰や物流コストの上昇」「消費者の節約志向のため、商品価格転嫁が進まず」と書いています。この2期は減益でした。配当は78円、84円と増え、配当性向は18.5%から29.3%へ上がりました。2024年2月期の短信で会社は「連結の株主資本配当率2.5%を目途に、安定的な利益還元を目指していきます」と書いています。同じ段落で会社は、従業員の働きやすい環境の整備にも触れています。
2025年2月期。純利益は26.6億円へ70.6%減りましたが、配当は期初の予想どおり89円でした。
会社は2024年10月と2025年4月の2回、業績予想を下方修正しました。10月の理由は「収益確保に苦しんだこと」。4月は、それに加えて2つを挙げています。「アメリカにおける生体牛高の影響で収益が悪化したこと」と、「ニュージーランドにおける中国向け販売不振の影響で棚卸資産評価損を計上したこと」です。棚卸資産評価損(在庫の価値を下げて損失に計上すること)は25.6億円で、特別損失ではなく営業損益のなかで処理されました。2回の修正はいずれも業績予想の修正でした。年間配当は期初の予想どおり89円となり、配当性向は105.6%になりました。
2025年1月、会社はDOEの目途を3%へ引き上げ、2026年2月期から適用すると発表しました。
会社が挙げた理由は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、持続的な成長を通じて株主の皆様への利益還元の充実を図るため」です。2018年の引き上げのときの「事業が順調に推移していることから」とは、書かれている理由が違います。いまの配当方針は、この3%です。
2026年2月期。純利益は92.3億円へ戻り、配当は104円でした。この年は、固定資産や株式の売却益を中心とする特別利益44.1億円(税引前)がありました。
税金等調整前の利益151.5億円には、特別利益44.1億円と特別損失9.7億円が含まれています。特別利益の中身は、固定資産売却益13.5億円と投資有価証券売却益26.1億円が中心です。売った資産の中身までは開示がありません。会社は2026年1月の上方修正の理由に、「国内事業が堅調に推移したこと」と、この特別利益の計上の2つを挙げました。配当は104円、配当性向35.7%、純資産配当率2.6%です。この年、会社は株主還元としての自己株式の取得を行っていません。還元は配当だけです。
部門別の売上高と利益も並べます(億円)。
| 部門 | 2024年2月期 売上高/利益 | 2025年2月期 売上高/利益 | 2026年2月期 売上高/利益 |
|---|---|---|---|
| 食肉等の製造・卸売 | 3,926.8/116.1 | 4,115.9/43.5 | 4,366.4/98.8 |
| 食肉等の小売 | 240.3/16.2 | 240.4/13.1 | 248.5/11.9 |
| 食肉等の外食 | 75.2/5.4 | 81.2/4.8 | 99.5/4.1 |
| その他 | 7.7/0.5 | 7.7/1.2 | 8.6/1.8 |
| 営業利益(調整後) | 126.7 | 51.4 | 104.7 |
- 各部門は決算短信の百万円を0.1億円未満で切り捨てています。利益=セグメント利益(営業利益に相当)。営業利益には、どの部門にも配らない費用などの調整額(2026年2月期は△11.9億円)が含まれます。
- (出典:各年の決算短信)
製造・卸売の利益は2025年2月期に43.5億円へ減り、2026年2月期に98.8億円へ増えました。2024年2月期の116.1億円、2022年2月期の169.1億円には届いていません。会社が挙げた米国の牛の高値と評価損は、この部門の話です。会社は上方修正の理由に国内事業の堅調を挙げ、第1四半期の短信では国産牛の販売ルート開拓を進めたと書いています。小売は売上高が増える一方、利益は2期続けて減りました。会社は新規出店や改装店の立ち上げを進めていると書いています。この「小売」は部門の数字で、上場子会社オーエムツーネットワーク1社の業績ではありません。外食は売上高が、2012年2月期に部門を分けてから最も大きくなりました。一方で利益は減っています。その他(冷蔵倉庫業など)は利益が2期続けて増えました。
会社が予想する2027年2月期は、売上高5,000億円、純利益65億円、配当110円です。第1四半期を終えた時点で、会社は通期予想を変えていません。くわしくは⚖️で見ます。その先の数年を、会社はどう計画しているのでしょうか。次の章で見ていきます。
🧭 会社はこれからをどう描いているか
会社は「中期計画」を公表しています。これまでの3年間は、毎年4月に改訂版が出ています。最新は2026年4月版で、2027年2月期から2029年2月期までの3期の数値が並びます。以下は会社の目標であり、達成を約束するものではありません。(出典:エスフーズ「中期計画 2026.4改訂版」、有価証券報告書 第60期)
数値の目標は、こうです。
2029年2月期に売上高6,000億円、営業利益170億円、経常利益180億円、純利益120億円。
ROE(自己資本利益率)の計画は、2027年2月期4.9%、2028年2月期5.1%、2029年2月期8.5%。
有価証券報告書には、期限を区切らない目標として「連結売上高5,000億円、経常利益200億円の早期達成」があります。中期計画で売上高5,000億円に届くのは2027年2月期で、そのときの経常利益の計画値は110億円です。
2026年2月期の実績は売上高4,723億円、経常利益117.2億円、純利益92.3億円でした(過去の実績であり、今後の水準を示すものではありません)。
会社が挙げている取り組みのうち、これからの利益を考えるうえで私が気になった3つを見ていきます。
1つ目の取り組みは、米国の新工場です。中期計画には「2026年 米国 オーロラ新工場竣工 能力増強(2.5倍規模)」とあります。2.5倍は会社の計画上の規模感で、実測の数字ではありません。有価証券報告書は「本年7月に新工場を稼働させ、生産の効率化を図りながら供給能力の増強を図ります」としています。投資予定額339.8億円のうち316.8億円を、2026年2月末までに支払っています。有価証券報告書の地域ごとの情報では、米国の売上高は2025年2月期の543.5億円から2026年2月期の548.7億円へ、0.9%増えました。米国の有形固定資産(工場や土地などの資産)は318.2億円から374.6億円へ増えています。この欄は外部のお客さんへの売上なので、米国の工場からグループ内へ回る分は含まれない可能性があります。製造・卸売の利益と合わせて見ます。
2つ目の取り組みは、国内の拠点と輸出です。中期計画には「2027年 西日本営業強化・拠点整備(九州・中国)」、「和牛の輸出拡大に向けた生産拠点の構築」とあります。有価証券報告書は、国産豚肉「ゆめの大地」の東南アジアへの輸出拡大と、「こてっちゃーはん」などの冷凍食品の販売強化を挙げています。輸出の金額は開示がないので、農林水産省が毎年出す牛肉の輸出額と、会社が短信に書く輸出の言葉を並べて見ていきます。
3つ目の取り組みは、ニュージーランドの肥育事業の立て直しです。中期計画は「2023年 ニュージーランド 肥育事業の立ち上げ(2025年 事業再構築)」と書いています。2026年2月期の短信では「現状の需要に応じて管理体制や在庫の見直しを行いました」とあります。この事業だけの売上や利益は開示がなく、部門の数字から切り分けることは、この記事ではできませんでした。これから決算が出るたびに、製造・卸売の利益と、この事業についての会社の説明を並べて追っていきます。
中期計画の純利益の計画値は、2027年2月期について、2024年4月版から順に135億円、70億円、65億円と、2度引き下げられました。同じ期の売上高は5,400億円、5,700億円、5,000億円で、一度引き上げられてから下げられています。会社は理由を「海外事業の立ち上げ遅れと不振で計画修正」「米国牛肉市況の改善遅れ」と書いています(2025年4月版)。
配当の目線で読むと、中期計画の3版には配当やDOEの記載がありません。配当方針は決算短信と有価証券報告書にある「連結の株主資本配当率(DOE)3%を目途」です。株主資本が増えれば、同じ3%でも配当の額は増える計算になります。2027年2月期の予想配当110円に配当を受け取る株式数(約3,167万株)を掛けると約34.8億円で、2026年2月末の株主資本1,149億円で割ると3%です(開示値から算出した試算で、会社の算式ではありません)。この試算と、ROEの計画の進み具合を、毎年4月の本決算で見ていきます。
(この3つの取り組みを取り巻く外の環境は、記事の終わりの🔍で公的統計の推移と並べています。)
⚖️ 気をつけたいところと、支えになりそうなところ
先に、気をつけたい点から見ていきます。
気をつけたいところ
① 米国では牛の仕入れ値が高く、会社は2期続けて米国の収益を「厳しい状況」と説明しています。新工場の完成・稼働の予定は、2023年から2026年の開示の間に後ろへ動きました。
米国の有形固定資産は374.6億円で全社の43.2%を占めます。売上の割合(11.6%)より、置いている資産の割合のほうがずっと大きい。新工場に投じるお金の大きさが、ここに表れています。予定は、決算短信と中期計画の中で次のように動きました。
2023年4月の短信=「来年中の完成を予定」。
2026年4月の短信=「当初計画より遅れはしたものの本年7月から稼働を開始する予定」。
この間、2024年4月・2025年4月・2026年1月の開示でも、稼働の時期は一度ずつ後ろへ動いています。会社が最後に書いたのは2026年7月14日の第1四半期決算短信で、「本年7月の稼働開始に向け、その準備を進めました」でした。稼働が始まったかどうかは、この記事の時点では会社の開示を確認できていません。
会社は2025年2月期の短信で、2つを並べてこう書きました。「アメリカにおける生体牛高の影響とニュージーランドにおける中国向けの販売不振により、収益面では厳しい状況となりました」。2026年2月期はアメリカについて「前期に引き続き厳しい状況」としています。仕入れる牛の値段が上がると、牛肉の売り値に転嫁できない分だけ利益が減ります。米国の牛の値段がどう動いてきたかは、🔍で米国政府(米農務省)の統計と並べます。だから私は、決算短信のセグメント情報にある製造・卸売の利益と、有価証券報告書の地域ごとの売上高を、毎年見比べることにしています。
② 2027年2月期は、純利益が65億円へ29.6%減る会社予想です。配当は110円の予想で、配当性向は53.6%になります。
2027年2月期の会社予想は、売上高5,000億円、営業利益100億円(4.5%減)、純利益65億円です。1株当たり利益の予想は205.22円で、配当110円を出すと配当性向は53.6%になります。会社が目途にしているのはDOEで、配当性向の目標は方針に書かれていません。配当性向が5割を超えたこと自体が方針から外れたことを意味するわけではない、と私は読んでいます。ただし53.6%は、2025年2月期を除けばこの17期で最も高い水準です。
3〜5月の第1四半期は、営業利益が前年同期比55.1%増、純利益は0.9%減でした。会社が収益を圧迫する要因に挙げたのは、消費者の節約志向と低価格志向、エネルギーコストと原材料の高騰、「ナフサ関連製品の不足による包材などの値上がり」です。通期予想は変えていません。中間決算で、通期予想との差がどれだけ縮んだかを見ます。
③ 売上高営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)は2.2%です。仕入れ値の上昇を売り値に転嫁できるかどうかで、利益が大きく動きます。
売上高営業利益率は、2022年2月期の4.9%から2026年2月期の2.2%になりました。会社は2026年2月期の短信で、食肉業界について「人件費や運送費においても引き続き増加が見られるため、収益確保が困難な状況が続いております」と書いています。
仮に売上高4,723億円のまま利益率が0.1ポイント動くと、営業利益はおよそ4.7億円動く計算です(売上高に0.1%を掛けた単純な試算です)。0.1ポイントとは、2.2%が2.1%や2.3%になる幅のことです。小さな利益率の変化でも利益の額への影響は小さくないので、この利益率は四半期ごとに見ていきます。
④ 海外事業の立ち上げが計画より遅れ、中期計画の純利益の計画値は2度引き下げられました。ニュージーランドでは25.6億円の評価損を計上しています。
🧭で見たとおり、2027年2月期の純利益の計画値は2度引き下げられ、会社は理由に海外事業の立ち上げの遅れと不振を挙げています。ニュージーランドの子会社SFJ HOLDINGSは、牛を育てて売る肥育事業を行い、中国向けの販売があります。2025年2月期に「中国向け販売不振の影響から棚卸資産評価損2,560百万円を計上」しました(2025年4月9日の開示)。会社は事業の再構築として「管理体制や在庫の見直し」を行いました。この事業だけの利益は今回確認した資料では分からないので、中期計画の改訂と、会社の説明を合わせて見ていきます。
⑤ 利息に対する余裕を示す指標は、3期で31.7倍から14.3倍になりました。会社は疾病や輸入制度も、事業のリスクに挙げています。
2026年2月期の短信(2026年5月の訂正後)には、参考指標も載っています。キャッシュ・フロー対有利子負債比率(有利子負債が営業CFの何倍あるか)は、2024年2月期から順に5.8倍、7.5倍、6.4倍でした(短信の%表示を倍に換算)。インタレスト・カバレッジ・レシオ(営業CFが利払いの何倍あるか)は31.7倍、20.1倍、14.3倍でした。2024年2月期と比べると、営業CFに対する有利子負債の倍率は上がり、利払いに対する営業CFの倍率は下がりました。この比率は借入の額だけでなく営業CFの増減でも動き、2025年2月期は営業CFが73億円へ減った年でした。新工場に339.8億円を投じている時期にあたります。有価証券報告書のリスクには、疾病(BSE・口蹄疫・鳥インフルエンザ等)やセーフガード・豚肉差額関税などの輸入制度、飼料用穀物の作柄、為替が並びます。どれも仕入れの値段と量に直接かかわります。
⑥ 配当は増えてきましたが、株主総利回りは2021年2月末の株価を100として87.1です。同じ期間の配当込みTOPIXは238.3でした。
有価証券報告書に載っている株主総利回り(配当を含めた投資家のリターン)の開示値です。この5年間は82.4〜103.2の間で推移し、100を上回った年は2回でした。配当が増えたことと、投資家のリターンがどうだったかは、別の数字です。
支えになりそうなところ
これまでの事実です。
① 配当は17期で一度も減配せず、2014年2月期から13期続けて増配しています。会社はDOE3%を目途にする配当方針を掲げています。
利益が前の年より減った7回の年のうち、6回は増配し、1回は同じ額でした。2025年2月期は純利益が70.6%減っても増配しています。会社はDOEを目途にする配当方針を2010年2月期から掲げ、目途を2%、2.5%、3%と引き上げてきました。目途に対する実績の読み方は、📊で見たとおりです。
② 自己資本比率は17期を通じて43.7〜54.7%で、2026年2月期は52.5%です。営業CFは12期続けてプラスでした。
期末の現金は374億円です。ただし現金には日々の仕入れに使う運転資金が含まれるので、そのまま配当に回せる額ではありません。いずれも過去の実績であり、今後の水準を示すものではありません。
③ 国内の事業を、会社は2026年1月の開示で「堅調に推移」と説明しました。製造・卸売の利益は98.8億円でした。
2026年2月期の上方修正の理由に、会社は「国内事業が堅調に推移したこと」を挙げました。有価証券報告書の地域ごとの売上高では、日本が86.6%を占めます。製造・卸売の利益は前の年の43.5億円から増えましたが、2024年2月期の116.1億円には届いていません。
気をつけたい点と支えになりそうな点を、どちらも並べたまま、これからの決算を読んでいきます。
📌 次に見ようと思っているポイント
増配が続くかどうかを追いかけるために、次の4つを追っていくつもりです。ご自身で確かめるときの手がかりとして使っていただけたら、うれしいです。
① 純資産配当率と配当性向(決算短信の1ページ目「配当の状況」)。
4月の本決算で、短信の純資産配当率が2.6%からどう動くか。株主資本を分母にした試算では2.9%で、目途の3%に近い水準でした。会社が算式を示すかどうかも、あわせて見ます。
② 米国の売上高と製造・卸売の利益(決算短信の部門別の情報、有価証券報告書の地域ごとの情報)。
新工場が稼働したあと、米国の売上高548.7億円と、製造・卸売の利益98.8億円がどう動くか。
③ 売上高営業利益率(決算短信の1ページ目)。
2.2%からどこへ動くか。中期計画の数値から計算すると、2027年2月期は2%、2029年2月期は2.8%です(会社の計画値どうしの割り算です。会社の目標であり、達成を約束するものではありません)。
④ 中間決算で会社が書く、米国の新工場の稼働と通期予想(2027年2月期第2四半期の決算短信)。
前の期の中間配当は、2025年10月14日の取締役会で決まっています。今期の発表日は、会社の開示で確かめます。もうすぐ中間決算が発表される見込みです。どのような発表になるか、確認したいと思います。第1四半期の営業利益55.1%増が続いているか、新工場について会社が何を書くか、通期予想と配当予想が変わるか。この3つを見ます。
🔍 もう少し深く ― 会社の商売を取り巻く4つの土台を、公的統計の推移で確かめる
この章は、補足の章です。お急ぎの方は「おわりに」へ進んでも大丈夫です。この章では、🧭に書いた会社の取り組みと、⚖️で挙げた気をつけたい点を、外の統計と突き合わせてみます。使うのは公的統計の推移です。来年の決算を読むときには、このような背景も確認しようと思っています。
土台① 家庭が買う牛肉の量は15年で2割減り、豚肉と鶏肉は増えました。会社が書いた「低価格帯へのシフト」と同じ向きです。
会社は2026年2月期の短信に「消費者の需要が低価格帯商品へシフトしており、その結果として豚肉・鶏肉の価格高騰につながっています」と書きました。有価証券報告書の地域ごとの売上高では、日本が86.6%を占める会社です(肉の種類別の内訳は開示がありません)。家庭の肉の買い方が長い期間でどう変わってきたかを、国の統計で見ます。
まず、買う量です。総務省の家計調査(二人以上の世帯・1世帯あたりの年間)で、牛肉の購入数量は2010年の6,922gから2025年の5,401gへ、21%減りました。同じ15年で、豚肉は19%、鶏肉は35%増えています。農林水産省の食料需給表でも、牛肉の国内消費仕向量は2019年度から2025年度(概算値)にかけて1割減り、豚肉と鶏肉は増えました。この15年で、家庭が買う量は牛肉が減り、豚肉と鶏肉が増えました。この比較だけでは、買い替えの理由までは分かりません。
次に、値段です。買う量が減った牛肉でも、家庭が払う額は10%増えました(18,964円から20,880円へ)。総務省の消費者物価指数(2020年=100)で、2025年の輸入牛肉は140.9と、総合の111.9を大きく上回ります。店先では輸入牛を中心に牛肉が高くなり、家庭は買う量を減らしながら払う額は増えた、という動きです。豚肉と鶏肉の値段も上がっていて、同じ指数で2025年の国産豚肉は125.3、鶏肉は118.3と、総合を上回ります。会社の言う「豚肉・鶏肉の価格高騰」と同じ向きです。
会社は2017年2月期の短信で、鶏肉生産の内外食品を加えて「牛・豚・鶏肉すべての生産事業に関わることになりました」と書いています。直近の有価証券報告書では、生産会社は「当社向け国産肉牛及び豚の肥育・加工」と説明されています。需要が牛から豚・鶏へ移るなかで、どの肉で利益が出たかは開示がなく測れません。私が見るのは、製造・卸売の利益率と、家計調査の購入数量の向きです。みなさんの食卓では、牛肉と豚肉・鶏肉のどちらが増えたでしょうか。
外食も並べます。家計調査の外食支出は2019年の176,917円から2020年に129,726円へ26%減り、2025年は198,759円と2019年を上回りました。会社の外食事業の売上高も、2021年2月期の51.7億円から2026年2月期の99.5億円へ増え、部門を分けてから最も大きくなりました。一方で利益は4.1億円です。会社は第1四半期の短信で、メニュー改定や経費削減などの施策を行っていると書いています。需要が戻ることと、利益が残ることは別なので、外食の利益は毎年見ていきます。
土台② 米国では牛の頭数と生産量が減り、肥育牛の値段は5年で2倍になりました。会社が2期続けて書いた「生体牛高」は、米国政府の統計でも同じ向きです。
米国では、子会社のオーロラとフリーモントの2社が牛肉を加工しています。エスフーズはこの2社から、丸紅を通じて牛肉を仕入れています(有価証券報告書の注記)。米国の有形固定資産は374.6億円まで増えました。会社が2期続けて書いた「生体牛高の影響」の背景を、米国政府(米農務省)の統計でも見てみます。
まず、牛の数と牛肉の量です。米国の牛の総頭数(1月1日)は2019年の9,466万頭から2026年の8,615万頭へ、1割弱減りました。牛肉の生産量も2022年の282億ポンドから2025年の260億ポンドへ減っています。次に、値段です。ネブラスカ州の肥育牛(食肉用に育てた牛。生きた牛のまま取引される値段です)の取引価格は、100ポンドあたり2020年の107ドルから2025年の224ドルへ、5年で2倍になりました。牛が減り、牛の値段が上がった。会社の言う「生体牛高」と、この統計は同じ向きです。
牛を買って加工し、牛肉として売る商売では、仕入れ値の上昇を売り値や加工の工夫で吸収できなければ利益が減ります。会社の米国事業の厳しさがどこまでこの相場によるものかは、開示からは分けられません。会社は新工場を「能力増強(2.5倍規模)」と書いています。ただ、能力が増えても、実際に扱う量や利益が同じ倍率で増えるとは限りません。増えた量から、利益は残るでしょうか。牛の値段と牛肉の売り値の差に加えて、工場の稼働の状況も見ていきます。だから私は、米農務省が公表するこの肥育牛の価格を、決算と並べて見ていきます。
この相場は、日本の店先にもつながっています。財務省の貿易統計で、日本に入る牛肉のうち米国産の割合は、2010年の18.3%から2025年の35.8%へ増えました(最も大きいのは豪州産の49.7%)。米国の牛が高くなれば、日本で売る輸入牛肉の仕入れ値にも効く位置にあります。
ニュージーランドも同じ形で見ます。ニュージーランド政府統計局の輸出統計で、同国の牛肉輸出の総額は2022年の48.3億NZドルから2025年の49.8億NZドルへ増えています。一方で中国向けは、2022年の21億NZドルから2024年に10.4億NZドル、2025年は8.7億NZドルへ減りました。輸出全体に占める中国向けの割合は43%から17%です。会社が評価損を計上した2025年2月期にあたる2024年、国全体の統計でも中国向けは2022年の半分になっていました。これは国全体の市場環境の数字で、会社のニュージーランド事業の販売実績そのものではありません。
土台③ 日本の牛肉輸出は15年で21倍になりました。会社の輸出額は開示がないので、国の輸出額と会社の言葉を並べて追います。
会社は2012年に神戸ビーフの輸出を始め、中期計画に「和牛の輸出拡大に向けた生産拠点の構築」と書いています。国内で買われる牛肉の量が減るなかで(土台①)、輸出はどれだけ伸びたのかを見ます。
農林水産省の農林水産物輸出入概況(元は財務省の貿易統計)で、牛肉の輸出額は2010年の33.9億円から2025年の716.6億円へ、21倍になりました。数量は541トンから11,861トンです。加工品を含む農林水産省の公表値では731億円で、国・地域別の首位は米国の154.4億円でした。国内の家庭で買われる牛肉の量が減る一方で、牛肉の輸出額は増えてきました。
ただし、国全体の数字は市場環境の参考で、会社の実績の代わりにはなりません。会社の輸出額は開示がなく、測れませんでした。有価証券報告書の地域ごとの売上高で、日本と米国以外は79.7億円です(2026年2月期)。これには海外の子会社が現地で売った分も入るので、輸出額そのものではありません。市場環境の参考として国の牛肉輸出額を見ながら、会社が短信で輸出の取り組みをどう書くかを追っていきます。どちらかが動いたときに、製造・卸売の利益がどうなるかを見ます。
土台④ 円は15年で4割安くなりました(1ドル87円から149円へ)。輸入牛肉の円建ての仕入れ値は上がり、米国子会社の売上は円に換算すると大きくなります。
日本に入る牛肉の1kgあたりの値段は、2010年の401円から2025年の938円へ2.3倍になりました(貿易統計の輸入金額を数量で割った値)。同じ期間に、日本銀行が公表するドル円の年平均は87.77円から149.64円へ動きました(月中平均12個の単純平均として算出。途中の2020年には106.78円まで戻った年もあります)。会社は有価証券報告書のリスクに「為替相場の変動は、輸入コストの増減要因となります」と書いています。
この輸入価格の2.3倍には、為替だけでなく、輸入する肉そのものの値段や品目の構成の変化も含まれます。国全体の平均から、会社の仕入れ値への影響までは読み取れません。会社の資料には為替の前提の記載が見当たらないので、この1kgあたりの輸入価格とドル円の年平均を、毎年並べて見ていきます。
(この章の公的統計のうち、暦年の平均や年平均、輸出の加工品を含む合算は、月次や品目別の原典を年ごとにならして作った値です。米国の統計は米国政府(米農務省)の公表値で、年平均は月次の単純平均です。肥育牛の価格はネブラスカ州の去勢牛(上位等級の割合65〜80%)の系列です。増減率と倍率は小数点以下を切り捨てています。)
☕ おわりに
「エスフーズ(2292)は、これからも増配を続けられそうか」。この問いに、未来を予測して答えることはできません。
いまあるのは、17期で減配のない配当と、13期続いた増配、DOE3%を目途にする配当方針。同じくいまあるのは、売上の2%あまりが利益として残る商売と、米国の牛の高値、会社が減益を予想している今期です。どちらも、いまある事実です。
「こてっちゃん」を作り、牛や豚の生産から食卓まで手がけてきた会社の、次の決算を待ちます。売上高営業利益率は半期ごとの決算で、純資産配当率と米国の売上高は年に一度の決算資料で見ていきます。新工場の稼働と国内の値上げが、決算のどの数字に出てくるのか。そこを確かめていきます。
みなさんは、どう考えますか。
出典・一次ソース
- エスフーズ 決算短信(2010年2月期〜2026年2月期・2027年2月期第1四半期)/2010〜2013年2月期は会社IRサイトのアーカイブ、2014年2月期以降はIRBANKミラー
- エスフーズ 配当方針の変更及び配当予想の修正に関するお知らせ(2018年2月13日)、配当方針の変更に関するお知らせ(2025年1月14日)
- エスフーズ 業績予想の修正に関するお知らせ(2024年10月11日・2026年1月14日)、連結子会社における営業損失の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ(2025年4月9日)
- エスフーズ 創業60周年記念株主優待および株主優待制度の一部変更に関するお知らせ(2026年7月14日)
- エスフーズ 中期計画(2024年4月・2025年4月・2026年4月改訂版)
- エスフーズ 有価証券報告書(第60期・2026年2月期)
- エスフーズ (訂正・数値データ訂正)「2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について(2026年5月20日)
- エスフーズ 会社サイト(会社概要・沿革・株式情報)
- 総務省統計局「家計調査」(二人以上の世帯・品目別年間支出金額・購入数量)、「消費者物価指数」(2020年基準・品目別・年平均)
- 農林水産省「食料需給表」、「農林水産物輸出入概況」「農林水産物・食品の輸出実績」
- 財務省「貿易統計」(品別国別表・輸入)
- 日本銀行「東京市場 ドル・円 スポット 17時時点/月中平均」
- 米国農務省(USDA)経済調査局「Livestock Prices」「Meat Statistics」、全米農業統計局「Cattle」(1月1日現在の牛総頭数)
- ニュージーランド政府統計局(Stats NZ)「Overseas merchandise trade datasets」
免責
この記事は、公開情報をもとに筆者が整理した観察ノートであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。将来の業績・配当・株価を約束するものではありません。参考利回りは記載の基準日の終値に基づく参考値で、株価が動けば変わります。実績と会社予想は別物です。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。記載の数値は各社の開示資料に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。
著者:ミーナ/更新日:2026-09-26