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大和ハウス工業(1925)は、これからも増配を続けられそうか

📖 約24,700文字(まずは「はじめに要点を」だけでも。じっくり読むと約33〜48分)

街の一戸建てや賃貸アパート、郊外の物流倉庫、ロードサイドの商業施設を建て、貸し、開発している大和ハウス工業(1925)を、17期分の決算資料で見てみました。17期のあいだに配当がどう増え、利益が減った年に会社が何を書いていたのか。そして、これから私が何を見ていくのかを、順に書いていきます。

更新日:2026-10-11


☕ はじめに要点を

大和ハウス工業は、純利益が前の年より減った年にも配当を増やしてきた会社です。並べた17期で減益の年は4回あり、そのすべてで増配でした。会社は2027年3月期に、純利益が減る予想を出しながら、配当は増やす予想です。この「利益が減っても増配」が続くかどうかを考えるために、私はこれから3つを見ていくつもりです。利益の中身、借りたお金と、投資した資金の回収の動き、そして次の中期経営計画(会社が数年ごとに作る経営の計画)に書かれる配当方針です。なお、将来の配当を約束するものではありません。この記事で、ひとつずつ確かめていきます。

(お忙しい方は、ここだけ読めば大筋がつかめます。気になったら下へどうぞ。)

ざっくり言うと

大和ハウス工業は、住宅・商業施設・物流施設などを建て、貸し、開発する会社で、決算は6つの事業に分けて開示しています(事業の中身は🏢で見ます)。売上高は5兆5,768億円、そのうち海外が18%です(2026年3月期)。決算は3月、配当は年2回です。2026年10月1日に1株を2株にする株式分割をしました。そのため、この記事の1株当たりの数字はいまの株数にそろえた値で書き、当時の額を括弧に添えます。配当方針の下限額だけは、会社の文言どおり当時の額で書きます。

利回りは?

2026年3月期の配当は87.5円(175円)で、うち5円(10円)は創業70周年の記念配当です(決算短信より)。株価2,158円(2026年10月9日の東京証券取引所の終値)で割ると約4.0%、記念配当を除いた82.5円(165円)では約3.8%です。

2027年3月期の会社予想は、中間86円(分割前の株数に対して)と期末46円(分割後の株数に対して)で、年間の合計は載っていません。中間を2で割って期末と足すと89円(178円)になり、約4.1%です。89円は、年間の配当を比べるための記事での換算値です。中間配当の権利を持たない場合、今期分としてこの全額を受け取れるわけではありません。(実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。株価で変わりますし、将来の配当・利回りを約束するものではありません。いずれも税引前の数字で、小数第2位以下は切り捨てています。)

おさえどころ3つ

① 2011年3月期から16期続けて増配し、純利益が減った4回の年も、すべて増配でした。

年間配当は、いまの株数にそろえると8.5円から87.5円(当時の額で17円から175円)になりました。その前の2009年3月期は12円(24円)だったので、17期の最初の年である2010年3月期は減配でした。会社が開示する「16期連続の増配」は、年間配当の合計で数えたものです。記念配当を除いた普通配当だけで見ると、2011年3月期と2022年3月期は前の年と同じ額でした。たとえば新型コロナの影響で純利益が16.5%減った2021年3月期も、配当は0.5円(1円)の増配です。

② 2027年3月期は、純利益が減る一方で、増配を予想しています。純利益の予想は2,660億円(24.1%減)ですが、前の年の年金の数理差異の影響を除いた会社の比較では2.0%減です。比較の違いは📊で見ます。

数理差異は、年金の計算の前提を見直したときや、前提と実績がずれたときに出る損益で、📊で説明します。会社は2024年以降の開示で、配当の額を数理差異を除いた利益で決めると書いています。

③ 会社は第7次中期経営計画の期間中、配当性向35%以上かつ年間配当の下限145円(2024年に130円から引き上げ)を方針にしてきました。次の計画は公表が延期され、配当方針の数字はまだ示されていません。会社は次の計画で、増えた借入の水準と株主還元の考え方をあわせて示すとしています。

下限145円は、いまの株数では72.5円にあたります。有利子負債は3兆767億円まで増え、D/Eレシオ0.98倍は会社が規律としてきた0.6倍程度を上回っています。会社は、分譲事業の拡大やM&Aなど戦略的な投資を進めた結果で、一時的なものと説明しています。

次に見ようと思っているポイントは、記事の後ろの📌にまとめました。はじめに、どんな建物を、誰のために建てている会社なのかを見ていきます。

(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料に基づきますが、数字の拾い間違いなどがあるかもしれません。投資の判断はご自身で。)


🏢 大和ハウス工業ってどんな会社?

住宅街を歩くと、同じ形の一戸建てが数軒並んだ分譲地がある。少し離れた場所には、「D-ROOM」と名のついた賃貸アパートが建っている。郊外の幹線道路の近くには大きな物流倉庫があり、ロードサイドには飲食店やドラッグストアの入った商業施設がある。どれも、見覚えのある風景だと思います。これらを建て、貸し、開発してきたのが、大和ハウス工業です。

ひとことで言うと、土地を持つ人や企業の依頼で建物を建てる「請負事業」を続けてきた会社です。近年はそこに、土地の取得から開発、販売まで自分で手がける「分譲事業」を広げています(統合報告書2026のCFOメッセージ)。本社は大阪市にあり、従業員は連結で55,712名です。会社は2025年4月に従業員の年収を平均10%引き上げた、とも書いています。

決算では、事業を6つに分けています。2026年3月期は、賃貸住宅、戸建住宅、商業施設、事業施設の4つが、どれも外部のお客さんへの売上で1兆円台でした。残る2つはマンションと環境エネルギーです。セグメント利益(事業ごとの営業利益)も、大きい4つが1,276億円から1,624億円の幅に並んでいます。ただし戸建住宅の利益1,556億円のうち、1,498億円は海外の戸建です。そのうち919億円は、米国での大型の土地売却1件による利益です(⚖️③で見ます)。(この章の数字は2026年3月期の決算短信、有価証券報告書、統合報告書2026によります。)

売上の18.4%は海外です。海外の売上は2018年度の2,785億円から2025年度の1兆284億円へ増え、その多くは米国の戸建住宅でした。会社は米国の住宅会社を3社、グループに迎えています。2017年のStanley Martin、2020年のTrumark、2021年のCastleRockです。米国戸建の売上は2025年度に7,810億円、引き渡した家は7,776戸でした。

国内では、新しく建てる家の数が減るなかで、売上の形が変わってきました。会社(単体)の国内の住宅販売戸数は、2017年度の51,641戸から2025年度の31,085戸へ減りました。戸建住宅では、会社は「棟数ではなく一件当たりの価値向上に軸足」と書き、1戸当たりの平均売上は3,590万円から5,310万円になっています。一方で、建てた賃貸住宅の管理戸数は54.3万戸から72.5万戸へ増えました。管理戸数のうち約9割は、会社が建物を一括で借り上げる形です(会社の資料の表記は「一括借上(入居保証)」)。入居率(年度末)は96.9%から98.2%の間で推移しています(統合報告書2026、決算概要)。有価証券報告書は、賃貸用の不動産で入居者や賃料が計画どおりに確保できなくなる可能性を、リスクとして挙げています。

配当の元になる利益は、3つの仕事に分けると読みやすくなります。1つ目の仕事は、土地を持つ人や企業の依頼で建てる請負と、土地から自分で手がける分譲です。2つ目の仕事は、物流倉庫や商業施設を建てて投資家などに売る「開発物件売却」です。2026年3月期は売上3,337億円、営業利益1,074億円で、全社の営業利益の17%にあたります。売る時期によって、年ごとの利益が大きく動きます。

3つ目の仕事は、賃貸住宅の管理など毎年続く収入です。会社はこれを「ストック型売上高」と呼び、2025年度は1兆8,189億円でした(2026年5月の経営説明会資料)。2つ目は売れた年に利益が大きく出て、3つ目は毎年積み上がる、という違いがあります。次の章では、17期の数字を表にして確かめていきましょう。


📊 数字でみる ― 17期の配当・利益・借入を表にして

まず、利益と配当の歩みを17期分並べますね。1株当たりの値はいまの株数にそろえ、当時の開示値を別の列に残しました。

表A:17期の利益・EPS・配当・配当性向・自己資本比率

決算期 純利益(億円) EPS(円・分割後換算) 1株配当(円・分割後換算) 当時の開示値(円) 配当性向(連結) 自己資本比率
2010年3月期 191.1 16.50 8.5 17 51.5% 32.2%
2011年3月期 272.6 23.54 10(うち記念1.5) 20 42.5% 32.8%
2012年3月期 332.0 28.68 12.5 25 43.6% 31.5%
2013年3月期 662.7 57.26 17.5 35 30.6% 30.9%
2014年3月期 1,020.9 80.54 25 50 31.0% 37.0%
2015年3月期 1,171.3 88.87 30 60 33.8% 36.6%
2016年3月期 1,035.7 78.20 40(うち記念5) 80 51.2% 35.9%
2017年3月期 2,017.0 152.07 46 92 30.2% 36.8%
2018年3月期 2,363.5 177.93 53.5 107 30.1% 36.5%
2019年3月期 2,374.3 178.64 57 114 31.9% 36.8%
2020年3月期 2,336.0 175.92 57.5 115 32.7% 37.3%
2021年3月期 1,950.7 148.59 58 116 39.0% 36.3%
2022年3月期 2,252.7 171.91 63(うち記念5) 126 36.6% 36.6%
2023年3月期 3,083.9 234.56 65 130 27.7% 37.2%
2024年3月期 2,987.5 228.58 71.5 143 31.3% 37.3%
2025年3月期 3,250.5 257.00 75 150 29.2% 37.1%
2026年3月期 3,505.6 283.23 87.5(うち記念5) 175 30.9% 34.4%

→ 配当性向のことばの説明は、用語集にあります

1株配当の列は、2011年3月期から前の年を下回った年がありません。いっぽう純利益は、2016年3月期、2020年3月期、2021年3月期、2024年3月期の4回、前の年を下回りました。その4回とも増配です。

利益が減った年にも増配したので、そうした年の配当性向は51%台まで上がり、利益が大きく増えた年には30%前後に戻っています。決算上の配当性向は、2013年3月期の30.6%と2026年3月期の30.9%で、ほぼ同じです。ただし2026年3月期の利益には、年金の数理差異の益が入っています。会社が配当を決める基準(数理差異を除いた利益)で見ると、2026年3月期の配当性向は39.9%です。この除いた配当性向は、2024年3月期の35.1%、2025年3月期の37.1%、2026年3月期の39.9%と上がっています。

年金の数理差異とは、何の数字か

前の年と利益を比べる前に、確認したいことがひとつあります。この会社の利益には、退職給付(年金)の数理差異という数字が大きく入っています。会社は従業員の年金を将来いくら払うかを計算して費用を積みます。その計算の前提(割引率や年金資産の運用)を見直したときや、前提と実際の結果がずれたときに、差が出ます。割引率は、将来払う年金をいまの金額に直すときの利率です。この利率が上がると、将来の支払いをいまの金額に直した負担が小さくなり、その分が費用の減少、つまり利益として出ます。会社はこの差を、発生した年度に一括して損益に入れています(2003年3月期から。会社は、いまの会計制度ではこの方法を変えられないと説明しています)。2026年3月期の差は営業費用を1,156億円減らす方向に働き、営業利益6,148億円の2割近くにあたります。主な理由は、割引率の変更です。

2027年3月期の会社予想には、この数理差異を見込んでいません。そのため会社は2つの比較を示しています。決算上の比較では営業利益は25.2%減、純利益は24.1%減です。前の年の数理差異などの影響を除いた比較では、営業利益は7.9%減、純利益は2.0%減です。配当については、会社は2024年5月以降の開示で「退職給付会計における数理計算上の差異を除いて配当金額を決定」と書いています。ただし、数理差異を除いた利益がそのまま本業の利益というわけではありません。たとえば2026年3月期には、米国の子会社による大型の土地売却の利益が含まれています(⚖️③)。

その配当を支えるキャッシュ・フロー(現金の出入り)と借入も確かめたいので、表をもうひとつ用意しました。

表B:直近9期のキャッシュ・フロー・配当金総額・有利子負債

決算期 営業CF(億円) 投資CF 営業CF+投資CF 配当金総額 有利子負債(億円) D/Eレシオ
2018年3月期 3,823 △3,136 687 712 7,805 0.53倍
2019年3月期 3,555 △3,139 416 757 7,785 0.49倍
2020年3月期 1,496 △3,172 △1,676 763 10,434 0.54倍
2021年3月期 4,303 △3,899 403 758 12,748 0.59倍
2022年3月期 3,364 △4,674 △1,309 826 14,254 0.61倍
2023年3月期 2,302 △5,051 △2,748 856 18,494 0.72倍
2024年3月期 3,022 △3,104 △81 925 20,878 0.77倍
2025年3月期 4,205 △4,933 △728 939 23,090 0.80倍
2026年3月期 1,892 △7,260 △5,367 1,083 30,767 0.98倍

営業CFは9期すべてプラスですが、年ごとの振れが大きい数字です。2026年3月期の1,892億円の主な要因を、会社は「販売用不動産の取得や法人税等の支払いを行ったこと」と説明しています(統合報告書2026)。建てて売るための土地や建物を先に仕入れると、その年の営業CFは減ります。

配当金総額は、9期とも同じ年の営業CFを下回っています。一方で「営業CF+投資CF」の列は、9期のうち6期がマイナスで、プラスの3期も配当金総額を下回りました。9期を合わせると約1兆400億円のマイナスです。同じ9期の配当金総額は合計で約7,600億円、ほかに2期で計1,871億円の自己株式を取得しています(いずれも開示値から算出)。配当と自己株式の取得は、この間、有利子負債が増えるなかで続いてきました。2026年3月期について会社は、投資の中身を不動産開発への投資とM&Aと説明しています。2026年3月期は投資CFの支出が特に大きく、有利子負債もこの1年で大きく増えました(金額は⚖️①で見ます)。

D/Eレシオの列は、2019年3月期の0.49倍から2026年3月期の0.98倍へ上がりました。会社の規律は、第6次中期経営計画(2019〜2021年度)が0.5倍程度、第7次(2022年度〜)が0.6倍程度です。会社は有価証券報告書で「優良な投資機会に対して積極的に投資を行った結果、一時的にD/Eレシオは規律を上回っております」と書いています。借りたお金で何を買い、どう回収するのでしょうか。その中身は、⚖️で取り上げます。

→ D/Eレシオのことばの説明は、用語集にあります


📖 増配の歩みを、会社の言葉でたどる

減益の年、会社は配当について何を書いていたのか。節目になった年を選び、決算短信と開示資料の言葉を引きながら読んでいきましょう。1株配当の額はいまの株数で書き、括弧の中に当時の額を添えます。配当方針の下限額(130円・145円)は、会社の文言どおり当時の額で書きます。(この章の記述は、各年の決算短信、適時開示、有価証券報告書にある会社の説明に基づいています。)

2010年3月期と2011年3月期。純利益が17期で最も少なかった年も、東日本大震災の直後の年も、会社は「配当性向30%を目標」と書いていました。配当は8.5円(17円)から10円(20円)になり、10円のうち1.5円(3円)は創業55周年の記念配当です。

2010年3月期の純利益191.1億円は、並べた17期で最も少ない額です。会社は決算短信にこう書きました。「配当性向30%を目標とし、併せて状況に応じて自己株式の取得を実施することにより、柔軟な利益還元を心掛けてまいります」。翌2011年3月期は、東日本大震災の直後の決算でした。会社は次の年の業績予想と配当予想を「未定」としたうえで、期末配当に記念配当を加え、年間10円(20円)としています。

2013年3月期。純利益がほぼ2倍になり、配当は12.5円(25円)から17.5円(35円)へ増えました。

純利益は662.7億円(99.6%増)でした。有価証券報告書は「当期の利益配当金については、配当性向30%とし、1株当たり年間35円としました」と書き、翌年から年2回の配当に変えました。2014年3月期には公募増資などで1,382億円を調達し、純利益は並べた17期で初めて1,000億円台になっています。

2016年3月期。年金の割引率を変えたことによる特別損失849億円で純利益は11.6%減りましたが、配当は30円(60円)から40円(80円)へ増えました。うち5円(10円)は創業60周年の記念配当です。

会社は「金利市場の動向を踏まえた退職給付債務の割引率変更に伴う特別損失の計上により」純利益が減ったと説明しています。記念配当を除いた普通配当も30円(60円)から35円(70円)へ増えました。この年の配当性向は51.2%で、2010年3月期の51.5%に次ぐ高さです。年金の計算が利益を大きく動かした年は、この年が最初ではありません。2013年3月期にも割引率変更による特別損失452億円があり、同じ年に年金資産の運用による利益なども出ています。

2017年3月期から2019年3月期。純利益は2,000億円台に乗り、確認できた資料では2018年11月の開示で初めて「配当性向30%以上」の書き方が出てきます。

2017年3月期の純利益は2,017.0億円(94.7%増)でした。前の年は特別損失849億円で利益が押し下げられていたので、その反動も含んだ伸びです。2018年11月の開示で、会社は「配当性向30%以上として業績に連動した利益還元を行い、かつ安定的な配当の維持に努めております」と書きました。あわせて年間配当の予想を55円(110円)へ引き上げています。2019年3月期の純利益は0.5%増で、配当は予想の55円(110円)を上回る57円(114円)でした。この年の決算短信には、中国の関連会社での不正の疑いと、建築基準の不適合の記載があります(⚖️⑤で見ます)。

2020年3月期と2021年3月期。新型コロナの感染拡大で、会社はいったん減配の予想を出しましたが、2度の引き上げで結果は増配になりました。

2020年5月、会社は次の年の予想を営業利益1,700億円(55.4%減)、配当45円(90円)と発表しました。前の年の57.5円(115円)からの減配予想です。11月に業績予想を上げ、配当予想を55円(110円)へ引き上げました。2021年4月にはさらに58円(116円)へ引き上げています。4月の開示で会社は、年金資産の運用益約420億円が費用の減少として利益に入る見通しを、業績予想を上げた理由のひとつに挙げました。

2021年3月期の純利益は1,950.7億円(16.5%減)で、配当は58円(116円)でした。前の年より0.5円(1円)の増配です。

2022年5月、第7次中期経営計画で、会社は配当性向35%以上かつ下限130円を初めて方針にしました(2023年3月期から)。

2022年5月に公表した第7次中期経営計画(2022〜2026年度)には、こう書かれています。「株主還元は、配当性向35%以上かつ、一株当たりの配当金額の下限は130円とします」。確認した資料の範囲では、下限を金額で定めたのはこの計画が最初です。直前の2022年3月期の配当は63円(126円)で、うち5円(10円)は創業者生誕100周年の記念配当でした。普通配当は前の年と同じ58円(116円)です。

2024年3月期。純利益は3.1%減でも配当は65円(130円)から71.5円(143円)へ。会社は年間配当の下限を、当時の額で130円から145円へ引き上げました。

営業利益は5.4%減、純利益は3.1%減でした。決算上は減益で、数理差異等を除くと増益です(前の年の数理差異は966億円、この年は465億円)。2024年5月の開示で、会社は「安定的な配当の観点から」下限を130円から145円に変更しました(いまの株数では65円から72.5円)。

2026年3月期。会社は第7次中期経営計画の売上高と利益の目標を「1年前倒しで達成」したと開示し、配当は87.5円(175円)になりました。次の年は減益予想のまま、増配を予想しています。

売上高5兆5,768億円、営業利益6,148億円、純利益3,505.6億円でした。配当は75円(150円)から87.5円(175円)へ増え、うち5円(10円)は創業70周年の記念配当です。記念配当を除いた普通配当は82.5円(165円)です。2025年8月に配当予想を引き上げたとき、会社は理由に「開発物件売却が順調に推移していることや、請負事業の売上総利益率の改善等」を挙げました。

2027年3月期の予想は、純利益2,660億円(24.1%減)、配当89円(178円)です。5月の当初予想は純利益2,270億円・配当88円(176円)で、8月に引き上げられました。8月の修正で配当予想を1円(2円)上げた理由を、会社は「連結業績予想の修正に伴い」としています。減益予想の年に増配を予想する理由について、会社は5月の決算概要で「2027年3月期の業績は減益計画としているものの、株主の皆さまへの安定的な利益還元を重視し」と説明しています。株主還元の考え方としては、有価証券報告書に「利益の持続的な拡大により、配当を安定的に引上げていくことが最も重要」とあります。ここから先を、会社自身はどう描いているのか。次の章で計画と目標を見ていきます。


🧭 会社はこれからをどう描いているか

以下は会社の計画や目標であり、達成を約束するものではありません。年度は3月決算なので、2025年度は2026年3月期にあたります。(出典:第7次中期経営計画、2026年5月の経営説明会資料と質疑応答、第1四半期決算概要、有価証券報告書 第87期、統合報告書2026)

まず、終わった計画と実績の比較です。第7次中期経営計画(2022〜2026年度の5カ年)は、2025年度で1年早く終わりました。会社は売上高、営業利益、当期純利益の3つを「1年前倒しで達成」と書き、「未達となっている項目もあります」としています。
売上高=目標5兆5,000億円に対し、実績5兆5,768億円。
営業利益=目標5,000億円に対し、決算上の実績6,148億円。
営業利益(計画書の表の注に「営業利益は退職給付数理差異除く」とある基準)=目標5,000億円に対し、実績4,992億円。
純利益=目標3,400億円に対し、実績3,505億円(数理差異等を除いた行は2,714億円)。
ROE(自己資本利益率)=目標13%以上に対し、実績12.7%。
配当性向=目標35%以上に対し、実績39.9%(数理差異を除く)。決算上の配当性向は、計画の4年で27.7%から31.3%の間でした。
D/Eレシオ=目標0.6倍程度に対し、実績0.98倍。

会社は決算上の利益で目標の達成を説明し、有価証券報告書の同じ図には営業利益の両方の行を載せています。目標との比較では、利益の集計基準も合わせて見ます。ROEは目標の13%以上を下回り、D/Eレシオは目安の0.6倍程度を上回っています。

資金の計画も、会社自身が振り返っています。戦略投資は6,500億円の枠に対して実績1兆9,400億円、有利子負債は4,200億円増の計画に対して約1兆6,500億円増でした(計画は経営説明会の質疑応答、実績は統合報告書2026の数字です)。一方で大型不動産開発は「4年間の進捗は計画を下回っています」。1年前の統合報告書2025には「D/Eレシオ0.6倍程度に着地する見込み」とありましたが、実績は0.98倍です。CFOは、成長投資が想定以上に進んだことで、「自己資本のコントロールによるROEの改善については、取り組みに一定の制約が生じました」と書いています。

次の第8次中期経営計画は、2026年5月に公表の予定でしたが延期されました。理由は、決算短信によると「事業環境の先行きに対する見極めに時間を要することから」です。有価証券報告書のCEOメッセージはその事業環境の変化として中東情勢を挙げ、「環境が整ったのち、改めてご説明させていただく予定」としています。具体的な日付は示されていません。

次の中期経営計画が公表されていない2027年3月期について、会社が示している数字はこうです。
売上高5兆9,000億円、営業利益4,600億円、純利益2,660億円(いずれも8月6日の修正後)。
配当=年間89円(178円)、配当性向41.4%。
為替の前提=1ドル150円。

5月の当初計画は営業利益4,000億円で、中東情勢の影響として営業利益で1,000億円を織り込んでいました。内訳は国内800億円・海外200億円の概算です。会社はこの計画を「コロナ禍と同様に非常事態下の前提で策定しています」と説明していました。8月には、国内への影響が想定を下回る見通しだとして4,600億円へ上方修正しています。修正後の計画に残る中東情勢の影響額は、開示されていません。一方で、始まった第1四半期(4月から6月)は売上高1兆4,083億円(9.0%増)、営業利益1,306億円(10.6%増)でした。会社は「売上高、営業利益および経常利益は過去最高を更新」と書いています。

会社が挙げている取り組みのうち、配当の元になる利益とお金の流れに関わる3つを見ていきます。

1つ目の取り組みは、持っている不動産を売って資金を戻し、次の投資に充てていくことです。CFOは「重要なのは、残高の拡大に見合う回収が行われているか、という点です」と書いています。不動産が総資産の過半を占める状態は「価格下落をはじめとした様々なリスクを内包する」とも書いています。ROEを上げるために重要なのは「回転率の向上」、つまり持っている資産を早く売上に変えることだとしています。2026年4月には、グループの資産管理の機能を強めるための「アセットマネジメント戦略本部準備室」を新設しました。

D/Eレシオの目指す水準は、「成長投資、財務健全性をふまえつつ、外部環境の変化も考慮しながら検討していく」としています。数字は、次の計画で示される予定です。

2つ目の取り組みは、海外、とくに米国の戸建住宅です。2027年3月期の計画では米国で8,000戸の引き渡しを見込み、会社は1万戸を目指すことに変わりはない、としています。海外事業全体については、中東情勢などで環境の不透明さが増している、と有価証券報告書に書いています。そのうえで「必要に応じて撤退も含めた判断を機動的に行える体制」や、非常時に人材と資金を国内へ戻せる体制が重要だとしています。拡大の目標と、撤退も含めて判断する体制の両方が書かれている、と私は読みました。

3つ目の取り組みは、新しい領域です。
物流施設に加えて、データセンターや半導体関連施設への投資。
2026年3月に完全子会社にした住友電設(2026年10月1日に「セムリンクス」へ社名を変更)と組んだ、電気・設備の分野。
既存の建物を買い取って再生する「リブネス事業」(2030年代に売上1兆円規模が会社の目標)。

「創業100周年にあたる2055年に売上高10兆円」という創業者の夢も、会社は掲げています。これらは計画と目標なので、決算にどう表れるかを毎回確かめる対象です。

配当の目線で読むと、会社が明文化している配当方針は、第7次中期経営計画の期間中の配当性向35%以上、かつ年間配当の下限145円です。下限145円は、いまの株数では72.5円にあたります。会社サイトもこの方針を、第7次中期経営計画の期間中のものとして載せています。

計画が終わったあとの2027年3月期に、会社は配当性向の数字や下限額を新しく示していません。8月の開示では、数値のない「株主還元の基本方針」を踏まえて増配予想にしています。基本方針は、成長投資でEPS(1株当たり利益)を増やし、株主価値を高める、というものです。質疑応答では「まずは利益を成長させ、配当を着実に引き上げていくことが最も重要」と答えました。次の計画については「有利子負債の水準や、投資回収、株主還元等の考え方を整理した形でお示ししたい」としています。自己株式の取得は「現時点では成長投資を優先すべき局面」で優先度は低い、とも答えました。次の計画で配当性向の数字と下限の額がどう書かれるかを、私は見ていきます。

(この3つの取り組みを取り巻く外の環境は、記事の終わりの🔍で公的統計の推移と並べています。)


⚖️ 気をつけたいところと、支えになりそうなところ

先に、気をつけたい点からです。

気をつけたいところ

① 有利子負債は1年で7,676億円増えて3兆767億円、D/Eレシオは0.98倍と、会社の規律の0.6倍程度を上回っています。増えた分のほとんどは短期の借入です。

借入の残高だけでは、配当との関係は見えません。有価証券報告書の借入金等明細表によると、2026年3月末の内訳はこうです(平均利率は期末残高に対する加重平均)。
短期借入金7,579億円(平均利率1.65%)。
コマーシャル・ペーパー(企業が短期の資金を集めるために出す証券)1,790億円(0.76%)。
1年以内に返済する長期借入金1,549億円(2.16%)。
それ以外の長期借入金1兆2,058億円(3.22%・返済期限は2027年から2060年)。
ほかに社債が7,790億円あります。

この1年で増えた7,676億円は、ほぼ全額が短期借入金(5,876億円増)とコマーシャル・ペーパー(1,790億円増)です。1年以内に返済・償還する借入の割合は、有利子負債の22%から37%に上がりました(開示値から算出)。分子は短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年以内の長期借入金と社債の合計です。短期の借入を増やした理由そのものは、確認した資料には書かれていません。調達の方針は、有価証券報告書にこう書かれています。運転資金は調達コストの低い短期借入金やコマーシャル・ペーパー等を中心にし、回収に時間がかかる不動産開発等は長期で調達する、という方針です。

固定金利と変動金利の割合は開示されていません。CFOによると、「かねてより固定金利調達を進めており、足元での影響は限定的」です。支払利息は2025年3月期の415億円から2026年3月期の443億円へ増えました。

金利の上昇は、新しい借入や借り換え、変動金利の借入を通じて、支払利息を増やす要因になります。支払利息は数理差異とは関係のない費用なので、会社が配当を決めるときの数理差異を除いた利益にも響きます。利息の負担がどう動くかを、支払利息の額で見ていきます。

次に、回収の側です。開発物件への投資は、売却や賃料で回収することを会社は前提にしていて、2026年3月期には開発物件の売却で3,337億円の売上を立てました。ただし、増えた借入にはM&Aや米国の土地在庫の増加も含まれます。

外からの目安になるのが格付です。格付投資情報センター(R&I)の信用格付はAA-です。借入などを期日どおりに返せるかについての、格付会社の意見です(有価証券報告書 第87期時点。配当について述べたものではありません)。CFOによると、格付会社との対話の主な論点は「債務とキャッシュフローのバランス、資本負債構成」です。会社は戦略的投資の考え方や将来のキャッシュ・フローの見方を説明し、「将来の安定性について一定の理解を得ています」としています。そのうえで、格付が下がれば調達金利が上がることを、会社はリスクとして挙げています。私は、有利子負債とD/Eレシオ、支払利息、販売用不動産の残高の4つを、四半期ごとの決算概要で追います。

② 営業利益の2割近くが年金の数理差異で、2027年3月期の予想はそれを見込んでいません。決算上の減益幅(純利益24.1%減)と、数理差異を除いた減益幅(2.0%減)を分けて読みます。

📊で見たとおり、2026年3月期の営業利益6,148億円のうち1,156億円は年金の数理差異による費用の減少でした。この額は2022年3月期から2026年3月期の5年とも利益を増やす方向に出ていて、合計は約4,100億円です(開示値の合計)。金利が下がる局面では、逆に損として出る性質の数字で、2012年3月期には費用として出ています。だから配当を読むときは、決算短信の1ページ目にある営業利益ではなく、本文にある「数理差異等を除いた営業利益」と、会社が開示する除いた場合の配当性向を見ます。2027年3月期は数理差異を見込まない予想なので、実績に数理差異が出れば、決算上の利益はその分だけ予想から動きます。

③ 米国戸建の2026年3月期の利益には、大型の土地売却による営業利益919億円が入っています。2027年3月期の計画の売上総利益率は16.3%で、土地売却の影響が含まれる前の年の28.1%から下がります。

まず、前の年の利益の中身です。2025年10月末に米国の子会社が大型の土地売却を行い、2026年3月期の売上に1,053億円、営業利益に919億円が入りました。米国戸建の営業利益1,489億円(海外の戸建1,498億円のうち)に対して、この1件が6割を超えます(開示値から算出)。2027年3月期の計画では、米国戸建の営業利益は452億円です。土地売却を除いた利益率は開示されていません。

次に、家の受注と引き渡しです。米国の子会社は暦年で数字を開示していて、受注戸数は2026年1月から6月の累計で4,678戸(速報値・前の年の同じ時期は3,852戸)でした。引き渡しは1月から3月に1,577戸(同1,315戸)で、どちらも増えています。

そのうえで、採算の話です。2027年3月期の第1四半期(決算概要の表では「2026/6月期」と表示)の米国戸建は増収でしたが、営業利益は61億円で、前の年の同じ時期の76億円から15億円減りました。売上総利益率は17.5%(同20.0%)です。会社は「前年下期の需要低迷局面でインセンティブを付与して販売した契約案件の引渡しが増加したことから、利益率が低下し減益」と書いています。インセンティブは、買う人への値引きや特典にあたるものです。

2027年3月期の計画の売上総利益率16.3%を、会社は質疑応答でこう説明しました。「中東情勢に伴う景況感や金利の高止まりのリスクを反映しており、計画値が通常のものとは考えていません」。テキサス州のダラスやヒューストンなど、初めて家を買う人が多い地域では「金利上昇の影響を受けて販売に苦戦している」としています。一方で、カリフォルニア州の高単価の案件やワシントンD.C.などの東海岸は引き続き堅調だとし、堅調な地域に力を入れて収益力を高めるとしています。

米国の30年固定の住宅ローン金利は、2025年の年平均で6.60%、2026年10月1日の週は7.28%でした(FRED)。海外売上の約8割は米州なので、この金利の動きと会社の受注・引き渡し・利益率を、📌④で挙げた資料で追います。

④ 第8次中期経営計画が延期され、次の配当方針は未定です。2027年3月期の予想配当は、第7次の方針の数字(配当性向35%以上・下限145円)をどちらも上回っていますが、第7次の方針が続くかを会社は明言していません。

🧭で見たとおり、会社は配当性向35%以上と下限145円を第7次中期経営計画の方針として掲げてきました。仮にこの数字を当てはめると、2027年3月期の予想配当178円(いまの株数では89円)は、下限の145円(72.5円)を上回っています。配当性向41.4%も、35%を上回っています。ただし会社の予想であり、確定した配当ではありません。また、第7次の方針が2027年3月期にも当てはまるかを、会社は明言していません。

前に、新型コロナの影響が9月末ごろまで続く前提を置いた2020年5月は、配当を45円(90円)へ減らす予想を出しました。今回は、5月の当初予想の時点で、同じ非常事態下の前提のまま増配を予想していました。次の計画で、配当性向と下限はどう置かれるのでしょうか。この会社の配当を考えるうえで大事な点です。

⑤ 2019年以降、中国の合弁会社での不正の疑い、建築基準不適合、施工管理技士の実務経験の不備などが開示されました。2021年には、指定された区域の電気工事業・管工事業の民間工事で22日間の営業停止処分も受けています。

品質や法令の問題は、改修の費用や行政処分、信用を通じて業績に響く経路があります。会社も有価証券報告書の「事業等のリスク」で、法的規制に違反した場合に処分を受けたり、社会的信用が損なわれたりするおそれを挙げています。公表された事実と会社の対応を、事案ごとに並べます。

2019年3月、中国・大連の合弁会社で、預金の残高と帳簿に約234億円(14.15億元)の差があることが分かりました。会社は、合弁先から派遣された取締役と出納担当者の計3名による不正の疑いがあると公表し、刑事告訴と第三者委員会の設置を行いました。2019年3月期に約125億円、2021年3月期に約120億円を持分法投資損失として計上しています。

第三者委員会は、大和ハウス側の役職員の関与を疑わせる事情は認められなかった、としました。一方で報告書は、持分法適用会社を内部監査の対象外とする基準そのものは不合理とはいえない、としました。そのうえで、出資比率が高いなどの会社は監査の対象にするよう、基準の見直しを提言しています。合弁会社は裁判所主導の清算手続きに入りました。同じ2019年3月の開示で、会社は配当予想を変更しないことを決議しています。

2019年4月、会社は内部通報をきっかけに、建てた戸建住宅と賃貸共同住宅の一部で建築基準への不適合があったと公表しました。対象は最終的に、L字型受柱の仕様が212棟、独立基礎が3,763棟でした。会社は外部調査委員会を設置し、防火に関わる77棟の改修を2019年6月までに終えました。独立基礎は、構造の安全性の確認と構造評定書の取得を2019年10月末までに全棟で終えた、と公表しています。費用は約15億円を売上原価に計上し、会社は業績予想への影響を「軽微」としました(2019年4月時点)。

原因として、会社は「法令遵守体制の運用上の問題」など3点を挙げました。再発防止策を7つ決め、2019年8月に社長直轄の法令遵守・品質保証推進本部を設置しています。2つの事案を受けて、取締役の賞与と報酬の減額、代表取締役2名の異動も公表しました。

2019年12月には、施工管理技士の技術検定試験で、受験に必要な実務経験に不備のある社員がいたことを公表しました。2020年4月の外部調査委員会の報告後の集計では357名です。外部調査委員会は、受験者の確認不足に加え、技術本部が十分な体制のないまま不備のある実務経験証明書を発行していた責任は大きい、と指摘しました。会社は、不備のあった社員の資格を返上する手続きと再発防止策、担当役員の減俸を公表しました。該当者が配置された物件の施工品質に問題はなかった、としています(第三者調査機関の確認を含む)。

この件で国土交通省近畿地方整備局は2021年11月、建設業法に基づく指示処分を行いました。あわせて、対象の区域での電気工事業・管工事業の民間工事で、2021年12月2日から23日までの22日間の営業停止処分を受けています。会社は、業績への影響は軽微としています。

2020年2月には、元社員1名による架空発注を公表し、会社は懲戒解雇と刑事告訴を行いました。2020年8月には、追加の調査で社員6名による同種の架空発注が見つかったことと、過年度の法人税等の修正を公表し、6名を解雇しています。2025年3月には、工事担当者2名による取引業者と共謀した架空・水増し発注と、法人税等の修正を公表しました。1名は退職済み、1名は解雇で、会社は損害相当額を回収済みとしています。

ここに書いたのは、会社が公表した事実と、会社が公表した対応です。会社は2019年11月に改修と評定書の取得の進捗を公表しています。再発防止策がその後どう運用されているかは、今回確認した資料の範囲では追えませんでした。有価証券報告書の「事業等のリスク」には、設計時に建築関係法令への適合状況をダブルチェックする、という対応策が書かれています。

支えになりそうなところ

これまでの事実です。

① 純利益が前の年を下回った4回の年も、すべて増配でした。新型コロナの年は減配の予想を出したあと、2度の引き上げで増配になりました。

その4回は📊の表Aで確かめられます。このうち2020年3月期と2021年3月期は0.5円(1円)の増配でした。2024年3月期の減益は、数理差異を除くと増益の年です。いずれも過去の実績であり、今後の配当を示すものではありません。

② 第7次中期経営計画の期間中、会社は配当性向35%以上と下限145円を方針に掲げ、下限は2024年に130円から引き上げました。2024年以降の開示では、配当の額を年金の数理差異を除いた利益で決めると書いています。

配当性向35%以上と下限145円は、第7次中期経営計画の期間中に掲げられた数値の方針です。株主還元の考え方は、📖で見た有価証券報告書の文と同じです。次の計画で、この2つの数字がどう示されるかを見ます。

③ 海外の売上は、2018年度の2,785億円から2025年度の1兆284億円へ増えました。円安の分と、1件の大型土地売却の分も含んだ数字です。国内では、賃貸住宅の管理戸数が72.5万戸になりました。

この間にドル円は年平均で約110円から約150円へ動いていて、円に換算した海外売上は、円安の分だけ増えて見えます。米国では住宅会社の取得や事業の譲受も重ねてきました。2025年度の海外の売上と営業利益には、⚖️③で見た米国の大型土地売却の分も含まれます。賃貸住宅の管理戸数は、🏢で見たとおり増えてきました。いずれも過去の実績であり、今後の水準を示すものではありません。

気になる点も、支えになりそうな点も、どちらかに寄せずに並べたまま、次の決算を待ちます。


📌 次に見ようと思っているポイント

増配が続くかどうかを追いかけるために、次の4つを追っていくつもりです。ご自身で確かめるときの手がかりとして使っていただけたら、うれしいです。以下の会社予想と目標は、達成を約束するものではありません。

① 第8次中期経営計画に書かれる配当方針(配当性向の数字と、年間配当の下限の額)。

第7次は配当性向35%以上、かつ下限145円(いまの株数では72.5円)でした。公表の時期は未定です。公表されたら、この2つの数字がどう置かれたかをまず見ます。

② 決算短信の本文にある「数理差異等を除いた営業利益」と、会社が開示する除いた場合の配当性向。

短信の「経営成績の概況」の段落に、営業利益のあとに「数理差異等を除いた営業利益は…」と1文で書かれています。2026年3月期は4,992億円、除いた配当性向は39.9%でした。2027年3月期の予想は数理差異を見込んでいません。5月の本決算で実績に数理差異がいくら出たか、それを除いた利益が計画の4,600億円に対してどうだったかを見ます。

③ 借りたお金と、投資した資金の回収の動き(有利子負債・D/Eレシオ・支払利息・販売用不動産の残高・1年以内に返す借入の割合)。

有利子負債、D/Eレシオ、販売用不動産の残高は、四半期ごとの決算概要の財政状態のページで確かめます。支払利息は決算短信の損益計算書、1年以内に返す借入の割合は有価証券報告書の借入金等明細表で見ます。2026年3月末から6月末への動きは、こうでした。
有利子負債=3兆767億円→3兆4,639億円。
D/Eレシオ=0.98倍→1.10倍。
販売用不動産=3兆643億円→3兆2,680億円。

開発物件の売却(2027年3月期の計画は売上3,930億円)がどこまで進み、残高がどう動くかを、四半期ごとに見ます。

④ 米国戸建の引渡戸数・受注戸数・売上総利益率(決算概要の海外のページ)と、米国の30年固定住宅ローン金利(FRED・週次)。

2027年3月期の計画は引渡8,000戸、売上総利益率16.3%です。前の年は11月13日に、中間配当の決議と業績予想の修正がありました。今期の日程は会社の開示で確かめます。中間決算が出たら、受注4,678戸(1〜6月)の先がどうなったかと、利益率が計画の16.3%に対してどこにいるかを見ます。


🔍 もう少し深く ― 住宅・倉庫・米国・資材の4つの統計と、会社の数字を並べてみる

この章は、補足の章です。お急ぎの方は「おわりに」へ進んでも大丈夫です。🧭の取り組みと⚖️の気になる点を、公的統計と横に並べてみましょう。会社の数字と統計の対象範囲は同じではないので、そろわない点はその場で書きます。次の決算を読むときの背景として、私が手元に置いている数字です。

土台① 国内の新築住宅の着工は15年で13%減り、持家は36%減りました。会社の国内の戸建住宅(請負)の販売戸数は、持家の着工より大きく減りました。

国土交通省の建築着工統計で、新設住宅の着工戸数は2010年度の81万9,020戸から2025年度の71万1,171戸へ減りました。自分で住む家を建てる「持家」は30万8,517戸から19万5,111戸です。

会社の数字と並べます。2017年度から2025年度で比べると、持家の着工は30%減、会社(単体)の戸建住宅(請負)の販売戸数は6,907戸から2,902戸へ57%減でした。会社の減り方は持家の着工より大きくなっています(開示値から算出)。ただし着工と販売では集計の段階が違うので、この比較だけで市場での占有率の変化までは分かりません。🏢で見たとおり、会社は1戸当たりの価値を上げる方針です。

戸建住宅セグメントの売上は、2010年3月期の3,247億円から2026年3月期の1兆3,348億円へ増えています。その多くは米国の戸建住宅です。この間にセグメントの区分は何度か変わり、2020年からは海外の事業も各セグメントに含めています。着工統計は国内の戸数、会社のセグメント売上は国内と海外の金額なので、対象も単位も違います。

土台② 倉庫の着工床面積は2021年度まで11年で3.1倍に増え、2025年度はそのピークを31%下回っています。会社の事業施設セグメントは、2026年3月期は開発物件の売却が減って減益でした。

国土交通省の統計で、民間の倉庫の着工床面積は2010年度の約423万平方メートルから2021年度の約1,324万平方メートルへ増えました。2025年度は約901万平方メートルです。会社の事業施設セグメントの売上は、2010年3月期の1,907億円から2026年3月期の1兆1,462億円へ増えています。事業施設には、2013年に子会社にしたフジタの売上も入っていて、16年の伸びには区分の変更と買収の分が含まれます。

2026年3月期の事業施設の営業利益1,276億円のうち800億円は、開発物件の売却益でした。倉庫の需要は、この売却益を通じて会社の利益に表れます。この年は売却が減って減益で、会社は、米国子会社の大型土地取引などの影響で売却の時期を調整したと説明しています。会社は投資先として、倉庫に加えてデータセンターや半導体関連施設を挙げています。データセンターだけの着工統計は、国土交通省の区分には見当たりませんでした。

土台③ 米国の住宅着工は15年で2.3倍に増え、住宅ローン金利は4.69%から6.60%へ上がりました。会社の米国戸建は買収を重ねて引き渡しを増やし、2027年3月期は利益率の低下を計画しています。

米国商務省の統計で、住宅着工は2010年の約58万戸から2025年の約135万戸へ増えました。新築一戸建ての販売価格の中央値は22万1,800ドルから41万7,400ドルです。30年固定の住宅ローン金利は、2010年の年平均4.69%から2021年には2.96%まで下がり、2025年は6.60%でした(FRED)。会社の米国戸建の引渡戸数は、2017年度の973戸から2025年度には🏢で見た7,776戸へ増えています。この増加には、住宅会社の取得や事業の譲受が含まれます。

家の数も値段も増えた15年でしたが、2022年以降は金利が上がりました。会社の2027年3月期の計画は、売上総利益率16.3%です。⚖️③で見たとおり、前の年の利益率には土地売却の影響が含まれ、計画の利益率には金利高止まりのリスクが反映されています。米国の統計は全国の数字で、会社の事業はテキサス、バージニア、カリフォルニアなどの一部の州が中心です。全国の金利の推移を背景として見て、会社の受注戸数と利益率と照らし合わせます。

土台④ 建設工事費の指数は2010年度から40%、鉄鋼は48%、木材は65%上がりました。資材高は請負の売上総利益率に、為替は海外売上の円換算に表れます。

国土交通省の建設工事費デフレーターは、2010年度の86.6から2025年度の121.9へ上がりました。建設工事の値段の動きを示す指数で、2020年度を100としています。日本銀行の企業物価指数(2020年=100・各年12月)で、鉄鋼は95.5から141.4、木材・木製品は83.1から137.3です。会社は有価証券報告書で「資材価格は…急激な上昇が続いております」と書いています。2027年3月期の計画には「建設資材や設備等の値上げに伴う原価高騰や工事遅延の影響」を織り込みました。一方で、2025年8月の開示では請負事業の売上総利益率が改善しています。資材の値上がりを価格に反映できているかは、この利益率の動きと、価格改定や施工の効率についての会社の説明を合わせて見ます。

為替は、米連邦準備制度理事会(FRB)のドル円の年平均で、2010年の87.78円から2025年の149.56円へ動きました。会社の2027年3月期の前提は1ドル150円です。海外で立てた売上は円に換算してから決算に載るので、円安は海外売上を円で大きく見せ、円高は小さく見せます。資材の価格と為替の2つは、決算概要の「換算レート」の行と、短信の原価についての記述で確かめます。

(この章の公的統計は、国土交通省、日本銀行、米国商務省、FRED、米連邦準備制度理事会の公表値です。増減率と倍率は、表示する桁より下を切り捨てています。)


☕ おわりに

「大和ハウス工業(1925)は、これからも増配を続けられそうか」。今回の資料を読んで、私はこう考えました。これまでの増配の記録と今期の増配予想は、これからの増配を見ていく材料になる。ただ、その配当を支える利益と資金の動きには、まだ確かめたい点が残る。

今回たどった17期では、純利益が減った4回の年も、すべて増配でした。今期(2027年3月期)も会社は増配を予想しています。利益が減る年にも配当を増やしてきた記録は、この会社を見るときの出発点だと思っています。

一方で、今期は年金の数理差異を除いても減益の予想で、有利子負債も増えています。これまでの投資が利益につながり、投じた資金を回収できるかどうか。この点を、増配の記録と並べて見ていきます。

もう1つ、第7次中期経営計画は1年早く終わり、次の計画はまだ公表されていません。配当性向35%以上と下限145円という数字が今期にも当てはまるのかは、会社の説明で確かめることになります。

増配を続けてきた記録と、これから配当を増やす余力。次の決算と中期経営計画で、利益と資金の動きと会社の配当方針を確かめます。いまの株価が割安か割高かは、ここでは判断していません。

みなさんは、どう考えますか。


出典・一次ソース

主な資料には、公表元へのリンクを付けています(別のタブで開きます)。

免責

この記事は、公開情報をもとに筆者が整理した観察ノートであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。将来の業績・配当・株価を約束するものではありません。参考利回りは記載の基準日の終値に基づく参考値で、株価が動けば変わります。実績と会社予想は別物です。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。記載の数値は各社の開示資料に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。

著者:ミーナ/更新日:2026-10-11

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